行方市を車で走ると、メロン畑の向こうに霞ヶ浦や北浦の水面が見え、その先に古い納屋つきの農家住宅がぽつんと残っている、という景色によく出会います。行方市は茨城県内でも人口減少と高齢化が特に進んでいる自治体のひとつで、空き家の増え方にも農業のまちならではの事情があります。この記事では、行方市の空き家の現状を人口データから確認し、なぜこの地域で空き家が増えやすいのかを整理します。
行方市はどんなまち?二つの湖にはさまれた農業のまち

行方市は2005年9月2日、麻生町・北浦町・玉造町の3町が合併して誕生しました。霞ヶ浦と北浦という二つの湖にはさまれた半島状の地形にあり、水はけの良い台地とメロン等の畑作に恵まれた土地柄です。「行方メロン」の産地として全国的にも知られ、農業が基幹産業となっています。
面積222.48km²・人口密度130.2人/km²という「ゆとりある土地」
行方市の面積は222.48平方キロメートル(令和8年1月1日現在、国土地理院調べ)、人口密度は1平方キロメートルあたり130.2人(令和8年4月1日現在、茨城県統計課)です。つくば市(927.7人/km²)と比べると7分の1程度で、家と家の間に畑や空き地が広がる、ゆとりのある土地利用が特徴です。
土地利用は農地33.6%・宅地はわずか6.1%
令和6年1月1日時点の土地利用状況(茨城県「茨城県市町村概況」)を見ると、農地33.6%、山林19.5%に対し、宅地はわずか6.1%、残る40.8%は霞ヶ浦・北浦の水面を含む「その他」です。宅地の比率が低いということは、それだけ1軒あたりの敷地が広く、農家型の住宅・付属建物(納屋・蔵・作業小屋)を伴うケースが多いことを意味します。
人口の推移で見る行方市のいま
国勢調査でみる35年間の人口減少
総務省統計局「国勢調査」による人口の推移は次のとおりです(茨城県統計課「市町村のデータ」より)。
| 調査年 | 人口 |
|---|---|
| 昭和60年 | 43,074人 |
| 平成2年 | 42,990人 |
| 平成7年 | 42,390人 |
| 平成12年 | 41,465人 |
| 平成17年 | 40,035人 |
| 平成22年 | 37,611人 |
| 平成27年 | 34,909人 |
| 令和2年 | 32,185人 |

昭和60年から令和2年までの35年間で人口は43,074人から32,185人へ、約1万人・25%減少しました。つくば市のように増加に転じる兆しはなく、一貫して減り続けているのが行方市の特徴です。令和8年4月1日現在の常住人口は28,976人、世帯数は11,314世帯(茨城県統計課)で、国勢調査基準からさらに減少が進んでいます。
年齢構成|65歳以上が39.4%、15歳未満はわずか8.6%
令和7年10月1日現在の年齢別人口割合は、15歳未満8.6%、15〜64歳52.1%、65歳以上39.4%(茨城県統計課)。65歳以上が人口の4割近くを占め、茨城県内でも高齢化が進んでいる自治体のひとつです。令和6年の出生数は98人に対し、死亡数は620人(茨城県医療政策課)と、自然減の規模も大きくなっています。
3町合併の成り立ちと土地利用

麻生・北浦・玉造、それぞれの地域性
行方市役所の本庁舎は麻生地区にあり、行政の中心となっています。北浦地区は北浦に面した水郷の風景が広がり、玉造地区は霞ヶ浦に面し観光施設も点在します。3町ともかつては独立した町として農業・漁業を中心に発展してきた経緯があり、合併後も地域ごとの生活圏・集落のまとまりが色濃く残っています。
宅地6.1%が示す「農家型住宅」の多さ
前述のとおり宅地はわずか6.1%しかなく、住宅の多くは農地に囲まれた集落の中に点在しています。母屋のほかに納屋・農機具小屋・作業場を持つ農家型の住宅が一般的で、建物だけでなく敷地全体・附属建物の管理まで含めると、空き家になったときの管理負担は都市部の住宅より大きくなりがちです。
なぜ行方市で空き家が増えるのか
後継者不在型の相続|農業を継がない子ども世代
行方市の主要産業は農業ですが、子ども世代が進学・就職で市外に出たまま、実家の農業を継がずにそのまま定住するケースが多いのが実情です。相続後、遠方に住む相続人が広い農地と住宅をまとめて管理するのは負担が大きく、住宅だけでなく農地も含めて放置されがちという、農業のまち特有の構造があります。
出生数98人・死亡数620人という自然減の大きさ
令和6年の出生数はわずか98人に対し、死亡数は620人。単純計算で年間500人以上のペースで自然減が進んでいる計算になり、世帯そのものが途絶えて空き家化するケースも他市町村より起こりやすい構造です。
汚水処理人口普及率67.6%という生活基盤の事情
汚水処理人口普及率は67.6%(令和7年3月31日現在、茨城県下水道課)と、つくば市(94.4%)などと比べて低めです。生活インフラの整備状況も、若い世代の定住・新規流入のハードルのひとつになっていると考えられます。
空き家を放置するとどうなるか
特定空家等に指定されるリスク
適切な管理がされず倒壊等の危険性が高い、衛生上有害となるおそれがある、著しく景観を損なっているなどと市が判断した場合、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき「特定空家等」に指定される可能性があります。指定後は助言・指導、勧告、命令と段階的に手続きが進みます。
固定資産税の住宅用地特例が外れる
特定空家等に指定され「勧告」を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れ、税額が大きく上がる場合があります。農地とセットで相続した住宅を「とりあえずそのまま」にしておくと、後々の税負担が重くなるリスクがある点は知っておく必要があります。
広い敷地・付属建物ゆえの管理負担
母屋だけでなく納屋・農機具小屋・ブロック塀・生垣まで含めて管理が必要になるため、都市部の住宅と比べて「空き家1軒」あたりの管理コストが大きくなりやすいのも、行方市のような農業地域特有の課題です。
空き家、どうする?4つの選択肢
そのまま所有し続ける場合のコストとリスク
固定資産税・都市計画税は住み続けなくても毎年発生します。加えて、農地がセットになっている場合は農地の管理(草刈り・畦の管理等)も必要になり、都市部の住宅より維持の手間がかかります。放置が進み特定空家等に指定されると、税負担が増える点にも注意が必要です。
空き家バンクを活用する
行方市は空き家・空き地の登録制度(空き家バンク)を運用しており、市のホームページで物件情報を公開し、移住希望者等とのマッチングを図っています。すぐに解体する予定がなく、活用の可能性を探りたい場合の選択肢のひとつです(制度の詳細・登録条件は行方市公式サイトでご確認ください)。
売却する
建物の状態が良ければ中古住宅として、老朽化が進んでいれば農地・宅地として売却するのが選択肢になります。霞ヶ浦・北浦沿岸の景観を活かした需要が見込める場合もありますが、農地部分は農地法上の制限(農業委員会の許可等)があるため、宅地と農地を分けて考える必要があります。
解体して更地にする
老朽化が進み活用にも売却にも向かない場合は、解体して更地にしたうえで、他の農地とまとめて活用する、あるいは売却するという選択肢があります。母屋だけでなく納屋・農機具小屋・ブロック塀まで含めた解体費用の見積もりが必要になる点は、農家型住宅ならではの注意点です。
解体を選ぶときに知っておきたいこと
行方市内で家の解体を検討する場合、気になるのは費用の目安と使える補助金の有無です。当サイトでは、行方市の解体費用の相場や業者選びのポイントをこちらの記事で、行方市の解体費用の補助金(上限100万円の条件と順番)をこちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。また、地域ごとに残る古い家が多いエリアと建て替え事情については行方市の古い家が多いエリアと建て替え事情で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 行方市に空き家はどのくらいありますか?
市内の詳細な棟数の集計は公表資料からは確認できていませんが、宅地の比率が6.1%と低く農家型住宅が多いこと、人口が35年で約25%減少していることから、農地とセットになった空き家が一定数存在すると考えられます。最新の状況は行方市の窓口にご確認ください。
Q2. 行方市の空き家バンクとはどんな制度ですか?
行方市が運用する、空き家・空き地の売買や賃貸を希望する所有者の物件情報を市のホームページで公開し、移住希望者等とマッチングする制度です。登録条件や手続きの詳細は行方市公式サイトでご確認ください。
Q3. 農地とセットになった空き家はどう扱えばいいですか?
宅地部分と農地部分は法律上の扱いが異なり、農地を売却・転用する場合は農業委員会の許可が必要になることがあります。まずは宅地・農地それぞれの現況を確認し、どこまでを解体・売却の対象にするか整理することをおすすめします。
Q4. 空き家を放置するとどんなリスクがありますか?
倒壊・衛生・景観などの問題が深刻な場合、「特定空家等」に指定される可能性があります。指定後に勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がることがあります。
Q5. 行方市に解体費用の補助金はありますか?
行方市には空き家解体の補助金制度があります。上限額や対象条件は当サイトの「行方市の空き家解体補助金」の記事、または市の窓口で最新情報をご確認ください。
Q6. 納屋や農機具小屋も解体費用に含まれますか?
母屋以外の付属建物(納屋・農機具小屋・ブロック塀等)も解体対象に含める場合は、その分の費用が別途かかります。見積もりの際は、解体する範囲(母屋のみか、敷地内の建物すべてか)をあらかじめ業者に伝えることが重要です。
まとめ
行方市は霞ヶ浦と北浦にはさまれた農業のまちで、35年間で人口が約25%減少し、高齢化率も4割近くに達しています。宅地の比率が低く農家型住宅が多いという土地柄から、空き家1軒あたりの管理負担も大きくなりがちです。相続や管理でお困りの場合は、空き家バンクの活用、売却、解体という選択肢を、農地部分の扱いも含めて早めに整理することをおすすめします。
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