「鹿嶋市を車で走っていると、鹿島神宮の門前町らしい古い家並みのエリアと、工業地帯で働く人たちが暮らす昭和期の住宅地、そして田園風景の中に農家住宅が点在するエリアと、街のつくりがはっきり分かれている」——そう感じたことのある方は少なくないはずです。鹿嶋市は1995年に旧鹿島町と大野村が合併してできた街で、鹿島神宮の門前町・鹿島臨海工業地帯の企業城下町・旧大野村の農村集落という、成り立ちの異なる3つの顔を持っています。本記事では、鹿嶋市のどのエリアに古い住宅が集中しているのか、その背景を整理したうえで、建て替え・解体を検討する際の判断ポイントと、鹿嶋市が実際に用意している支援制度を一次情報ベースで解説します。

鹿嶋市の成り立ちと住宅地が抱える年代差

鹿嶋市は1995年(平成7年)9月、旧鹿島町と大野村が合併して誕生した市です。鹿島神宮の門前町として古くから栄えた旧鹿島町エリアと、農業が中心だった旧大野村エリアでは、市街地が形成された時期も性格も大きく異なります。さらに1969年(昭和44年)に鹿島臨海工業地帯の建設が本格化して以降、工場労働者の受け皿として社宅・借上げ住宅・分譲住宅が短期間に大量供給された経緯があり、これが3つ目の年代層を形づくっています。門前町の古い町割り、工業地帯造成期の昭和40〜50年代住宅、旧大野村の農家住宅という、成り立ちの異なる住宅ストックが同じ市内に混在しているのが鹿嶋市の特徴です。

古い家が多いと言われる3つのエリアタイプ

鹿嶋市内で「古い家が多い」とされる地域には、共通する背景がいくつかのパターンに分かれます。特定の町丁の資産価値を評価するものではなく、一般的な傾向として整理します。

タイプ1:鹿島神宮周辺・宮中地区の門前町エリア

鹿島神宮の参道沿いから宮中・大町にかけてのエリアです。古社の門前町として発展してきたため敷地が狭小で、旗竿地や接道幅の狭い土地が点在しているのが特徴です。観光資源としての価値がある一方、建て替え時に建築基準法上の接道義務を満たせず「再建築不可」に近い扱いとなる土地が一定数存在します。近年は鹿島神宮の参拝客向けに、空き家を店舗や宿泊施設へ転用する動きも一部で見られますが、狭小な敷地形状ゆえに用途変更のハードルが高い物件も少なくありません。

タイプ2:神向寺・平井の工業地帯周辺住宅地

鹿島臨海工業地帯の造成が本格化した昭和40年代後半〜50年代にかけて、工場従業員向けの社宅や分譲住宅が集中的に建てられたエリアです。持ち家と借家(社宅・借上げ住宅)が混在しやすく、企業の稼働状況や社宅の入退去動向によって、局所的に空室・空き家が発生しやすい傾向があります。入居時期が集中しているため、現在まとまって築45〜55年前後を迎えつつあります。

タイプ3:大野・波野の農村・田園集落エリア

1995年の合併前は大野村だったエリアで、現在も田園風景の中に農家住宅や納屋・蔵を伴う広い敷地の住宅が点在しています。世代交代とともに後継者が市街地や都市部へ転出し、母屋だけが残されるケースが目立ちます。敷地が広い分、建て替えよりも解体・更地化して活用方法を再検討する選択肢が現実的になりやすいエリアです。

築年数が古い家に起きやすいこと

耐震性・アスベスト・設備配管の劣化

昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた「旧耐震基準」の住宅は、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。また、昭和のなかば〜平成初期に建てられた住宅では、屋根材や外壁材にアスベスト(石綿)含有建材が使われているケースがあり、解体時には事前調査・適切な処理が法律で義務付けられています。給排水管など目に見えない設備配管の経年劣化も、築40年を超える住宅では珍しくありません。

【図解】鹿嶋市 古い家が多い3つのエリアタイプ

鹿嶋市内の3つのエリアタイプの特徴を、下記の図で整理しました。

鹿嶋市 古い家が多い3つのエリアタイプ比較図

建て替え・解体を検討するときの判断ポイント

まず敷地の接道状況と用途地域を確認する

建て替えを検討する際にまず確認すべきは、敷地が建築基準法上の道路に2メートル以上接しているかどうかです。門前町エリアの旗竿地や狭小地では、この接道義務を満たせず「再建築不可」となっているケースがあります。あわせて、都市計画法上の用途地域(住居系・工業系など)によって建てられる建物の種類や規模が制限されるため、市の都市計画課で事前確認することをおすすめします。

次に資金計画と補助制度の活用可否を確認する

建て替えには解体費用・新築費用・仮住まい費用など、まとまった資金が必要です。鹿嶋市が用意している耐震改修や住宅リフォームの補助制度を活用できるかどうかで、資金計画は大きく変わります。次章で詳しく解説する各制度の対象要件を、着手前に必ず確認しましょう。

【図解】建て替え・解体を検討する判断フロー

接道状況の確認から補助制度の活用まで、判断の流れを図にまとめました。

鹿嶋市 建て替え・解体を検討する判断フロー図

地価と空き家放置リスクから見る鹿嶋市の今

地価情報サイトtochidai.infoの集計によると、鹿嶋市の2026年(令和8年)公示地価は平均21,603円/平方メートル前後とされ、鹿島神宮駅周辺エリアなど一部では相対的に堅調な動きも見られます(出典:tochidai.info、出典・調査地点によって数値に幅があるため目安としてご覧ください)。地価はエリアによって明暗が分かれており、門前町・工業地帯周辺・農村集落それぞれで資産価値の傾向が異なります。また、鹿嶋市の基準では構造や設備が著しく不良な住宅は「不良住宅」、倒壊の危険や衛生上の問題があるものは「特定空家」として認定される可能性があります。認定を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除され税負担が増加するおそれがあるほか、放置期間が長くなるほど建物の劣化が進み解体費用がかさむ傾向がある点にも注意が必要です。

鹿嶋市が実施している住宅関連の支援制度

木造住宅耐震改修工事等補助事業

鹿嶋市は、昭和56年5月31日以前に建築工事に着手された木造戸建住宅を対象に、耐震改修費用を補助する制度を設けています。耐震診断で上部構造評点が1.0未満と診断された住宅が対象で、補助額は耐震改修工事に要する費用の5分の4(ただし100万円が上限)です。申請者は住宅の所有者またはその親族に限られ、市税に滞納がある場合は対象外となります(出典:鹿嶋市公式サイト「木造住宅の耐震改修費用を助成します」)。

空家の解体・中古住宅のリフォームに対する補助金

鹿嶋市では、令和8年度の「既存ストック利活用補助金」として、不良住宅の判定または特定空家の認定を受けた空き家の解体費用(5分の4・上限50万円)、および空き家を購入して住むための改修費用(3分の2・上限50万円)を補助する制度を設けています。申請期間は令和8年4月1日〜12月25日で、予算に達し次第受付終了となる点に注意が必要です(出典:鹿嶋市公式サイト「空家の解体・中古住宅のリフォームをされる方に補助金を交付します」)。解体費用の補助制度の詳しい条件は、鹿嶋市の空き家解体補助金の記事もあわせてご確認ください。

建て替え費用そのものへの補助金は用意されていない

誤解のないようお伝えすると、鹿嶋市には「建て替え費用そのもの」を直接補助する制度は見当たりません(2026年時点、市公式サイト確認)。耐震改修やリフォームなど特定の工事内容に対する補助はありますが、建て替え全体を対象とした補助金ではないため、資金計画は自己資金・住宅ローン等を基本に立てる必要があります。

解体を選ぶ場合に押さえておきたい実務ポイント

解体費用・アスベスト・滅失登記の実務ポイント

解体を選ぶ場合、木造住宅の解体費用は一般的に坪あたり3万〜5万円程度が目安とされますが、重機の搬入経路や隣地との距離、アスベスト含有建材の有無によって変動します。特に門前町エリアの狭小地・旗竿地では、重機が敷地に入れず手作業中心の解体になることで、費用が相場より高くなるケースがあります。鹿嶋市は株式会社クラッソーネと連携協定を結んでおり、市公式サイトから解体費用の概算をシミュレーションできますが、傾斜地や特殊な条件がある物件は概算より高くなる場合がある点に注意してください。解体後は1か月以内に法務局へ「建物滅失登記」を申請する義務があり、これを怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性がある点も押さえておきましょう。相続登記が済んでいない不動産は、補助金の申請自体ができない場合があるため、早めに相続人間で話し合っておくことをおすすめします。

鹿嶋市の空き家をめぐる現状(参考)

鹿嶋市公式サイトによると、市の常住人口は令和8年1月1日時点で63,727人・28,961世帯、令和8年7月1日時点で63,285人・29,121世帯と推移しています。半年で人口は減少している一方、世帯数はほぼ横ばい〜微増となっており、一人あたりの世帯人数が小さくなる、単身・高齢世帯が増える典型的な傾向がうかがえます(出典:鹿嶋市公式サイト「人口と世帯一覧」)。市は「第二期鹿嶋市空家等対策計画」を策定し、当事者間での解決を原則としつつ、解体・リフォーム補助などの支援策を用意する姿勢を示しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 鹿嶋市で「古い家が多い」と言われるのはどのエリアですか?

鹿島神宮周辺・宮中地区の門前町エリア、神向寺・平井の工業地帯周辺住宅地、大野・波野の農村・田園集落エリアの3タイプが挙げられます。それぞれ古い家が多い背景が異なるため、一律に語ることはできません。

Q2. 自分の家が「再建築不可」の土地かどうかはどこで確認できますか?

建築基準法上の道路に2メートル以上接しているかどうかが基準になります。鹿嶋市都市計画課の窓口で、敷地の接道状況・用途地域を確認できます。

Q3. 鹿嶋市に建て替え費用そのものを補助する制度はありますか?

2026年時点で、建て替え費用そのものを直接補助する制度は見当たりません。ただし旧耐震基準の住宅を対象とした耐震改修費用の補助(5分の4・上限100万円)は利用できる場合があります。

Q4. 木造住宅耐震改修工事等補助事業はどのくらいの金額を受けられますか?

耐震改修工事に要する費用の5分の4に相当する額(上限100万円)が補助されます。対象は昭和56年5月31日以前に建築工事に着手された木造戸建住宅で、耐震診断の上部構造評点が1.0未満と診断されたものに限られます。

Q5. 空き家の解体には補助金がありますか?

不良住宅の判定または特定空家の認定を受けた空き家であれば、既存ストック利活用補助金(解体費用の5分の4・上限50万円)を利用できる可能性があります。ただし予算に達し次第受付終了となるため、早めの確認をおすすめします。

まとめ|鹿嶋市の古い家との向き合い方

鹿嶋市の「古い家が多いエリア」は、鹿島神宮の門前町、工業地帯周辺の住宅地、旧大野村の農村集落という、成り立ちの異なる3つの背景から生まれています。建て替えを検討する際は、まず敷地の接道状況と用途地域を確認し、そのうえで耐震改修やリフォームなど活用できる補助制度がないかを確認することが大切です。解体を選ぶ場合も、費用相場やアスベスト調査、滅失登記など押さえるべき実務ポイントがあります。ご自身の状況に合わせて、専門家への相談も検討しながら、無理のない判断をしていきましょう。

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