2020年11月、境町は自治体として全国で初めて自動運転バスを公道で定常運行させたことで一躍注目を集めました。「小さな町の大きな挑戦」として全国から視察が絶えないこの町は、江戸期には利根川水運の要衝「河岸(かし)」として栄えた歴史を持ちます。人口2万人台の町がなぜ先進的な取り組みに踏み出せたのか、そしてその足元で空き家問題はどう進んでいるのか。境町の人口・世帯データとまちの成り立ちから、空き家が生まれる背景を掘り下げます。
境町の人口・世帯構成
茨城県統計課「市町村のデータ(境町)」によると、境町の常住人口は23,888人、世帯数は9,568世帯(いずれも令和8年4月1日現在)です。面積46.59平方キロメートルに対し人口密度は512.7人/平方キロメートルで、県西エリアの町村の中では高い密度を保っています。
国勢調査でみる人口のピークとその後
総務省統計局「国勢調査」の結果(茨城県統計課「市町村のデータ」掲載)を見ると、境町の人口は次のように推移してきました。
| 調査年 | 人口(人) |
|---|---|
| 昭和60年 | 26,297 |
| 平成2年 | 26,922 |
| 平成7年 | 27,237(ピーク) |
| 平成12年 | 27,171 |
| 平成17年 | 26,468 |
| 平成22年 | 25,714 |
| 平成27年 | 24,517 |
| 令和2年 | 24,201 |
平成7年の27,237人をピークに緩やかな減少が続いていますが、減少率は3割弱にとどまっており、周辺の一部町村と比べると比較的なだらかな下降線を描いています。令和8年4月時点の推計人口は23,888人で、ここ数年は大きな崩れなく推移していることがうかがえます。

年齢構成のいまを数字で見る
令和7年10月1日現在の年齢別人口割合は、15歳未満12.1%、15〜64歳57.9%、65歳以上30.0%です(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)。65歳以上が3割にとどまっている点は、これまで紹介してきた県内の他の町村と比べても若い構成であり、境町が子育て世帯の流入をある程度確保できていることを示しています。
利根川の「河岸」として栄えたまちの成り立ち
境町の歴史は水と深く結びついています。縄文時代から永井戸沼・逆井沼などの旧沼周辺に人々が定住し、町内には多くの遺跡が残されています。古墳時代には数多くの古墳が築かれました。そして江戸時代、徳川幕府による利根川東遷事業を経て整備された利根川水運の中で、境町は「境河岸」として大いに栄えました。奥州や日光方面から集められた物資が境河岸に集積され、高瀬舟によって利根川から江戸川を経由し江戸へと運ばれる、物流の一大拠点だったのです。
現在の境町は2015年(平成27年)に合併60周年の節目を迎えており、昭和30年前後の町村合併を経て現在の町域が形づくられました。河岸町として栄えた歴史的な中心部と、その後の市街地拡大・住宅地開発が進んだエリアとが混在しているのが、境町の市街地構造の特徴です。
自動運転バスが象徴する「攻めのまちづくり」
境町を語るうえで欠かせないのが、2020年11月26日から始まった自動運転バスの定常運行です。BOLDLY株式会社と株式会社マクニカの協力のもと3台の自動運転バスを導入し、自治体が公道で定時・定路線の自動運転バスを定常運行させたのは境町が全国で初めてでした。以降、乗車人数は延べ3万人を超え、町の人口規模を上回る利用実績を重ねています。全国から視察が相次ぐこの取り組みは、財政規模の大きくない町でも大胆な投資判断とスピード感のある意思決定によって先進事例を生み出せることを示した好例といえます。
こうした「攻めのまちづくり」は、境町の年間商品販売額や製造品出荷額等の推移にも表れています。製造品出荷額等は令和元年919億円→令和5年1,206億円と着実に伸びており、財政力指数も0.67(令和6年度)と県内の同規模自治体の中では堅調な水準を維持しています。
境町で空き家が生まれる背景
河岸町エリアの高齢化
利根川沿いの旧河岸町エリアは境町の中でも歴史が古く、住宅の建築年数も相対的に高くなりがちです。自動運転バスなど新しい取り組みが注目される一方で、こうした歴史的な中心部では住民の高齢化と後継者不在が進みやすく、空き家予備軍が静かに増えている実態があります。
農地率48.2%という土地利用構造
令和6年1月1日時点の土地利用状況では、農地が48.2%と町域の半分近くを占め、宅地は17.5%にとどまります(茨城県市町村課「茨城県市町村概況」)。農業を営んできた世帯の高齢化に伴い、母屋や納屋が空き家化するケースは、境町のような農地率の高い自治体に共通する課題です。
汚水処理人口普及率76.3%という現実
境町の汚水処理人口普及率は76.3%(令和7年3月31日現在、茨城県下水道課)で、水道普及率97.3%と比べるとやや整備が追いついていない領域です。生活インフラの整備状況は、空き家の活用・売却を検討する際の判断材料の一つになります。
境町の空き家対策・補助制度の現状
当サイトの別記事「境町に空き家の解体補助金はある?答えと代替制度【2026】」で町公式ホームページの情報をもとに確認した結果、2026年(令和8年度)時点で境町には空き家・住宅そのものの解体費用を補助する制度はありません。一方で、地震時の倒壊リスクを防ぐための「危険ブロック塀等撤去費補助金」は用意されており、空き家の解体とあわせて敷地内のブロック塀を撤去する場合に活用できる可能性があります。「解体費が出る」という情報を見かけても、内容をよく確認したうえで判断することをおすすめします。

境町の空き家・解体のご相談は解体Do!へ
解体費用の目安を先に押さえておく
補助制度が無い自治体だからこそ、まずは解体費用の相場感を正確に把握しておくことが判断の第一歩になります。構造・延床面積・立地条件によって費用は変わるため、当サイトの別記事「境町の解体工事|費用相場から優良業者の選び方、流れまで専門家が解説」もあわせてご確認ください。
隣接する五霞町では解体費用そのものへの補助制度が用意されています。制度の違いを比較したい方は「五霞町の空き家の現状とまちの変化【2026年】」もご覧ください。
境町の生活基盤と今後の見通し
境町の市町村道舗装率は64.14%(令和6年3月31日現在)で、水道普及率は97.3%(令和6年3月31日現在)と、いずれも生活の基盤として一定の水準を確保しています(茨城県道路維持課「茨城県道路現況調書」、茨城県水政課「茨城県の水道」)。医療施設従事医師数は人口10万人あたり396.8人(令和4年12月31日現在、茨城県医療政策課)と県内でも高い水準にあり、これは町内に医療機関が集積していることを反映していると考えられます。
境町民所得は1人当たり3,562千円(令和5年度、茨城県統計課「市町村民経済計算」)で、製造品出荷額等の伸びと合わせて見ると、自動運転バスに象徴される先進的な取り組みだけでなく、実体経済の面でも堅調さが続いていることがうかがえます。こうした「攻めの姿勢」と「地道な産業基盤」の両輪が、境町の人口減少ペースを周辺町村よりなだらかにしている一因と考えられます。
五霞町・境町エリアで空き家を検討する方へ
境町と隣接する五霞町は、どちらも猿島郡に属し利根川・江戸川水系に近い立地でありながら、空き家対策の制度設計は対照的です。五霞町が老朽空家解体費補助金という形で解体費用そのものを直接支援するのに対し、境町は解体そのものへの直接補助はなく、危険ブロック塀等撤去費補助金や住宅リフォーム資金助成制度など周辺制度で対応する形をとっています。実家や所有する空き家がどちらの自治体にあるかによって、使える制度・取るべき順序が変わってくる点を押さえておきましょう。
よくある質問
Q. 境町に空き家の解体補助金はありますか?
A. 2026年(令和8年度)時点で、境町には空き家・住宅そのものの解体費用を補助する制度はありません。ただし危険ブロック塀等撤去費補助金など、解体とあわせて活用できる可能性のある制度は存在します。最新情報は町の担当課で必ずご確認ください。
Q. 境町の人口はどのくらいのペースで減っていますか?
A. 国勢調査によると平成7年の27,237人をピークに緩やかな減少が続き、令和2年は24,201人でした。令和8年4月の推計人口は23,888人で、減少率は3割弱にとどまっています。
Q. 境町はなぜ自動運転バスで有名なのですか?
A. 2020年11月26日、自治体として全国で初めて自動運転バスを公道で定時・定路線で定常運行させたためです。以降、乗車人数は延べ3万人を超え、全国から視察が相次いでいます。
Q. 境町の「河岸」とは何ですか?
A. 江戸時代、利根川水運の拠点として栄えた「境河岸」を指します。奥州・日光方面からの物資が集積され、高瀬舟で江戸まで運ばれる物流の要衝でした。この歴史的な中心部は現在も町の市街地構造に影響を残しています。
Q. 境町で空き家を解体せず活用する方法はありますか?
A. 住宅リフォーム資金助成制度など、解体以外の目的で使える助成制度があります。解体前に、賃貸・売却・リフォームといった活用の選択肢も含めて比較検討することをおすすめします。
Q. 境町の空き家解体はどんな業者に依頼すればよいですか?
A. 補助金が無い分、費用面での比較検討がより重要になります。地域の道路事情や近隣との距離感を把握した地元業者に、まずは無料見積りを依頼して比較することをおすすめします。
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