このように、屋根のアスベスト(石綿)を心配されている方は多くいらっしゃいます。この記事では、スレート屋根のアスベストについて、安全な確認の手順、調査と工法の選び方、見積で比べる項目、補助制度の確認先を、厚生労働省・国土交通省・環境省の公表資料にもとづいて整理します。

なお、スレート屋根の工事金額は、屋根の面積・形状・足場の条件・劣化状態・廃材の処分先などで大きく変わります。そのため、この記事では根拠を確認できない金額や「○○円/㎡」といった単価は掲載していません。現地での事前調査のあとに出る書面の見積で、項目ごとに比べる考え方をお伝えします。

※ご自身で屋根に登る、屋根材を剥がす、削る、割るといった行為は、転落の危険に加え、石綿を含む場合は粉じんを飛散させるおそれがあります。確認は専門家に任せ、地上から見える範囲の観察と書類の確認にとどめてください。

スレート屋根の外観写真

スレート屋根とは、厚さ5㎜程度の薄い板状の屋根材で、セメントが主成分です。日本の戸建て住宅に広く使われています。主な種類は次のとおりです。

  • 平板スレート:薄い板状のスレートを重ねて葺く、最も一般的な形です。
  • 厚型スレート:平板スレートより厚みがあり、瓦のような形状をしています。
  • 波形スレート:波形の凹凸をつけた形で、工場・倉庫・体育館などで使われてきました。
スレート屋根の屋根材の写真

スレート屋根の石綿の有無は、見た目だけでは判断できません。次の順番で確認します。

建築確認済証、設計図書、リフォームや屋根工事の履歴、取扱説明書などから、着工時期と使われた屋根材の製品名・品番を探します。築年だけでなく「いつ着工したか」「あとから屋根を葺き替えていないか」も確認の材料です。

製品名や品番が分かれば、国土交通省・経済産業省の石綿(アスベスト)含有建材データベースやメーカーの公表情報で、石綿の有無を調べられます。製品に「aマーク」が表示されている場合がありますが、表示は事業者が任意で行ったもので、マークがないことは石綿を含まない証明ではありません。

厚生労働省の案内では、解体・改修工事を請け負う元請事業者は、工事の規模や種類にかかわらず、対象となる箇所すべての材料について事前調査を行う必要があります。また令和5年10月1日以降に着工する工事では、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が義務づけられています。事前調査は、設計図書などを確認する書面調査と、現地で製品名や製品番号を確認する目視調査からなります。

石綿の有無を確認できない場合は、分析調査を行うか、分析をせずに「石綿あり」とみなして法令に沿った措置をとって除去する方法があります。どちらを選ぶかで費用と工期が変わるため、見積の段階で確認しましょう。

なお、屋根に登って屋根材を剥がして品番を確かめる方法は、危険で、石綿を含む場合は飛散のおそれもあるため、おすすめしません。

環境省の資料によると、石綿の規制は次のように進みました。

  • 2006年(平成18年)9月1日:石綿を0.1重量%超含む製品の製造・使用などが禁止されました(一部に猶予措置あり)。
  • 2012年(平成24年)3月1日:0.1重量%超の製品の製造等を禁止する猶予措置が撤廃され、全面禁止となりました。

厚生労働省は、2006年9月より前に着工した建築物には石綿が使われている可能性が高いとしています。一方で、2006年以降、2012年以降に建てられた家であっても、築年だけで「石綿は使われていないはず」と決めつけることはできません。着工日、使われた建材の製品名・製造時期を書面で確認し、確認できなければ有資格者に調べてもらうのが確実です。

製品ごとの製造期間や石綿含有率は、データベースやメーカーの原資料で確認する必要があります。当ページでは、原資料で確認できていない商品一覧表は掲載していません。

石綿を含むスレート屋根への対処には、主に撤去(葺き替え)、カバー工法、塗装があります。どれが向くかは、屋根の劣化状態、割れや欠けの有無、下地の傷み、今後の建物の使い方(住み続けるか、解体・売却するか)で変わります。

方法内容確認したいこと
撤去(葺き替え)既存のスレートを取り外し、新しい屋根材に替えます。湿潤化して可能な限り原形のまま取り外す、作業者は呼吸用保護具を着用する、などの作業方法が見積・工程に含まれているか。廃材の処分先と処分方法の説明があるか。
カバー工法既存の屋根を残し、その上に新しい屋根材を重ねます。既存屋根の劣化・割れ・下地の状態に問題がないか。固定の施工時に既存材へ影響が出ない方法か。将来、屋根や建物を解体するときに、石綿を含む既存材の撤去・処分が必要になる点を理解しているか。
塗装専用の下塗り材などで表面を覆う方法です。劣化や割れが進んだ屋根に向くか。飛散を抑える効果は屋根の状態に左右され、効果を保証できるものではありません。将来の解体時には撤去が必要になる点。

石綿含有の成形板(スレート・ボード・タイル・シートなど)の除去は、切断や破砕などによらない方法で行うことが原則とされています(令和2年10月1日施行)。具体的には、ボルトや釘を外して手作業で取り外す方法です。技術上それが困難な場合は例外があるため、どの方法で行うのかを業者に確認してください。

塗装やカバー工法を選んだ場合でも、工事の内容によっては事前調査が必要になり、「事前調査や対策が不要になる方法」ではありません。DIYでの塗装も、粉じんを巻き上げるおそれがあるためおすすめしません。

将来、建物ごと解体する予定がある場合は、屋根だけを先に工事するよりも、解体工事の見積の中で屋根材の撤去・処分をどう扱うかを比べたほうがよいことがあります。解体全体の流れは「解体工事の費用相場・流れ・業者選び」完全ガイド、スレートの処分費用の考え方は下の関連記事をご覧ください。

石綿を含むスレート屋根の工事は、屋根ごとの条件の差が大きく、面積だけで金額が決まるわけではありません。見積書では、次の項目が分けて書かれているかを確認しましょう。

見積の項目確認するポイント
事前調査・分析調査有資格者が調査するか。分析調査を行うのか、石綿ありとみなして進めるのか。調査結果は書面でもらえるか。
足場・養生足場の範囲、飛散防止のための養生や散水などの対策が含まれているか。
取り外し作業手作業で取り外す前提か。作業人数・日数、保護具の費用が含まれているか。
運搬・処分廃材の運搬方法、処分先、処分費の単位(重量・面積・車両単位)。石綿を含む廃材は他の廃材と分けて処理する必要があります。
新しい屋根の工事下地の補修、防水シート、新しい屋根材、板金(棟・ケラバ)などが含まれているか。
諸経費・報告関連諸経費の範囲、行政への報告が必要な工事の場合に誰が行うか。

金額が増減しやすい条件には、次のようなものがあります。

  • 屋根の面積・勾配・階数、足場を組む条件(隣地との距離、道路状況など)
  • 屋根材の割れ・欠け・劣化の程度や、下地の傷み
  • 処分先までの距離と、処分費の単位(重量か面積か)
  • 軒天・外壁など、屋根以外にも石綿を含む建材があり、同時に工事するかどうか
  • 工法(撤去・カバー・塗装)の違い

複数の業者から見積をとり、同じ条件(同じ工法・同じ範囲)で項目ごとに比べると、金額の違いの理由が分かりやすくなります。

屋根に使われているスレートの写真

国土交通省の「住宅・建築物アスベスト改修事業」の概要資料では、補助の対象は吹付けアスベスト等の含有調査や、除去・封じ込め・囲い込みなどとされています。調査費は、建築物石綿含有建材調査者が行う場合などの要件があり、限度額は原則として25万円/棟とされています。実際の補助は、地方公共団体の制度として実施されます。

この資料には、スレート等の成形板が対象となる旨の記載はありません。そのため、スレート屋根の工事にも使えると考えず、お住まいの市町村の窓口で次の点を確認してください。

  • 対象となる建材(吹付け材のみか、成形板も含むか)と対象建物
  • 対象年度と募集期間、予算の上限
  • 着工前の事前申請が必要か
  • 申請できる人(所有者・事業者など)と、必要な書類

確認できた制度だけを使い、確認できないものを前提に計画しないことが大切です。茨城県内で解体をご検討の方は、下妻市の古い家が多いエリアと建て替え事情もあわせてご参照ください。

相談の前に、次の情報を手元にそろえておくと話が早く進みます。

  • 築年・着工時期が分かる書類(建築確認済証、設計図書、登記の情報など)
  • 屋根の写真(地上から撮れる範囲でかまいません。屋根には登らないでください)
  • 過去の屋根工事・塗装の履歴、屋根の割れや欠けが気になる場所
  • 今後の予定(住み続ける、解体する、売却するなど)

業者には、次の点を確認しましょう。

  • 有資格者による事前調査を行うか、調査結果を書面でもらえるか
  • 分析調査を行うのか、石綿ありとみなして工事するのか
  • 撤去・カバー・塗装のうち、屋根の状態に合う方法とその理由
  • 廃材の処分先と、処分の記録の説明があるか
  • 近隣への説明と、飛散防止の対策の内容

A. 築年だけでは確定できません。2012年(平成24年)3月に全面禁止となりましたが、実際に使われた屋根材は着工日と製品名で確認する必要があります。書類で確認できない場合は、有資格者の事前調査をご利用ください。

A. おすすめしません。転落の危険があるほか、石綿を含む場合は屋根材を割ったり削ったりすると粉じんが飛散するおそれがあります。書類の確認と、専門家による事前調査にとどめてください。

A. 表面を覆うことで飛散を抑えられる場合がありますが、効果を保証できるものではありません。屋根の劣化状態によっては向かないこともあり、将来の解体時には撤去が必要になります。専門業者と比較して選んでください。

A. 国土交通省の制度は、資料上、吹付けアスベスト等が対象とされており、スレートが対象と読み取れる記載は確認できませんでした。市町村ごとに制度が異なるため、対象建材・年度・事前申請の要否を窓口で確認してください。

A. 屋根の面積・形状・足場条件・劣化状態・工法・処分費の単位などで大きく変わるため、この記事では金額を示していません。有資格者による事前調査のあと、項目ごとに分かれた書面の見積で比べてください。

スレート屋根のアスベストは、築年だけでは判断できません。屋根に登らず、書類の確認と有資格者による事前調査で有無を確かめ、そのうえで撤去・カバー工法・塗装を、屋根の状態と今後の予定に合わせて比較することが大切です。見積は項目ごとに分けてもらい、補助制度は対象建材と年度を市町村で確認しましょう。

※制度や法令は改正されることがあります。工事の前に、最新の内容を各機関・市町村の窓口でご確認ください。

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