茨城県北相馬郡利根町は、利根川と小貝川に挟まれた県境の町です。首都圏のベッドタウンとして人口が急増した時代を経て、いま町内の住宅地では「空き家」が目立つようになってきました。この記事では、利根町が公表している統計や空家等対策計画をもとに、町の人口・世帯の変化と空き家の実態、そして所有者が抱える悩みを整理します。あわせて、空き家をどう扱っていくかを考える際の選択肢もご紹介します。

利根町はどんな町?まずは基本データを確認

利根町は都心から約40km圏、茨城県の南端に位置する町です。北は龍ケ崎市、東は河内町、西は小貝川を挟んで取手市、南は利根川を挟んで千葉県我孫子市・印西市と接しています。町域は東西8.3km、南北5.2km、総面積24.86平方キロメートルで、これは茨城県内44市町村の中でも3番目に小さい面積です(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。

令和8年5月1日現在の人口は男性7,703人、女性7,769人の合計15,472人、世帯数は8,034世帯となっています(出典:利根町公式ホームページ「人口と世帯」)。地形の97%が平地で山林はわずか3%という、平坦な土地柄も特徴です。

ベッドタウンとして人口が急増した昭和の利根町

昭和45年に首都圏整備法による近郊整備地帯の指定を受けたことをきっかけに、利根町では住宅団地の開発が相次ぎました。昭和50年に9,504人だった人口は、平成2年には20,511人まで増加しています。わずか15年で人口が2倍以上になった計算です(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。

データで見る利根町の人口・世帯の変化

住宅開発が一段落した平成2年以降、利根町の人口は減少局面に入りました。国勢調査ベースの推移を見ると、その傾向がはっきり分かります。

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平成12年に19,033人だった人口は、令和2年の国勢調査では15,340人まで減少しました。一方で世帯数は平成12年の5,753世帯から令和2年の6,258世帯へと増加しています。人口が減っているのに世帯数が増えているのは、1世帯あたりの人数が小さくなっている(核家族化・単身世帯化が進んでいる)ためです。町の資料によれば、平成12年に1世帯あたり3.3人だったのが、令和2年には2.5人まで縮小しています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

高齢化率は県内でも高い水準

過疎地域持続的発展計画によると、利根町の高齢化率(65歳以上人口の割合)は平成2年の9.7%から平成27年には38.2%まで急速に上昇しました。さらに令和3年4月時点では高齢者人口7,033人、高齢化率44.70%に達し、これは茨城県内でも2番目に高い水準とされています(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。住宅団地が一斉に開発された経緯から、入居した世代がまとめて高齢期を迎えているという事情も背景にあります。

今後の人口見通し

第2期利根町まち・ひと・しごと創生総合戦略の人口ビジョン(令和2年3月改定版)では、令和12年(2030年)に12,889人、令和27年(2045年)に9,104人、令和42年(2060年)に6,516人まで減少が続くと推計されています(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。この見通しは、今後も空き家が増えやすい状況が続くことを意味しています。

利根町の空き家は今どのくらいあるのか

総務省の住宅・土地統計調査によると、平成30年時点で利根町の住宅総数は6,940戸、このうち空き家は750戸で、空家率は10.81%でした。平成25年調査の880戸・空家率12.63%と比べると、戸数・率とも減少しています。ちなみに同時期の茨城県全体の空家率は14.84%であり、利根町は県平均よりやや低い水準です(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

ただし、この統計調査は抽出調査にもとづく推計値である点に注意が必要です。実態をより正確に把握するため、利根町は令和3年度に独自の実態調査を行っています。

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令和3年度実態調査でわかった437戸という数字

利根町は令和3年度、36の行政区の区長の協力を得て、町内全域を対象に「居住者が不在で空き家と思われる建築物」の実態調査を実施しました。その結果、町内には空家等と思われる建築物が437戸点在していることが判明しています。このうち19戸は不動産業者などによる管理が確認できたものです(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

地区別に見ると、利根ニュータウン66戸、早尾台73戸、利根フレッシュタウン41戸など、昭和50年代に開発された新興住宅地に空き家が集中している傾向が読み取れます。町の資料でも「空家等の約7割が新興住宅地に集中している」と分析されています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。ベッドタウンとして一斉に開発された地域だからこそ、住民の高齢化・世代交代のタイミングも重なりやすいということがうかがえます。

所有者アンケートから見える空き家の実態

利根町は実態調査で確認された437件の空家等所有者を対象にアンケートを実施し、167件の回答を得ています(回答率38.22%)。この結果からは、空き家をめぐるリアルな事情が見えてきます。

所有者の年齢と居住地

回答者のうち「60歳代」が28%、「70歳代」が38%、「80歳以上」が10%で、60歳以上の合計は76%にのぼります。また所有者の居住地は「県外」が50%を占め、「町内」は27%にとどまりました(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。高齢の所有者が遠方から空き家を管理しているケースが多いことが分かります。

空き家になった理由

空き家になった理由(複数回答)は、「住んでいた人が死亡したため」が30%、「他所へ住宅を建築・購入し、転居したため」が26%で、この2つで56%を占めます。「相続などにより取得したが、住む人がいないため」も13%ありました(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。相続をきっかけに空き家となるケースが一定数あることがうかがえます。

建物の古さと今後の活用意向

建築時期については「昭和51年〜昭和60年」「昭和41年〜昭和50年」「昭和61年〜平成7年」に建てられた、築27〜50年程度の住宅が全体の66%を占めています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。一方で「修理なしでも住める状態」「多少の修理で住める状態」との回答が合わせて70%あり、利活用の余地がある空き家も少なくないようです。

今後の活用意向では「売却したい」が38%で最も多く、「賃貸したい」が13%、「空き家を解体したい」が5%となっています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。また所有者の64%が空き家のままにしておくことに何らかの不安を感じており、その内容として「火事」「空き巣・不法侵入」「雑草」「近隣への迷惑」「住居の老朽化」などが挙げられています。

利根町が描く「まちの将来像」

人口減少や高齢化が進むなか、利根町は平成31年3月に第5次利根町総合振興計画を策定し、「ともに創ろう みんなが住みたくなるまち とね」を将来像に掲げています。安全で人にやさしいまちづくり、健康で元気あふれるまちづくりなど5つの基本方針のもと、さまざまな施策を進めています(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。

令和3年4月には「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」の施行にともない、利根町はあらためて過疎地域の指定を受けました。町ではこの制度で発行が認められる過疎対策事業債を活用し、移住・定住の促進、産業振興、生活環境の整備など幅広い分野で持続可能な地域づくりに取り組んでいます(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。

商店街の空き店舗対策も進む

空き家問題は住宅だけの話ではありません。利根町の資料では、長年地域商業を支えてきた個人商店の経営者が高齢化・後継者不足によって閉店・廃業し、空き店舗が増加していることも課題として挙げられています。町はこれを受けて「まちなか・商店街活性化事業」を進め、若者会議「とねまち未来ラボ」の発足や、空き店舗を活用したチャレンジショップの整備などに取り組んでいます(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。住宅の空き家と商店街の空き店舗、どちらも「町の担い手をどう確保するか」という共通の課題につながっています。

利根町が進める空き家対策

こうした状況を受け、利根町は「利根町空家等対策計画」を策定し、空き家問題に取り組んでいます。平成30年4月に第1期計画を策定し、令和5年4月には第2期計画(計画期間:令和5年度〜令和9年度)に改定されました(出典:利根町公式ホームページ「利根町空家等対策計画(第2期)が策定されました」)。

空き家・空き地バンク制度

利根町では「空き家・空き地バンク」制度を運用しています。これは、空き家を売りたい・貸したい所有者の情報を町が登録・公開し、利用を希望する移住希望者などとのマッチングを行う仕組みです。運営には公益社団法人茨城県宅地建物取引業協会が協力しています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。指標として「令和9年度までに成約件数128件(令和3年度累計74件から)」という目標も掲げられています。

空き家バンク利用者向けの助成金

空き家バンクを通じて空き家を取得・賃借する方向けに、町独自の助成金も用意されています。

  • 空き家子育て活用促進奨励金:中学生以下の子どもと同居する世帯に一律20万円を交付
  • 空き家リフォーム工事助成金:リフォーム費用の2分の1(上限30万円)を助成、町内建築業者による施工が条件

(出典:利根町公式ホームページ「空き家バンク助成金のご案内」)

特定空家等への対応

適正に管理されず、倒壊や衛生上の危険があると認められる空き家は「特定空家等」として、助言・指導、勧告、命令、そして最終的には行政代執行の対象になり得ます。特に勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(更地に比べて税額が軽減される制度)が解除される点は、所有者にとって見落とせないポイントです(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

空き家をこれからどうするか、選択肢を整理する

利根町の所有者アンケートでは、「売却・賃貸したいが方法や相談先が分からない」「解体したいが解体費用の問題で実行できない」「相続の問題で関係者の承諾が得られない」といった悩みが多く挙げられていました(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。これらは利根町に限らず、全国の空き家所有者に共通する課題でもあります。

選択肢としては、大きく分けて次の3つが考えられます。

  • 空き家バンクを活用して売却・賃貸する:建物の状態が良ければ、町の助成金制度も活用しながら次の住まい手を探す方法です。
  • リフォームして自分や親族が住む・貸す:築年数が古くても、修繕により活用できる余地がある建物も少なくありません。
  • 解体して更地にする:老朽化が進み活用が難しい場合や、管理の負担を減らしたい場合には、解体して土地として管理・売却する方法もあります。

どの選択が良いかは、建物の状態や立地、相続関係、資金面などによって異なります。特に解体を検討する場合は、建物の構造や規模によって費用が大きく変わるため、複数の業者から見積もりを取って比較することが大切です。利根町エリアの解体費用相場については、別記事「利根町の解体費用はいくら?2026年相場と業者選び7つの注意点」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

まとめ

利根町は首都圏のベッドタウンとして急成長した歴史を持つ一方、現在は人口減少と高齢化が全国平均を上回るペースで進んでいます。令和3年度の実態調査では437戸の空き家が確認され、その多くが新興住宅地に集中し、所有者の多くが60歳以上・県外在住という状況も分かりました。空き家をそのままにしておくことへの不安を感じている所有者は6割を超えており、「どうすればよいか分からない」という声も少なくありません。空き家バンクや助成金の活用、リフォーム、解体など、建物の状態や事情に合わせた選択肢があります。まずは現状を整理し、相談できる窓口に問い合わせてみることが第一歩です。

よくある質問

Q1. 利根町の空き家は全国的に見て多いのですか?

平成30年住宅・土地統計調査によると、利根町の空家率は10.81%で、茨城県平均の14.84%より低い水準です。ただし令和3年度の町独自調査では437戸の空き家等が確認されており、特に昭和50年代に開発された新興住宅地に集中しています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

Q2. 利根町の空き家バンクはどうやって利用しますか?

空き家を売りたい・貸したい所有者は、必要書類を添えて役場に登録申込みを行います。登録された物件情報は町のホームページや全国版空き家バンクサイトでも公開されます。利用登録した希望者との橋渡しは、茨城県宅地建物取引業協会が協力して行っています(出典:利根町公式ホームページ「空き家・空き地バンク登録物件」)。

Q3. 空き家バンクを利用すると助成金はもらえますか?

要件を満たせば、中学生以下の子どもと同居する世帯向けの「空き家子育て活用促進奨励金」(20万円)や、「空き家リフォーム工事助成金」(工事費用の2分の1、上限30万円)が利用できます。ただし予算枠に達し次第受付終了となるため、早めの確認が必要です(出典:利根町公式ホームページ「空き家バンク助成金のご案内」)。

Q4. 空き家を放置するとどうなりますか?

適正に管理されず、倒壊のおそれや衛生上の問題があると判断された空き家は「特定空家等」に認定され、助言・指導、勧告、命令、最終的には行政代執行の対象となる可能性があります。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除され、税負担が増えることもあるため注意が必要です(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

Q5. 空き家所有者はどのようなことに悩んでいますか?

利根町のアンケート調査では、「売却・賃貸の方法や相談先が分からない」「解体費用の問題で実行できない」「相続の問題で関係者の承諾が得られない」といった悩みが多く挙げられました。所有者の64%が空き家のままにしておくことへの不安を感じています(出典:利根町空家等対策計画 第2期)。

Q6. 空き家を解体するかどうかはどう判断すればよいですか?

建物の状態、立地、相続関係、資金面などを総合的に考慮する必要があります。実態調査では「修理なしでも住める状態」「多少の修理で住める状態」の空き家が合わせて70%を占めており、必ずしも解体だけが選択肢ではありません。まずは建物の状態を確認し、売却・賃貸・リフォーム・解体それぞれの費用感を比較することをおすすめします。

Q7. 利根町の人口は今後どうなる見込みですか?

第2期利根町まち・ひと・しごと創生総合戦略の人口ビジョンでは、令和12年(2030年)に12,889人、令和27年(2045年)に9,104人まで減少すると推計されています。人口減少と高齢化の進行にともない、今後も空き家は増加しやすい状況が続くと考えられます(出典:利根町過疎地域持続的発展計画)。