霞ヶ浦の北岸、なだらかな丘陵地に果樹園と住宅地が入り混じる街がある。かすみがうら市。2005年に生まれてから、まだ21年しか経っていない、茨城県内では比較的新しい市だ。この記事では、市が公表している空き家の実態調査データと人口の推移を手がかりに、かすみがうら市でいま何が起きているのかを整理する。

かすみがうら市はどんなまち?

2005年、二つの町がひとつになった日

かすみがうら市は、2005年3月28日に新治郡の千代田町と霞ヶ浦町が合併して誕生した。市役所の機能は千代田庁舎と霞ヶ浦庁舎の2つに分かれたままで、市民窓口センター(中央庁舎)を含めた3拠点体制が続いている。合併から21年、いまも「千代田地区」「霞ヶ浦地区」という2つの顔を持つまちだと考えると分かりやすい。

いまの人口と世帯(令和8年7月1日)

かすみがうら市公式ホームページによると、令和8年7月1日現在の常住人口は37,980人(男19,327人・女18,653人)、世帯数は16,456世帯。前月比では人口が3人減った一方、世帯数は35増えている。1世帯あたりの人数が減り続けているということで、これは単身高齢世帯や核家族化が進んでいることの裏返しと言える。市が策定した「第2期かすみがうら市空家等対策計画」に掲載された長期推計を見ると、2010年に44,232人だった人口は2024年に40,369人、2025年推計で39,803人まで下がり、2035年には36,892人まで減る見込みとされている。合併直後は4万5千人を超えていたことを踏まえると、21年間で人口はすでに7千人以上減少した計算になる。

数字で見る空き家の実態

494件という数字の中身

かすみがうら市は令和4年6月10日から令和5年2月28日にかけて、市内の空き家等実態調査を実施した。調査対象となった建物2,015件のうち、利用されていないと判断された空き家等は494件。前回の平成29年度調査(560件)と比べると66件減っているが、これは空き家が解消されたというより、市街地の宅地開発などで対象そのものが入れ替わった影響が大きいとされている。市はこの調査結果を踏まえ、令和6年度から令和10年度までを計画期間とする「第2期かすみがうら市空家等対策計画」を策定している。

危険度で分けると見えてくること

494件の空き家は、外観目視による18項目のチェックをもとに4段階の危険度に区分されている。「なし」が241件(48.8%)と半数近くを占める一方、「非常に高い」が89件(18.0%)、「高い」が50件(10.1%)と、放置すれば周辺に影響が及びかねない空き家も合わせて139件、全体の約28%にのぼる。「低い」は110件(22.3%)だった。数字だけを見ると空き家全体が危険というわけではなく、むしろ大半は現時点で深刻な状態ではない。ただし約3割弱が要注意ゾーンに入っているという事実は、放置すればその比率が今後じわじわ上がっていく可能性を示している。

かすみがうら市 空き家実態調査 データ早見表 解体Do!
かすみがうら市の空き家実態調査データ早見表(市公式資料をもとに作成)

空き家が集まりやすい場所

市の分析では、空き家等は市内全域に分散しつつも、郊外に比べて神立駅周辺の市街地エリアにより集中している。神立駅そのものはJR常磐線の駅で所在地は隣接する土浦市側にあるが、かすみがうら市千代田地区の北部にとって最寄り駅として機能してきた経緯があり、駅周辺の住宅密集地はかすみがうら市側にも広がっている。市街化区域は住宅同士の距離が近いぶん、空き家1件の劣化が隣接する住宅や道路へ及ぼす影響も大きくなりやすい。

なぜ空き家は生まれるのか

きっかけの2割超は「死亡」

市が空き家等の所有者を対象に行ったアンケート調査では、「建物を利用しなくなった理由で最も大きな要因」として、全体の2割を超える回答者が「住んでいた人が死亡したため」を挙げている。世代交代のタイミングで住宅の使い道が決まらないまま、相続の手続きも進まず、結果として空き家化していくケースが多いという実態が浮かぶ。

管理を続けられない所有者も2割

同じアンケートで「建物の維持管理はどのくらいの頻度で行っていますか」という問いに対しては、全体の約2割の所有者等が定期的な管理を行っていないと回答した。遠方に住む相続人が実家を持て余しているケースなど、管理したくてもできない事情を抱える所有者が一定数いることがうかがえる。

かすみがうら市は「壊す」より「活かす」

空家等・空き地バンクという仕組み

かすみがうら市は「かすみがうら市空家等・空き地情報登録制度(通称:空家等・空き地バンク)」を運用しており、宅地建物取引業者が仲介役となって売買や賃貸のマッチングを行う。バンクに物件を登録した所有者には登録奨励金5万円(予算の範囲内)が交付されるほか、バンクを通じて空き家を取得し定住する意思で改修する人には、リフォーム費用の一部を補助する制度も用意されている。

解体費用そのものへの補助はない

一方で、住宅を解体・除却する費用そのものを補助する制度は、2026年7月時点でかすみがうら市の公式ホームページ上には見当たらない。この点は当サイトの「かすみがうら市の解体補助金|無い理由と使える3制度」で市公式サイトの記載にもとづき確認済みだ。空家等対策計画には「管理不全空家等」向けの解体撤去補助金が現行の施策として名前だけ挙げられているが、これは市が特定空家等・管理不全空家等と認定した物件を対象にした仕組みで、一般の所有者が任意に申請して使える制度とは性質が異なる。「壊す前提の支援」より「活かす前提の支援」に予算が振られているのが、かすみがうら市の設計思想だと言える。

まちの風景も変わってきた

霞ヶ浦沿い・歩崎エリアの今

霞ヶ浦随一の景勝地とされる歩崎(あゆみざき)は、水郷筑波国定公園に指定され、展望台からの三叉沖の眺めは茨城百景にも数えられてきた。ただし歩崎森林公園は施設の老朽化により、当面の間利用を休止している。観光資源としての価値は変わらない一方、施設の維持そのものが課題になっている点は、住宅の空き家問題と根っこが似ている。

梨とぶどうが実る郊外、そして千代田石岡IC

かすみがうら市郊外には梨やぶどうの観光農園が点在し、8月から10月にかけて果物狩りを楽しめる。一方で常磐自動車道の千代田石岡インターチェンジ(かすみがうら市下志筑)は1982年の開通以来、石岡市や鉾田市方面へのアクセス拠点として機能してきた。農業地帯としての顔と、高速道路の結節点としての顔を併せ持つのが、いまのかすみがうら市の姿だ。

空き家と防災、重なるリスク

霞ヶ浦・恋瀬川の浸水想定

かすみがうら市は2008年4月に洪水ハザードマップを公表しており、霞ヶ浦と恋瀬川の浸水想定区域を示している。国土交通省霞ヶ浦河川事務所も、想定最大規模・計画規模それぞれの浸水深と浸水継続時間を公開している。管理が行き届かない空き家が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれている場合、災害時に倒壊や流出のリスクが周辺にも及ぶ可能性がある。空き家の管理を考えるときは、立地のハザード情報も合わせて確認しておきたい。

相続と登記、これからの前提

2024年の相続登記義務化

2024年4月1日に施行された相続登記の義務化により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を行うことが法律上の義務になった。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる。かすみがうら市の空き家対策計画でも、相続に伴う登記の未了が空き家発生の要因として位置付けられており、実家を相続する予定がある人にとっては、空き家になる前の段階での手続きの重要性が増している。

空き家をどうするか迷ったら

解体を選ぶ前に確認したい2つのこと

かすみがうら市の空き家等・空き地バンクや各種補助制度は、いずれも「活用」を前提にした仕組みが中心で、解体費用そのものへの補助は用意されていない。実家や親族の家が空き家になりそうなとき、まず検討したいのは①バンクへの登録や賃貸・売却でそのまま活かせないか、②活用が難しい場合の解体費用と、更地にした後の土地活用・売却の見通し、の2点だ。具体的な解体費用の目安は「かすみがうら市 解体費用|2026年相場と5つのコスト削減術」で確認できる。

まとめ

かすみがうら市の空き家は494件(令和4年度調査)、そのうち約28%が「危険度が高い」区分に入る。人口は合併時から7千人以上減り、2035年には3万7千人を割り込む見込みだ。市は解体そのものへの補助よりも、空家等・空き地バンクを軸にした「活かす」支援に力を入れている。空き家をどうするか判断するときは、市の支援制度と、解体という選択肢の両方を天秤にかけて考えることが欠かせない。

よくある質問

Q1. かすみがうら市に空き家はどれくらいありますか?

A. かすみがうら市が令和4年度に実施した空き家等実態調査によると、市内の空き家等は494件です。平成29年度調査の560件から66件減少していますが、これは宅地開発など調査対象の入れ替わりの影響が大きいとされています。

Q2. かすみがうら市で空き家が増えている一番の理由は何ですか?

A. 市が所有者に行ったアンケートでは、「住んでいた人が死亡したため」という回答が全体の2割を超え最も多くなっています。世代交代に伴う相続手続きの停滞が、空き家発生の大きな要因とされています。

Q3. かすみがうら市に住宅の解体費用を補助する制度はありますか?

A. 2026年7月時点で、かすみがうら市公式ホームページ上に住宅の解体費用そのものを補助する制度の案内は見当たりません。詳しくは当サイトの解体補助金に関する記事で確認できます。

Q4. かすみがうら市の空き家バンクとはどんな制度ですか?

A. 「かすみがうら市空家等・空き地情報登録制度」という名称で運用されている制度で、宅地建物取引業者が仲介し、空き家・空き地の売買や賃貸を希望する人をマッチングします。登録した所有者には奨励金5万円が交付されるほか、取得者向けのリフォーム補助金もあります。

Q5. かすみがうら市で空き家が多いのはどのエリアですか?

A. 市の実態調査では、空き家等は市内全域に分散しているものの、神立駅周辺の市街地エリアに比較的集中している傾向が示されています。

Q6. 空き家を解体する前に確認しておくべきことは?

A. かすみがうら市の支援制度は空き家バンクなど「活用」を前提にしたものが中心で、解体費用への補助はありません。解体を検討する前に、バンクへの登録や賃貸・売却で活かせないかを確認し、それでも解体を選ぶ場合は費用相場と更地後の活用・売却の見通しをセットで検討することをおすすめします。

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