研究学園駅前に新しいマンションが建つ一方で、車で15分ほど郊外に走ると、雨戸を閉めたままの家や庭木が伸び放題の家をよく見かける。つくば市に住んでいる、あるいはこの街に土地や実家を持っている人なら、一度はこの「差」に気づいたことがあるのではないでしょうか。この記事では、つくば市の空き家の現状を人口データと市の公式資料から確認し、なぜこの街で「増えている場所」と「空き家が目立つ場所」がはっきり分かれるのかを整理します。
つくば市はどんなまち?研究学園都市と郊外の「二つの顔」
つくば市は1987年11月30日、旧桜村・大穂町・豊里町・谷田部町・筑波町・茎崎町の6町村が合併して誕生しました。筑波研究学園都市としての歴史を持つ一方、市域の多くは元々農村地帯だった郊外エリアで構成されています。面積は283.72平方キロメートル、茨城県内でも有数の広さです(令和8年1月1日現在、国土地理院調べ)。

つくばエクスプレス沿線は今も人口が増え続けている
2005年のつくばエクスプレス(TX)開業以降、研究学園駅・みどりの駅・万博記念公園駅周辺では区画整理事業が進み、新しい戸建てやマンションの建設が続いています。つくば市の人口は令和8年4月1日現在で263,206人、世帯数は126,763世帯(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)と、増加基調が続いている数少ない市町村のひとつです。
一方で「この15年、人口が減り続けている」地区もある
つくば市が公表している「第2期つくば市空家等対策計画」には、率直にこう書かれています。「つくばエクスプレス沿線地区において、新しい住宅の建設や人口増加が進む一方で、周辺地区では、この15年間人口が減少し続けています」。同じ市内でも、TX沿線と郊外(旧町村部)とでは、まったく逆の方向に進んでいるということです。
人口の推移で見るつくば市のいま
国勢調査でみる約35年間の人口推移
総務省統計局「国勢調査」による人口の推移は次のとおりです(茨城県統計課「市町村のデータ」より)。
| 調査年 | 人口 |
|---|---|
| 昭和60年 | 150,074人 |
| 平成2年 | 168,466人 |
| 平成7年 | 182,327人 |
| 平成12年 | 191,814人 |
| 平成17年 | 200,528人 |
| 平成22年 | 214,590人 |
| 平成27年 | 226,963人 |
| 令和2年 | 241,656人 |

年齢構成|15歳未満15.2%・65歳以上20.0%
令和7年10月1日現在の年齢別人口割合は、15歳未満15.2%、15〜64歳64.7%、65歳以上20.0%(茨城県統計課調べ)。県内の他市町村と比べると高齢化率は低めですが、これは市全体の平均であり、地区ごとに事情はかなり異なります。TX沿線に子育て世帯が集中する一方、郊外の集落では高齢化が先に進んでいるのが実態です。
常住人口26万人超・世帯数12.6万世帯という「規模の大きさ」
つくば市は茨城県内で人口・世帯数ともに最大規模の自治体です。母数が大きいぶん、空き家の絶対数も無視できない規模になりやすく、市が計画的な対策に乗り出す背景のひとつになっています。
TX沿線と郊外、明暗を分けた15年

研究学園・みどりの・万博記念公園|新築ラッシュが続く理由
研究学園駅周辺は市役所やイオンモールなどの都市機能が集積し、みどりの駅周辺は大規模な区画整理で計画的に街区が整備されました。東京都心へのアクセスの良さ(つくばエクスプレスで秋葉原まで最短45分程度)もあり、子育て世帯を中心に転入が続いています。この一帯では建物の建て替え・新築のサイクルが早く、空き家が長期間放置されるケースは相対的に少ない地域です。
6町村合併の名残り|谷田部・大穂・豊里・桜・筑波・茎崎
一方、1987年の合併前から集落として存在していた谷田部・大穂・豊里・桜・筑波・茎崎の各地区には、合併前からの旧市街地や農村集落が今も残っています。区画整理が及んでいない地域も多く、敷地が広く古い母屋と離れ・納屋がセットになった住宅も珍しくありません。こうした地区が、市の計画がいう「周辺地区」にあたります。
つくば市の空家等対策の歩み
平成25年「空き家等適正管理条例」から第2期計画まで
つくば市は早い段階から空き家問題に取り組んできた自治体です。平成25年4月に「つくば市空き家等適正管理条例」を施行し、平成30年3月に「つくば市空家等対策計画」を策定。その後、令和5年度から令和9年度までを計画期間とする「第2期つくば市空家等対策計画」へと改定しています(つくば市公式サイト)。
令和4年度実態調査でわかったこと
第2期計画の基礎資料として、市は令和4年8月から10月にかけて市内全域を対象に「空家等実態調査」を実施しました。外観からの目視で空家等かどうかを確認し、管理状況もあわせてチェック、さらに所有者へのアンケートで今後の意向も調査しています。空家等の数・分布・所有者の属性といった詳細データは、つくば市公式サイトで実態調査報告書(オープンデータ)として公開されています。具体的な棟数や地区別の内訳を確認したい方は、市の報告書を直接ご参照ください。
なぜつくば市で空き家が増えるのか
研究学園都市ゆえの「転勤・転出」型相続
つくば市は研究機関・大学関係者や国家公務員、企業の研究所勤務者など、転勤を伴う世帯が多いという土地柄があります。親がつくば市内、あるいは郊外の実家に住み続け、子ども世代は進学・就職で市外・県外に出たまま戻らないというパターンが、他市より起こりやすい構造です。相続後、遠方に住む相続人が実家の管理まで手が回らず空き家化する、というのはつくば市に限らず全国共通の傾向ですが、研究学園都市という性格上その比率は高めになりやすいと考えられます。
旧町村部の広い敷地・農家型住宅という事情
谷田部・大穂・豊里などの旧町村部には、母屋のほかに納屋・蔵・作業小屋を持つ農家型の住宅が多く残っています。建物本体だけでなく敷地全体・附属建物まで含めて管理する必要があるため、遠方に住む所有者にとっては草刈りひとつをとっても負担が大きく、放置につながりやすい構造があります。
空き家を放置するとどうなるか
特定空家等に指定されるリスク
適切な管理がされず倒壊等の危険性が高い、衛生上有害となるおそれがある、著しく景観を損なっているなどと市が判断した場合、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき「特定空家等」に指定される可能性があります。指定後は助言・指導、勧告、命令と段階的に手続きが進み、応じない場合は行政代執行(強制的な解体等)に至ることもあります。
固定資産税の住宅用地特例が外れる
特定空家等に指定され「勧告」を受けると、固定資産税の住宅用地特例(敷地200平方メートルまでの部分が最大6分の1に軽減される制度)の対象から外れ、税額が大きく上がる場合があります。空き家を「そのまま置いておくのが一番安全」と考えがちですが、放置には税制上のリスクも伴う点は正しく知っておく必要があります。
エリア別・古い家が多い場所の傾向
谷田部・茎崎エリア|旧市街地と農村集落が混在
谷田部地区は江戸期からの陣屋町・宿場町を起源とし、旧市街地には間口の狭い敷地や接道条件の厳しい土地が残ります。茎崎地区は牛久市・つくばみらい市に近い南部に位置し、農地と住宅地が混在する農村集落型のエリアです。いずれも合併前からの古い家屋が点在しています。
大穂・豊里・筑波エリア|筑波山麓と農地混在の集落
大穂・豊里は筑波研究学園都市の建設に伴い一部区画整理が進みましたが、幹線道路から外れた集落部分には昔ながらの農家住宅が残ります。筑波地区は筑波山麓に位置し、山間部の集落や別荘的に使われていた建物など、管理が行き届きにくい建物が点在しやすい地形的特徴があります。
空き家、どうする?4つの選択肢
そのまま所有し続ける場合のコストとリスク
固定資産税・都市計画税は住み続けなくても毎年発生します。加えて、定期的な巡回・草刈り・通水(水道を定期的に流して配管を保護する作業)などの管理コストもかかります。前述のとおり、放置が進み特定空家等に指定されると税負担が増える点にも注意が必要です。
賃貸・活用にまわす
研究学園都市という土地柄、単身赴任者や学生向けの賃貸需要は一定数あります。ただしリフォーム費用がかかるうえ、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の建物は借り手がつきにくいケースもあり、費用対効果の見極めが必要です。
売却する
建物の状態が良ければ中古住宅として、老朽化が進んでいれば土地として売却するのが選択肢になります。TX沿線に近いエリアほど土地としての需要が見込みやすい一方、郊外の旧町村部は買い手がつくまで時間がかかることもあります。
解体して更地にする
老朽化が進み賃貸にも売却にも向かない場合は、解体して更地にしたうえで売却・駐車場活用・建て替えを検討する選択肢があります。更地にすると住宅用地特例が外れ固定資産税が上がる点はあらかじめ理解したうえで、次の活用計画とセットで判断することが大切です。
解体を選ぶときに知っておきたいこと
つくば市内で家の解体を検討する場合、気になるのは費用の目安と使える補助金の有無です。当サイトでは、つくば市の解体費用の相場や業者選びのポイントをこちらの記事で、つくば市に解体費用の補助金があるかどうかをこちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。また、TX沿線と郊外での「古い家が多いエリア」の違いや建て替え事情についてはつくば市の古い家と建て替え事情で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. つくば市に空き家はどのくらいありますか?
市内全域の詳細な棟数・分布は、つくば市が令和4年度に実施した「空家等実態調査」の報告書(つくば市公式サイトでオープンデータとして公開)に記載されています。人口・世帯数が県内最大規模の自治体であるため、絶対数としては軽視できない規模になっていると考えられます。
Q2. つくば市のどのエリアに空き家が多いですか?
市の計画資料によれば、TX沿線地区(研究学園・みどりの・万博記念公園周辺)は人口増加が続く一方、周辺地区(谷田部・大穂・豊里・桜・筑波・茎崎の旧市街地・農村部)はこの15年人口が減少し続けており、相対的に古い家や空き家が目立ちやすい傾向にあります。
Q3. 空き家を放置するとどんなリスクがありますか?
倒壊・衛生・景観などの問題が深刻な場合、「特定空家等」に指定される可能性があります。指定後に勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がることがあるため、早めの判断が重要です。
Q4. 実家を相続しましたが、遠方に住んでいて管理できません。どうすればいいですか?
そのまま所有し続ける、賃貸に出す、売却する、解体して更地にするという4つの方向性があります。建物の状態や立地(TX沿線に近いか郊外か)によって向き不向きが変わるため、まずは現地の状態を確認し、複数の選択肢を比較することをおすすめします。
Q5. つくば市に解体費用の補助金はありますか?
制度の有無・条件は変わることがあるため、最新情報は当サイトの「つくば市に空き家解体の補助金はある?」の記事、または市の窓口に直接ご確認ください。
Q6. 更地にすると固定資産税は上がりますか?
建物がある土地は住宅用地特例により固定資産税が軽減されていますが、解体して更地にするとこの特例が外れ、土地の固定資産税額が上がるのが一般的です。解体を検討する際は、更地にした後の土地活用や売却時期もあわせて計画しておくことをおすすめします。
まとめ
つくば市は研究学園都市として人口が増え続ける稀有な自治体ですが、その内実はTX沿線地区と郊外の旧町村部とで大きく異なります。市が「第2期つくば市空家等対策計画」で明言しているとおり、周辺地区ではこの15年人口減少が続いており、空き家・古い家の増加はこの構造から生まれています。相続や管理でお困りの場合は、放置せずに所有し続ける・活用する・売却する・解体するという選択肢を早めに比較検討することが、税負担やリスクを抑える近道です。
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