日立市の住宅ストックはどう積み上がったのか

日立市は茨城県北東部の太平洋沿岸に位置し、明治期の鉱山開発と、その後の重工業(現・日立製作所グループ)の発展を軸に市街地が形成されてきた「企業城下町」です。常住人口は茨城県の推計で158,742人、世帯数は75,805世帯(令和8年4月1日現在)となっています。空き家全体の現状や制度については日立市の空き家の現状とまちの変化で詳しく解説しています。

日立市の住宅地は、多賀山地と太平洋に挟まれた狭い平地に沿って南北に細長く広がっているのが特徴です。高度経済成長期に鉱山労働者・工場従業員向けの社宅・住宅団地が山の斜面や丘陵地に次々と造成され、その多くが築40〜60年を超える時期を迎えています。

鉱山の隆盛と企業城下町としての発展

1905年(明治38年)に久原房之助が日立鉱山を買収して以降、鉱山とその関連企業を中心に人口が急増し、助川町と日立町が1939年(昭和14年)に合併して日立市が誕生しました。鉱山労働者の住居確保のため、山間部にも多くの住宅・社宅が建設された歴史があります。

斜面地・山間部に広がる住宅団地の高齢化

多賀山地の谷筋や斜面を切り開いて造成された住宅団地は、当時30〜40代だった取得者がそのまま高齢化し、団地全体が一斉に築年数を重ねる傾向があります。平坦な区画整理地とは異なり、道路が狭く高低差のある敷地が多いのも特徴です。

古い家が多いエリアの特徴

日立市内で「古い家が多い」と言われるエリアには、共通する背景があります。ここでは代表的な3つのタイプに分けて整理します(特定の町丁の資産価値を評価するものではなく、一般的な傾向として紹介します)。

助川・会瀬エリア(旧市街地)

日立駅周辺から南側に広がる助川・会瀬エリアは、日立市発祥の地にあたる旧市街地です。狭い平地に住宅が密集して建てられてきた歴史があり、道路幅員が狭く、敷地の間口も小さい家屋が多く残っています。

鉱山跡地周辺の高台住宅地

日立鉱山があった山間部周辺には、かつての社宅・従業員住宅を起源とする住宅地が点在します。急な坂道や階段状の道路に面した敷地が多く、車の進入や重機の搬入に制約がある立地が少なくありません。

多賀地区の昭和期住宅団地

高度経済成長期に日立製作所関連工場の従業員向けとして開発された多賀地区の住宅団地は、入居時期が集中したことで住民の高齢化と建物の老朽化が同時に進んでいるエリアです。

新しい住宅地との対比で見える違い

日立市内でも、東海村・ひたちなか市に近い南部エリアや、区画整理が実施された平坦地は比較的新しい住宅の割合が高いエリアです。旧市街地・山間部との違いを整理すると、建て替えのしやすさに関わる要素が見えてきます。区画整理済みのエリアは道路幅員・敷地形状が建築基準法に適合するよう整えられているため建て替え時の制約が少ない一方、山間部・旧市街地の未整理な街区は同じ「日立市内」でも建て替えの難易度が大きく異なります。また、日立市は用途地域ごとに建ぺい率・容積率、高さ制限などが定められており、同じ古い家でも建て替え後にどのような規模の建物が建てられるかはエリアによって差があります。市街化調整区域に該当するかどうかも含め、詳細は日立市都市建設部の窓口で確認できます。

エリアタイプ 代表地区 建て替え時の主な制約
旧市街地 助川・会瀬 道路幅員が狭い、敷地の間口が小さい
高台住宅地 鉱山跡地周辺 急坂・段差、重機搬入の制約
昭和期住宅団地 多賀地区 住民の一斉高齢化、建物の一斉老朽化
新興住宅地・区画整理地 南部の平坦地など 制約が比較的少ない

築年数が古い家に起きること

日立市に限らず、築30〜50年を超える木造住宅では、次のような課題が顕在化しやすくなります。

設備劣化とアスベスト建材の可能性

目に見えない床下・壁内の配管・配線は、住みながらの交換が難しく、劣化に気づいた時には水漏れや漏電といったトラブルとして表面化することがあります。また、2006年(平成18年)以前に建てられた建物は、屋根材・外壁材にアスベストを含む建材が使われている可能性があり、解体時は事前調査と、該当する場合は法令に基づいた適切な除去作業が必要です。

耐震基準と再建築可否のリスク

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」で建てられている可能性があります。相続空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の対象となる家屋の条件にも、この昭和56年5月31日という基準日が使われています。また、旧市街地や斜面地では、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していない「再建築不可」のケースもあり、解体前に必ず確認が必要なポイントです。

建て替え・解体を考えるときの判断ポイント

「古い家をどうするか」を考える際、日立市内では立地によって選択肢の幅が異なります。

再建築可能かどうかを最初に確認する

建て替えを検討する場合、まず敷地が再建築可能な条件を満たしているかどうかの確認が最優先です。日立市都市建設部の窓口や、登記簿・公図とあわせて事前に調べることをおすすめします。

斜面地・狭小地特有の建築条件を確認する

山間部・旧市街地の敷地は、がけ条例(がけ地に近接する建築物の制限)や、道路幅員の制約を受けることがあります。平坦地の建て替えとは条件が異なるため、個別の確認が欠かせません。

解体してから活用方法を考える選択肢

建て替え以外にも、解体して更地にしたうえで売却する、駐車場として活用するなど複数の選択肢があります。日立市には現在、市が運営する空き家バンク制度はなく、ハトマークサイト(宅地建物取引業協会)や全日本不動産協会の民間ネットワークが紹介されている点は事前に知っておきたいポイントです。

日立市が使える空き家・建て替え関連の制度

日立市は「第2期日立市空家等対策計画」(令和4年度〜令和8年度の5年計画)を策定し、空家等対策の推進に関する条例に基づいた取り組みを進めています。市が独自に運営する空き家バンクは無い一方、以下の制度が利用可能です。

相続空き家の譲渡所得3,000万円特別控除

被相続人が居住していた家屋(昭和56年5月31日以前建築)を相続した相続人が、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに家屋を解体して土地を売却するなど、一定の要件を満たした場合に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる国の制度です。日立市でも要件確認のための書類発行に対応しています。

木造住宅耐震化支援事業助成金

昭和56年5月31日以前に建築された木造戸建て住宅を対象に、耐震診断・耐震改修計画・耐震改修工事の各段階で費用の一部を助成する制度です。耐震診断は助成率16分の15・限度額3万円、改修計画・改修工事はそれぞれ助成率3分の1・限度額10万円および30万円が目安とされています(年度により内容が変わるため、申請前に必ず日立市の最新情報を確認してください)。契約前の申請が必須である点に注意が必要です。

空き家利活用促進事業(解体・リフォーム補助)

日立市は空き家の除却や利活用を促す目的で、空き家解体補助金(利活用型)や空き家利活用リフォーム補助金などの制度を設けています。対象となる空き家の要件や補助額は年度ごとに定められるため、詳しい条件は日立市の空き家解体補助金の記事もあわせてご確認ください。

解体を選ぶ場合に知っておきたいこと

日立市内で解体を検討する際は、エリアによる立地条件の違いを踏まえておくことが重要です。

解体費用の目安と残置物の扱い

木造住宅の解体費用は坪単価3〜5万円が目安とされますが、助川・会瀬エリアや斜面地のように前面道路が狭く高低差がある立地では、重機が入れず手作業解体が増えることでコストが上がる場合があります。具体的な費用の考え方は日立市の解体費用相場記事もあわせてご確認ください。また、長年住んだ家ほど残置物(家財道具)の量が多くなりがちです。解体前に家財の仕分け・処分が必要になり、これも狭小地・斜面地では搬出経路の制約を受けることがあります。

日立市の地価動向(参考)

2026年の日立市の公示地価は、住宅地の平均で1平方メートルあたり約3万3,827円(坪単価約11万1,827円)とされ、前年からわずかに下落する傾向が見られます(複数の不動産情報サイトの集計による目安)。ただし用途地域・立地・接道条件によって実際の取引価格は大きく異なるため、あくまで参考値としてご覧ください。詳細な取引事例や個別の査定は、地元の不動産会社にご相談されることをおすすめします。

▶あわせて読みたい:ひたちなか市の古い家が多いエリアと建て替え事情【2026年】

よくある質問(FAQ)

Q1. 日立市で「古い家が多い」と言われるのはどのエリアですか?

A. 日立駅周辺の助川・会瀬といった旧市街地、鉱山跡地周辺の高台住宅地、多賀地区の昭和期住宅団地の3タイプが代表的です。理由はそれぞれ異なり、旧市街地は狭い平地への密集、高台住宅地は鉱山関連社宅の老朽化、住宅団地は入居時期の集中による一斉高齢化が背景にあります。

Q2. 自宅の敷地が「再建築不可」かどうかはどこで確認できますか?

A. 日立市都市建設部の窓口で、敷地が接する道路の種別(建築基準法上の道路かどうか)を確認できます。登記簿・公図とあわせて事前に調べることをおすすめします。

Q3. 市街化調整区域でも建て替えはできますか?

A. 日立市内には市街化調整区域も存在し、区域や条件によって開発許可・建築許可の要否が異なります。該当するかどうかは日立市都市建設部の窓口での個別確認が必要です。

Q4. 日立市に空き家バンク制度はありますか?

A. 現時点で日立市が独自に運営する空き家バンク制度はありません。空き家を探す・登録する場合は、ハトマークサイト(宅地建物取引業協会)や全日本不動産協会のラビーネット不動産など、市が連携する民間の不動産ネットワークが案内されています。

Q5. 昭和56年より前に建てた家は必ず建て替えが必要ですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。旧耐震基準で建てられた家でも、日立市の木造住宅耐震化支援事業助成金を使って耐震診断・耐震改修を行い、現行基準相当の性能を確保できる場合があります。ただし老朽化の度合いによっては解体・建て替えのほうが合理的なケースもあり、個別の診断が重要です。

Q6. 解体と建て替え、どちらを先に相談すればよいですか?

A. まず敷地が再建築可能かどうかの確認が先です。再建築可能であれば解体・建築の両方を進められますが、再建築不可の場合は解体後の活用方法(駐車場・売却など)を先に検討する必要があります。

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