茨城県常総市は、鬼怒川と小貝川に挟まれた水海道・石下エリアからなる市です。「空き家」という言葉を検索すると、水害の記憶と結びつけて語られることも多い地域ですが、実際の人口動態や空き家対策の中身を一次情報から確認すると、単純な「水害で空き家が増えた」という話だけでは説明しきれない、もう少し複雑な事情が見えてきます。本記事では常総市公式ホームページなどの一次情報をもとに、常総市の空き家の現状とまちの変化を整理します。

常総市の基礎データ(2026年)

まず常総市の規模感を数字で押さえておきます。常総市公式ホームページによると、令和8年7月1日現在の住民基本台帳人口は59,859人(男性30,512人・女性29,347人)、世帯数は26,716世帯です。令和8年4月1日時点の地区別集計でも人口59,869人・世帯26,527世帯とほぼ同水準で推移しています。

1世帯あたりの人員は約2.2人台で、核家族化・高齢単身世帯の増加を反映した水準といえます。市域は旧水海道市と旧石下町が2006年(平成18年)に合併して誕生した経緯があり、両地域で人口構成やまちの成り立ちに違いがある点も、空き家の分布を考える上での前提になります。

常総市 空き家 現状 基礎データ早見表 kaitai-ibaraki.com
常総市の基礎データ早見表(出典:常総市公式ホームページ、常総市空家等対策計画、tochidai.info)

常総市の人口動態と世帯数の推移

常総市の人口は、茨城県常住人口調査の2026年7月時点の発表資料でも触れられているとおり、県内の中では人口が増加している数少ない自治体の一つに挙げられています。茨城県が公表する「茨城県の人口と世帯(推計)」の令和8年7月1日現在の資料では、県内で人口が増加した市町村として水戸市・結城市・常総市・つくば市などが名指しされており、常総市は県平均でみると人口減少の一途をたどる自治体とは異なる動きを見せています。

ただし、これは市内のどのエリアも一様に人口が増えているという意味ではありません。都市部・幹線道路沿いや区画整理エリアで新築住宅が増える一方、旧市街地や農村部では高齢化と世帯減少が進んでいる可能性があり、地区ごとの人口・世帯数集計(常総市が公表する「地区別世帯数・人口集計表」)を見ると、町丁ごとに世帯数の増減の方向性が異なることが確認できます。この「市全体としては横ばい〜微増、地区ごとには明暗が分かれる」という構図が、空き家が生まれる背景の一つと考えられます。

2015年の鬼怒川水害と空き家の関係をどう見るか

常総市といえば、2015年(平成27年)9月の関東・東北豪雨による鬼怒川堤防の決壊で、市の広い範囲が浸水した出来事がよく知られています。この災害は全国的にも大きく報道され、常総市の「まちの変化」を語るうえで避けて通れない出来事です。

ここで注意したいのは、「水害があったから空き家が増えた」と単純に因果関係を断定することはできないという点です。空き家の発生には、水害の記憶や再建の負担だけでなく、後述する人口動態・世帯構成の変化、相続後の管理負担、市街地の高齢化など複数の要因が重なって影響します。常総市自身も水害後、河川激甚災害対策特別緊急事業(河川激特事業)による堤防強化や、立地適正化計画・防災集団移転などのまちづくり施策を進めており、水害の記憶と空き家の発生を一対一で結び付けるよりも、「水害を機に住まいの選択を見直した世帯があった可能性がある」という程度の慎重な捉え方が実態に近いと考えられます。断定的な情報は避け、あくまで一次情報で確認できる範囲の事実を積み重ねることが大切です。

常総市が推進する空き家対策

常総市公式ホームページ「常総市が推進する空き家対策」ページによると、市は複数の空き家対策を並行して実施しています。主な内容は以下の通りです。

  • 空家等バンク制度:空き家を「売りたい・貸したい」所有者が登録し、情報をホームページ等で公開する制度。活用を後押しする補助金制度もあわせて用意されています。
  • お困り空き家連絡フォーム:常総市と株式会社クラッソーネの連携協定に基づき、近隣で管理不全な空き家がある場合に市民が匿名で通報できる仕組みです。
  • 解体費用シミュレーター:クラッソーネとの連携協定により導入された「常総市版AIによる解体費用シミュレーター」。簡単な質問に答えるだけで解体費用の相場が分かる仕組みで、国土交通省のモデル事業採択案件でもあります。
  • 空き家問題安心サービス:空き家活用株式会社との連携協定に基づく相談・見守りサービス。
  • 譲渡所得の税制優遇:相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除、低未利用地の譲渡所得特別控除など。

常総市の空家等対策計画(市公式資料)によれば、平成30年の住宅・土地統計調査における常総市の空家率は約12%とされ、全国的な傾向と同様に増加傾向にあると市自身が説明しています。また市の空家等台帳には、令和4年3月31日時点で427件の空き家が登録されていたことが公表されています。これらの数値はいずれも常総市の公式資料に基づくものであり、年度や調査方法が異なる複数の数値が世の中に出回っている点には注意が必要です(本記事では出典を明記した数値のみを使用しています)。

常総市 空き家対策 まちの変化 制度早見表 kaitai-ibaraki.com
常総市の空き家対策・支援制度早見表(出典:常総市公式ホームページ「常総市が推進する空き家対策」)

空き家が増える背景として一般的に指摘されること

全国的な傾向として、空き家が発生・増加する背景には主に次のような要因が指摘されています(常総市固有の統計で裏付けられたものではなく、一般論としての整理です)。

  • 相続後の管理負担:親が住んでいた家を相続しても、遠方に住む相続人がそのまま住み続けるケースは少なく、管理の手間や固定資産税の負担から空き家化しやすいと言われています。
  • 建て替え・住み替えの選択肢の多さ:新しい区画整理エリアや利便性の高いエリアへ住み替える世帯が増えると、旧市街地の住宅が空き家として残りやすくなります。
  • 高齢化の進行:一人暮らしの高齢者が施設入所や子との同居に移った後、自宅が空き家になるケースです。
  • 売却・賃貸のハードル:老朽化した家屋は買い手・借り手がつきにくく、解体費用の負担も重いため、そのまま放置されやすい傾向があります。

常総市の場合はこれらの一般的な要因に加えて、2015年の水害の記憶や、河川沿いエリアでの住まいの選択の見直しが一部で影響している可能性がありますが、これを裏付ける市独自の統計は本記事執筆時点で確認できませんでした。断定は避け、「複合的な要因が重なっている」という理解にとどめておくのが実態に近いと考えられます。

地区別の特徴(水海道地区・石下地区)

常総市は2006年の合併により、旧水海道市エリア(水海道地区)と旧石下町エリア(石下地区)から構成されています。常総市が公表する地区別世帯数・人口集計表を見ると、両地区で世帯数・人口の分布に違いがあることが分かります。

水海道地区は市役所本庁舎や関東鉄道常総線の水海道駅周辺に市街地が広がり、比較的古くからの住宅街と、区画整理により新しく開発されたエリアが混在しています。石下地区は国道294号沿いや石下駅周辺に商業・住宅エリアがあり、こちらも同様に新旧の住宅が混在する構成です。空き家の分布についても、旧市街地の古い住宅と、比較的新しい住宅地とでは傾向が異なると考えられますが、町丁単位の空き家率という統計は市から個別に公表されていないため、本記事では「地区によって世帯数の増減傾向に差がある」という事実確認にとどめます。

水海道地区の特徴

水海道地区は常総市役所本庁舎や関東鉄道常総線・水海道駅を中心に市街地が形成されているエリアです。駅周辺には商店街や公共施設が集積する一方、中心市街地から少し離れると昭和期に開発された住宅地が広がっており、こうしたエリアでは住民の高齢化と世帯減少が徐々に進んでいるとみられます。一方で圏央道の常総インターチェンジ周辺など、比較的新しい住宅開発が進むエリアもあり、地区内でも人口動態に差があります。

石下地区の特徴

石下地区は国道294号やJR水戸線・大宝駅、常総線・石下駅の周辺に商業・住宅エリアが広がるエリアです。旧石下町時代からの中心市街地に加え、鬼怒川に近いエリアもあり、2015年の水害では石下地区の一部でも浸水被害が発生しました。地区の人口・世帯数は常総市が公表する地区別集計表で確認できますが、町丁単位の詳細な空き家分布データは市から個別には公表されていません。

常総市の公示地価の推移(2026年)

不動産・土地情報サイトtochidai.infoが公開する常総市の地価データによると、2026年(令和8年)の公示地価平均は23,978円/m²(坪79,266円)で、前年比-0.11%となっています。長期的に見ると、常総市の公示地価は1991年(平成3年)の79,540円/m²をピークに、2000年代を通じて大きく下落を続け、2016年頃には26,000円/m²台まで下がりました。その後は下落幅が徐々に縮小し、2024年(令和6年)以降はほぼ横ばい〜わずかな下落で推移しています。

一方、基準地価(都道府県地価調査)で見ると、2025年(令和7年)の平均は25,146円/m²(坪83,127円)で前年比+0.42%となっており、公示地価よりもわずかに上昇傾向が見られます。いずれの数値も「目安」であり、実際の取引価格は立地・接道状況・水害リスクの認識などによって大きく異なる点にご留意ください(出典:tochidai.info)。

空き家を放置するとどうなるか

常総市が公式ページで案内している通り、空家等対策の推進に関する特別措置法では「所有者や管理者は周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理に努めること」が求められています。使う予定のない空き家は、固定資産税や維持管理の負担がかかり続ける一方、劣化が進むほど資産価値が下がり、売却や賃貸などの選択肢も狭まっていきます。倒壊・屋根材の飛散・不法侵入・害虫獣の発生などのリスクも、放置期間が長くなるほど高まります。

常総市が空家等バンクや解体費用シミュレーターといった複数の窓口を用意しているのも、所有者が早めに「今後どうするか」を決断できるようにするためです。将来的に解体を選ぶ場合、活用や賃貸を模索する場合のいずれであっても、まずは現状を正確に把握することが第一歩になります。

解体という選択肢との接点

空き家を「今後どうするか」を考えるとき、選択肢は大きく分けて「活用する(賃貸・売却・空き家バンク登録)」「維持管理を続ける」「解体して更地にする」の3つです。老朽化が進み、修繕・耐震補強のコストが売却見込み額を上回るようなケースでは、解体して更地として売却・活用する方が、結果的に総コストを抑えられることもあります。

常総市には解体費用に特化した公的補助金の制度としては、常総市空家等バンク活用支援補助金(バンク登録物件の改修支援)などがありますが、解体そのものを直接補助する制度の有無・条件は年度により変わる可能性があるため、詳しくは当サイトの別記事で一次情報をもとに整理しています。あわせてご覧ください。

解体Do!では、常総市を含む茨城県内の解体工事について、複数の解体業者から一括で見積もりを取得できるサービスを提供しています。空き家をどうするか迷っている段階でも、まずは費用感を把握するところから始めることができます。

まとめ

常総市は、県内では珍しく人口が増加傾向にある自治体の一つでありながら、地区によって世帯数の増減傾向が異なり、空き家対策計画では平成30年時点で空家率約12%、空家等台帳登録数427件(令和4年3月時点)という一次情報が公表されています。2015年の鬼怒川水害は常総市の歴史における大きな出来事ですが、空き家発生との因果関係を単純に断定することはできず、相続・高齢化・住み替えといった全国共通の要因も重なっていると考えられます。市は空家等バンク・解体費用シミュレーター・お困り空き家連絡フォームなど複数の窓口を用意しており、所有者はまず現状を把握し、活用・維持管理・解体のいずれが自分に合っているかを早めに検討することが大切です。

よくある質問

常総市の空き家率はどのくらいですか?

常総市の空家等対策計画(市公式資料)によると、平成30年の住宅・土地統計調査における常総市の空家率は約12%とされています。より新しい年度の市単独の空家率は本記事執筆時点で市の公式発表を確認できなかったため、最新の数値については常総市都市整備課へ直接お問い合わせいただくことをおすすめします。

常総市の人口は増えていますか、減っていますか?

常総市公式ホームページによると、令和8年7月1日現在の住民基本台帳人口は59,859人です。茨城県が公表する人口推計資料では、常総市は県内でも人口が増加している市町村の一つに挙げられていますが、地区によって世帯数の増減傾向には差があります。

2015年の鬼怒川水害は常総市の空き家に影響していますか?

水害が常総市のまちの記憶として大きな出来事であることは事実ですが、空き家の発生を水害だけで説明することはできません。相続・高齢化・住み替えなど全国共通の要因も重なっているため、断定的な因果関係を示す一次情報は本記事執筆時点で確認できませんでした。

常総市に空き家バンク制度はありますか?

あります。常総市公式ホームページで「常総市空家等バンク」として、空き家を売りたい・貸したい所有者向けの登録制度が案内されています。登録物件を改修する際の補助金制度も用意されています。

常総市に解体費用の補助金はありますか?

解体費用そのものを対象とした補助金の有無・条件は年度により変わる可能性があります。詳しくは当サイトの別記事「常総市の解体補助金はある?条件・上限・申請時期を一次情報で解説【2026年】」で一次情報をもとに整理していますので、あわせてご確認ください。

空き家を放置するとどんなリスクがありますか?

固定資産税や維持管理費の負担が続くほか、劣化が進むことで資産価値が下がり、売却や賃貸の選択肢が狭まります。倒壊・害虫獣の発生・不法侵入などのリスクも、放置期間が長くなるほど高まるとされています。