このように屋根のアスベストを心配されている方は多くいらっしゃいます。また屋根の撤去となると費用も高額となるため様々な情報を収集されていることでしょう。この記事ではアスベストが使われているスレート屋根の特徴・品番、撤去に係る費用相場、その他の情報をお伝えしています。

スレート屋根とは、厚さ5㎜程度の薄いフラットな板状の屋根材のことです。セメントが主成分で日本の一般的な住宅に多く使われていますので、誰もが見た事があるでしょう。

スレート屋根には様々な種類がありますが、主なものは次の通りです。

  • 平板スレート
    スレート屋根の中で最も一般的な形で、薄い板状のスレートを重ねています。カラーベストやコロニアルという商品名で知られるケイミュー社のスレートもこの種類です。
  • 厚型スレート
    平板スレートよりも厚みがあり、瓦のような形状をしています。富士スレートのエアルーフ、アルプス社のアルペンなどの商品があります。
  • 波形スレート
    スレートに波形の凹凸をつけた形で、工場や倉庫、学校の体育館などに多く使われています。

アスベストは耐久性に秀でており過去には多くの建築材料に使われていましたが、健康被害が確認され2006年から制限され2012年には全面的に使用禁止となりました。

我が家のスレート屋根にアスベストが使われているか気になっている方もいらっしゃることでしょう。とはいえ一般の方が屋根を見たところでアスベスト有無をチェックするのは難しいです。

(1)aマーク
アスベスト含有建材には、アスベストが含まれていることを知らせるために、「a」というマークが書かれているものがあります。この「aマーク」は、見やすい場所に書かれていますが、すべての屋根材にあるわけではありません。自主的に表示した企業もあれば、表示しなかった企業もあるからです。「aマーク」がなくても、アスベストが含まれている可能性があります。

(2)建設された時期

前述のとおり2012年からアスベストの使用が禁止となっているので、それ以前に建築された屋根であればアスベストを含んでいる可能性があります。しかし築年からだけでは正確な見分けはできませんのであくまで参考としてです。

(3)石綿含有建材データベースを参照する

国交省/経産省の石綿含有建材データベースがあります。設計図書から使われている屋根材の品番と照合してアスベストの有無を判断することも可能です。屋根に登って屋根をはがして品番をチェックするのはそう簡単な手段ではありません。

(4)メーカーサイトで確認する

スレート屋根のメーカーは自社ホームページで製造した屋根材がアスベスト有か無しかを公開している場合があります。

アスベストを使用したスレート屋根の商品を列記します。

アスベストを使った建材が非常に多いことと、メーカーの取扱停止、廃業等により網羅されていない場合があります。

商品名 製造開始 製造終了 石綿含有率 石綿の種類 備考
カラーベストコロニアル(900) 1961 2001 10~25 白石綿
カラーベストコロニアル(600) 1982 1994 5~15 白石綿
フルベスト(900) 1971 2003 15以下 白石綿
フルベスト(600) 1978 2003 15以下 白石綿
フルセラム 1986 2001 15以下 白石綿
ニューウェーブ 1983 2003 10~15 白石綿 波形
ニューウェーブII 1994 2003 5~10 白石綿 波形
ハイルーフ20DX 1996 2004 4~6 白石綿
ニューハイルーフ 1983 2004 4~6 白石綿
ヘキサー 1999 2004 4~6 白石綿
ハーモニー 1997 2004 7~10 白石綿
ヨーロッパダッハリーベ 1983 2004 4~6 白石綿
ヨーロッパダッハビーバー 1984 2004 4~6 白石綿
ベルリーナベレー 1994 2000 10~12 白石綿
ハイルーフ 1973 2004 4~6 白石綿
大和瓦(波瓦) 1986 2003 10~12 白石綿
トヨベスト 1975 1980 1
トヨかわら55 1996 2002 6 白石綿
ダイケンかわら 1975 1982 10 白石綿
セキスイかわらU 1975 1990 10~14 白石綿、茶併用
UB瓦 1995 1998 22 白石綿
参照:環境省のページ

2006年からアスベストを0.1%超含む建材の使用が原則禁止になっています。ですので2006年以前の年代のスレート屋根にはアスベストが使用されている可能性が高いと言えます。2006年以降に建てられた屋根材はアスベストを使用していない可能性が高いでしょう。また2012年以降はアスベスト使用が禁止になっているので、それ以降に建てられた家屋はアスベストが使用されていないはずです。

アスベストが含まれるスレート屋根を取り除くには、どのくらいの費用が必要でしょうか。費用の内訳は以下のような項目に分けられます。

スレート屋根の撤去費用 アスベスト有 3000円~5000円/㎡
アスベスト無し 2000円~3000円/㎡
足場の設置費用 1000円~1500円/㎡
アスベストの廃棄物処理費用 40000円~70000円/t
工事管理費やその他の経費 工事費用の約10%

一般的に、30坪の2階建て住宅の場合、1階2階の床面積は15坪(約49.5㎡)となり、屋根の面積はざっくり1.2倍して約60㎡となります。この場合、次のような計算でスレート屋根の撤去には30万~50万円ぐらいの費用が見込まれます。

費用を試算してみる

撤去費用が60㎡×3000円~5000円=18万~30万円
足場設置費用は、60㎡×1000~1500円=6万~9万円
処理費用は60㎡×20㎏/㎡=1200㎏=1.2t×4万~7万円=4.8万円~8.4万円(重量ではなく㎡単価の業者もある)
その他の経費2.88万~4.74万円
合計すると、約30~50万円

これらの費用は、工事業者や地域によって異なる場合があります。また、屋根の形状や状態によっても変わる可能性があります。したがって、正確な見積もりを得るためには、複数の業者に相談することをおすすめします。

スレート屋根にアスベストが含まれている場合、その撤去には通常よりも高い費用がかかります。その理由は以下の通りです。

アスベストを扱う際には、安全のために使い捨ての専用保護具を着用する必要があります。この保護具の購入費は、工事費用に上乗せされることになります。

次に、アスベストが空気中に飛散しないようにするためには、養生や散水をしながら丁寧に解体する必要があります。この作業は、通常のスレート屋根の撤去よりも繊細で時間がかかるため、工事費用も高くなります。

アスベスト使用無しのスレート屋根よりも、有りのスレート屋根の方が当然に廃棄物処理費用がかかります。価格は最大で3倍もの差が出ることがあります。石綿含有産業廃棄物を処分できる処理施設は限られており、この課題は、発注者や解体工事業者にとって容易に解決できるものではありません。

アスベスト屋根の改修方法として、カバー工法は有効な選択肢の一つです。この工法は、既存の屋根に新しい屋根材を重ねて施工するもので、アスベストを含むスレート屋根の場合には、解体や廃棄物処理の手間や費用を省くことができます。カバー工法のメリットは以下の通りです。

費用削減: アスベスト屋根の解体や廃棄物処理にかかる費用が不要になるため、葺き替え工事よりも安く済みます。一般的には、1平方メートルあたり約 10,000円から20,000円程度で施工できます 。
工期短縮: カバー工法は既存の屋根をそのまま利用するため、施工期間が短くなります。これにより、住まいへの影響が少なくて済みます。

一般的2階建て住宅で屋根60㎡につきカバー工法を行う場合は、60万円~120万円を費用として想定しておくとよいでしょう。

アスベストが使用されている屋根を塗装することで、飛散を抑制することが出来ます。アスベストが心配な方は解体・履き替え以外にも塗装という方法を検討される方もいらっしゃいます。ただしこの作業はDIY等自分でやることは危険を伴うのでお勧めしません。アスベストを抑え込む専用のプライマー使ってゴミ、汚れを固める事で飛散を防止していき、その後に耐久性の高い塗料で上塗りしていきます。

塗装の費用相場は1平方メートルあたり5000円~120,000円となります。一般的な2階建て戸建の60㎡の屋根を塗装する場合で30万円~72万円と想定できます。塗装によって飛散を抑制することは可能ですがいずれ建物や屋根を解体する予定があるなら2度手間になってしまいます。総合的に勘案して屋根の対処を検討していきましょう。

厚生労働省によると、国として「石綿調査」および「石綿除去工事」について補助金制度を行っています。また各自治体でも補助制度を行っている場合があります。一方で各自治体によって補助金制度がない場合もありますので、ご自身の自治体のホームページ等でご確認ください。補助金は以下の2つのケースで出しています。

  • アスベスト有無の事前調査
    対象の建物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが施工されている可能性がある住宅
    補助金:アスベスト有無を調べるための調査費用。国の補助金は上限25万円/棟。
  • アスベスト除去工事
    対象の建物:吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが施工されている建物
    補助金:アスベストの除去に要する費用で、自治体の補助額の1/2以内。

アスベストを含むスレート屋根を取り除く場合、30坪の住宅では、30万~50万円程度の費用が必要です。通常のスレート屋根と比べて高額なのは、アスベストの飛散を防ぐための対策や特別な保護具、アスベストの処分にかかる費用などが原因です。

アスベストを含むスレート屋根の撤去費用を節約するには、いくつかの業者から見積もりを取って比較し、補助金制度を利用することがおすすめです。撤去が困難な場合は、屋根の状態に応じて塗装やカバー工法といった方法も検討してください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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