アスベストは建築物の断熱材や防音材として広く使われていましたが、その有害性が明らかになり、解体工事には厳しい規制がかかっています。

この記事では、アスベストの解体工事に関する基礎知識、工事の手順、費用の目安、業者の選び方などをご紹介します。

アスベストとは、石綿とも呼ばれ熱や酸に強く、断熱、防音、柔軟性があり摩耗にも強く安価である、などの性質を持つ鉱物繊維の総称です。石綿(いしわた)とも呼ばれます。

アスベストは、長期間にわたって吸入すると、肺や胸膜などの呼吸器系に悪影響を及ぼすことが知られています。アスベストによる健康被害は、一般的には、アスベストの吸入から数十年後に発症することが多いです。

アスベストが引き起こす主な症状は、以下のようなものがあります。

  • アスベスト肺(じん肺):アスベストが肺に沈着し、肺組織が硬くなることで呼吸困難やせきなどが起こる病気です。
  • 胸膜中皮腫:アスベストが胸膜に沈着し、悪性の腫瘍が発生する病気です。非常に予後が悪く、早期発見・治療が重要です。
  • 肺がん:アスベストが肺に沈着し、肺組織の細胞が変異して癌化する病気です。喫煙との相乗効果もあります。
  • 良性石綿胸水:呼吸困難、胸の痛み。

アスベストは、その危険性が明らかになったことから、世界的に使用が制限されたり禁止されたりしています。日本では、2005年にアスベストの製造・使用・輸入を全面禁止しました。しかし、過去に使用されたアスベストは、建築物や製品などに残っており、解体や改修などの際に飛散する可能性があります。そのため、アスベストを含むものを取り扱う場合は、適切な防護措置や廃棄方法を守る必要があります。

2006年(平成18年) アスベストを一定含む製品の使用が原則禁止となり、2012年(平成24年)には法令上でアスベストの使用が全面的に禁止となりました。

2022年(令和4年)大気汚染防止法 第18条15第6項により、解体する建築物の床面積の合計が80㎡以上となる工事は石綿事前調査が必要となっています。

以前から解体工事前にはアスベストの有無調査が義務付けられていましたが、実施されていないケースや不適切な処理によりアスベストが飛散した事例が見られるということで、2023年(令和5年)石綿障害予防規則が改正、以下の石綿対策が強化されました。

  • 石綿有無の工事前の事前調査(工事対象の部材を文書や目視でチェックし、結果を3年間保管する)
  • 石綿除去工事の計画を労働基準監督署に報告(石綿が入っている保温材などを取り除く工事は、14日前までに)
  • 石綿除去工事の規制強化(工事が終わって作業場を開ける前に、資格者が石綿が残っていないことを検査する)
  • 石綿が入っている塗材や板材の取り扱いの規制(石綿が入っている板材は、切ったり壊したりしないで取り除く。塗材のグラインダー切断、石綿が入っているけい酸カルシウム板第1種切断、破砕工事は作業場を隔離する)
  • 石綿除去工事の記録を残す(石綿が入っている建物や船などの解体・改修工事は、写真などで作業の様子を記録し、3年間保管)

石綿事前調査結果の報告のない事業者は30万円以下の罰金、特定粉じん排出等作業実施届出がない業者は3月いかの懲役または30万円以下の罰金などがあります。

以下の資格者による調査が必要となっています。

  • 一般建築物石綿含有建材調査者
    一般建築物石綿含有建材調査者に係る講習を修了した者で、全ての建築物の調査を行う資格
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者
    一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行う資格
  • 特定建築物石綿含有建材調査者
    一般建築物石綿含有建材調査者の講習内容に加えて、実地研修や、口述試験を追加したもので、全ての建築物の調査を行う資格

アスベストには3つの危険レベルがあります。危険度は「粉塵の発生率」で決まります。粉塵の発生率が高いアスベストは、解体作業の際に空気中に広がりやすく、周辺の人々が吸い込む危険性が高くなります。これは健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

つまり飛散しやすい(発じん性が高いという)ほど、人体に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。アスベストは、その飛散しやすさによってレベル1からレベル3までに分類されています。

  • レベル1(発じん性が著しく高い)
    最も飛散しやすく危険なアスベストです。綿のような形をしていて、触るとふわっと広がります。建物の中では、火事に強い部分や熱を持つ部分に使われています。例えば、鉄骨の梁や柱、エレベーターの周り、機械室、駐車場の天井や壁などです。このレベルのアスベストを取り除くときは、専門的な技術と装備が必要です。
    →使用箇所:耐火建築物の柱、立体駐車場の天井や壁、エレベーター周辺
  • レベル2(発じん性が高い)
    飛散しやすいアスベストです。パイプなどに巻かれている保温材や断熱材がこれにあたります。軽くてふわふわしているので、壊れると空気中に広がります。このレベルのアスベストを取り除くときは、周囲をしっかりと遮断して作業する必要があります。
    →使用箇所:保温材、耐火被覆材、断熱材
  • レベル3(発じん性が比較的低い)
    飛散しにくいアスベストです。板状や管状に成形されているものが多く、固くて重いです。壊しても粉々にならないので、空気中に飛び散ることは少ないです。しかし、切ったり削ったりするときは注意が必要です。このレベルのアスベストを取り除くときは、水をかけたり吸引したりして飛散を防ぐ必要があります。
    →使用箇所:木造住宅、屋根、瓦、外壁、内装天井・壁

そこで、解体の際には危険度に応じて、アスベストを封じ込めるために薬剤を使用する「封じ込め工法」や、非アスベストの板で覆う「囲い込み工法」などの方法が採用されます。また、作業員は粉塵マスクや防護服を着用するなど、安全対策を徹底する必要があります。

古い家屋の場合アスベストが含まれている建材を使用してる可能性が高いです。概ね2006年以前の建物はアスベストが一般的に使われていたからです。とは言え見ただけでアスベストが使われているかを判断するのは難しいです。

プロが行うアスベストの調査方法は以下のようなものです。

・住宅の新築時の設計図書を確認、使われている建材の商品名からアスベストを調べる
・使われている建材とアスベスト含有建材データベースとの照合
・建材のサンプリングを実施、分析会社へ送り使用有無状況を見極める

アスベストを含む建物の解体工事は事業者によって以下のような手順で進んでいきます。

  • 事前調査
    まず、対象となる建物の情報を図面や現地で確認します。アスベストがどこにあるか、どのくらい含まれているかを知るために、サンプルを取って分析することもあります。
  • 調査報告・見積もり
    分析結果をもとに、解体工事の方法や費用を決めます。この段階で、関係する官公庁や労働基準監督署に工事の届出を行います。事前調査から報告までは、約1~2週間かかります。
  • 工事準備、作業掲示板
    工事中にアスベストが周囲に飛び散らないように、遮断シートや吸引装置などの対策を行います。A3サイズ以上の掲示板で事前調査結果&作業内容を掲示します。また、近隣住民への配慮として、工事の内容や期間などを説明することもあります。
  • アスベスト除去工事
    専門の作業員が、アスベストを丁寧に取り除きます。飛散防止のために、水をかけたり、ビニール袋に入れたりします。
  • アスベストの処分
    取り除いたアスベストは、産業廃棄物として適切な方法で処理されます。処理業者に引き渡す際には、産業廃棄物処理法に従って必要な書類を作成します。
  • アスベスト浮遊状況を測定
    工事が終わったら、空気中のアスベスト濃度を測定します。基準値以下であれば、工事完了となります。

1検体あたり30,000円~45,000円

アスベスト処理面積により異なります。
一般的には30,000円~100,000円/㎡

アスベストは発じん性によって3つのレベルに分類されます。

レベル1: 柱・梁・天井など。解体工事費用は15,000円~85,000円/㎡
レベル2: 内壁・配管・柱など。解体工事費用は10,000円~60,000円/㎡
レベル3: 屋根材・サイディング外壁材など。解体工事費用は3,000円~/㎡


弊社の過去の実績では、軒天、台所天井で6万円、スレート屋根一式12万円で解体した実績はございます。(もちろん面積により増減はありますし、高所の足場費用、処理費がこれにプラスされますので過去の事例として)

例えば一般家屋の解体現場だと以下のように、検査で7万円、撤去で+12万円費用が増えるケースがあるということですね。

内容 場所 費用 検査結果
アスベスト検体調査 外壁 35000円
屋根 35000円
アスベスト解体除去 屋根一式 120000円
合計 190000円

アスベストの事前調査が必要な建物(床面積80㎡以上)を解体する際の流れについて把握しておきましょう。

①解体工事業者に見積もりを依頼する
建物の最寄りの解体工事業者に見積もりを依頼します。営業マン及び技術者が現地に来て解体する範囲、使用建材、道路の状況など調査を行います。

②解体工事業者から見積書を受取る
解体工事の内容は項目が細かく分かれているので営業マンから説明を受け、ご自身が行いたい解体の内容と合致しているか確認する事が重要です。

③アスベスト有無の事前調査が含まれているか確認する事
重要な点として見積書に「アスベスト調査」が含まれている事を確認してください。前章でお伝えしたように80㎡以上の解体工事時には事前調査が義務付けられましたのでこの項目が必ずあるはずです。またアスベストが検出された場合は費用が追加になりますので、どれぐらいの費用がかかるか営業マンによく聞く事が大切です。

建物が古い場合や、現地調査の段階でアスベスト使用が決定的な場合は、アスベストが含まれてるとみなして、追加費用無しでトータルでの見積書が出てくる場合もあるでしょう。どちらにしても納得できる見積書が出てきた業者に発注をするようにしましょう。

国としてアスベストの調査および除去工事について補助金を出しています。要件は以下のとおりです。

国土交通省は、民間の住宅や建築物に吹付けられた石綿(アスベスト)やアスベスト含有ロックウールの有無を調べる費用を補助する制度を設けています。この制度は、地方公共団体が実施している場合が多いので、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。

  • 補助対象:吹付けアスベスト等がある可能性がある住宅や建築物
  • 補助内容:吹付けアスベスト等の有無を調査する費用
  • 補助額:原則として25万円/棟以内(民間事業者等が行う場合は自治体を通して申請)

国土交通省は、民間の住宅や建築物に吹付けられた石綿(アスベスト)やアスベスト含有ロックウールを除去したり、囲い込んだり、封じ込んだりする費用を補助する制度を設けています。この制度も、地方公共団体が実施している場合が多いので、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。

  • 補助対象:吹付けアスベスト等がある住宅や建築物
  • 補助内容:吹付けアスベスト等を除去したり、囲い込んだり、封じ込んだりする費用(建築物を解体・除去する場合は除去費用相当分)
  • 補助率:自治体の補助額の半分以下(かつ全体の3分の1以下)

残念ながら現在2023年度は、アスベスト解体にかかる助成金・補助金を出している自治体はありませんでした。(当社調べ)

建物およびアスベスト使用建材の解体工事をお考えですか?

私たち「解体Do」は茨城県で営業する解体工事専門店です。建物の解体の際にはアスベスト調査を実施し、お客様および周辺家屋へ最大限配慮をしながら解体を実施していますので、ぜひご相談ください。

他社で解体見積もりを取得済みの方も、ぜひ当社にも一度見積もりのご依頼をいただければと思います。お客様のご要望に合わせた最適なサービスと競争力ある価格でお応えいたします。

何かご質問やご不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。当社がお手伝いさせていただけることを心より楽しみにしております。

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