茨城県龍ケ崎市は、常磐線・関東鉄道竜ヶ崎線の沿線に広がるベッドタウンとして、高度成長期からニュータウン開発で人口を伸ばしてきたまちです。しかし2026年6月、この市で「初めて」の出来事が起きました。市が所有者に代わって空き家を強制的に解体する「行政代執行」です。長年ニュータウンとして発展してきたまちに、なぜ今そうした事態が起きたのか。龍ケ崎市の人口・世帯の一次データと、市が公開している空き家対策の記録から、まちの変化と今後の選択肢を整理します。

龍ケ崎市はどんなまちか──ニュータウン開発の歴史

龍ケ崎市は茨城県南部、県南地域に位置する市です。常磐線佐貫駅(現・龍ケ崎市駅)を最寄りとし、都心へのアクセスの良さから、1970年代以降に大規模な住宅開発が進みました。かつて日本住宅公団(現・都市再生機構)が計画した「竜ヶ崎ニュータウン」は、当初は隣接する牛久町(現・牛久市)にまたがる約2,500haで計画人口約30万人という壮大な構想でしたが、農業振興を重視する牛久町側の意向や地元の反対運動により規模が縮小され、最終的に龍ケ崎市域の丘陵地を中心とした開発地区約761ha・計画人口約7万人規模のニュータウンとして実現しました。

ニュータウンの住宅街から東側に向かうと農地が広がるなど、開発された市街地と、旧来からの農村集落が同居しているのが龍ケ崎市の地理的な特徴です。この「新しいまち」と「古いまち」が同じ市内に併存する構造こそが、今のまちの変化を理解するうえでの前提になります。

人口・世帯数の実測データ(2026年7月1日現在)

龍ケ崎市公式ホームページ「龍ケ崎市の人口・世帯数」(更新日:2026年7月10日)によると、住民基本台帳ベースの人口・世帯数は次のとおりです。

  • 住民基本台帳人口:73,963人(男性36,706人・女性37,257人)
  • 住民基本台帳世帯数:36,551世帯
  • 常住人口(推計人口):73,666人、世帯数34,374世帯

前月と比べると、人口は23人減、世帯数は55世帯増となっており、人口が減る一方で世帯数は増える「世帯の細分化」が進んでいることが数字に表れています。1世帯あたりの人数が小さくなっているということは、単身高齢世帯や、親世代が施設に移った後の「持ち家だけが残る」ケースが増えている可能性を示唆します。

人口はいつがピークだったのか

龍ケ崎市の人口は、竜ヶ崎ニュータウンの造成が本格化するまでは緩やかな増加にとどまっていましたが、ニュータウン入居が進んだ1980年代以降に急増し、2010年の国勢調査で80,334人とピークを迎えました。それ以降は減少局面に入っており、直近の住民基本台帳人口はピーク時から1割近く少ない水準です。ニュータウンが「新しいまち」として一斉に人が入った時期があったということは、そこに住んだ世帯が一斉に高齢化する時期も訪れるということでもあります。まちの成り立ちを知ることが、これから空き家がどこで増えやすいかを考えるヒントになります。

龍ケ崎市 人口の推移 2010年ピークから2026年までの折れ線・棒グラフ
龍ケ崎市の人口推移(出典:龍ケ崎市公式ホームページ・国勢調査)

2026年6月、龍ケ崎市で初めての行政代執行

龍ケ崎市公式ホームページ「特定空家等の行政代執行による解体が終了しました」(更新日:2026年7月3日)によると、龍ケ崎市は2026年6月19日から7月1日にかけて、市内砂町にあった老朽空き家について、所有者に代わって市が解体工事を実施する「行政代執行」を行いました。これは龍ケ崎市にとって初めての事例です。

対象となった空き家は、建物の大部分が倒壊し、建築資材等が散乱していたほか、一部が道路側へ傾斜し通行者への影響が懸念される状態でした。市の記録によれば、平成26年(2014年)の実態把握以降、法定相続人に対して助言・指導・勧告・命令という空家特措法上の段階的な措置を講じてきましたが、期限までに必要な措置がとられなかったため、2026年6月22日午前10時に現地で代執行を宣言し、解体に着手しています。解体費用は市が一旦負担したうえで、全額を所有者(相続人)へ請求する仕組みです。

民間の報道(茨城新聞クロスアイ、Yahoo!ニュース配信)では、解体費用は約143万円とされ、建物は1963年築の木造平屋(延床面積27.27平方メートル)で、登記上の所有者は1983年に死亡していたと伝えられています。約40年にわたり相続の問題が動かないまま放置された結果、行政が最終手段として代執行に踏み切った事例といえます。

「特定空家等」と「管理不全空家等」の違い

龍ケ崎市公式ホームページ「空家等対策」によると、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)は令和5年12月13日に改正法が施行され、空き家を段階的に分類する仕組みが整理されました。

  • 特定空家等:そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれ、著しく景観を損など、周辺の生活環境保全のために放置することが不適切な空き家。助言・指導・勧告・命令の対象となり、勧告を受けると住宅用地に対する固定資産税の減額特例(住宅用地特例)から除外される。
  • 管理不全空家等:2023年改正で新設された区分。そのまま放置すれば「特定空家等」に該当するおそれがある状態。指導・勧告の対象となり、勧告を受けると同じく住宅用地特例から除外される。

つまり「特定空家等」になるまで放置されなくても、その手前の「管理不全空家等」の段階で固定資産税の優遇が外れる可能性があるということです。空き家は放置していても税制上得をするわけではなく、むしろ管理不全のまま時間が経つほどリスクが増していく仕組みになっています。

空き家は誰が管理する責任を負うのか

市公式ページは「空家等は私有財産であり、管理は所有者等の責務である」ことを明記しています。空家特措法第5条に基づき、所有者は周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう管理する義務を負い、これを怠って屋根や外壁が飛散したり、倒壊などで他人に損害を与えた場合は、所有者が損害賠償などの管理責任を問われることがあります。龍ケ崎市が代執行に踏み切った事例は、この「所有者の責務」が果たされなかった結果として、行政が最終手段を取らざるを得なかったケースだったといえます。

龍ケ崎市の空家バンク制度

龍ケ崎市公式ホームページ「空家バンク制度」によると、市内に空き家・空き地を所有し「売りたい」「貸したい」という意向を持つ所有者と、「買いたい」「借りたい」という利用希望者の橋渡しを市が行う制度です。登録された物件は市の空家バンクサイトに掲載され、内見や交渉の申し込みができます。空家バンク制度年度別実績のページで過去の成約件数も確認できるようになっています。

空家バンク活用促進補助金・家財処分費補助金・改修工事費補助金

市公式ページ「空家利活用支援」によると、空家バンクに登録した物件の活用を後押しするため、次の3つの補助制度が用意されています。

  • 空家バンク活用促進補助金:空家バンクを通じて成約した際に交付される補助金
  • 家財処分費補助金:空家バンク登録に伴う家財の処分費用の一部を補助
  • 空家改修工事費補助金:登録物件の改修工事費用の一部を補助

いずれも交付の対象者・対象住宅・対象事業・補助金額・交付手続きが個別に定められており、事前の申請が必須です。

老朽空家等解体費等補助金は「特定空家等」寄りの制度

龍ケ崎市公式ページ「龍ケ崎市老朽空家等解体費等補助金について」によると、老朽化等により周辺の生活環境保全に著しく有害となる空き家の解体を促進するため、解体工事費等の一部を補助する制度があります。補助金額は補助対象経費の2分の1(上限50万円)です。

ただし対象となる空き家には注意点があります。市から適切な管理を求められた際にその措置を行った実績があること、かつ「特定空家等」に認定されて助言・指導は受けたが勧告までは受けていないものであることなど、複数の条件が定められています。また対象は個人所有に限られ、法人は対象外です。工事着手前の交付申請が必須という点も他市と共通で、申請前に工事に着手した場合は補助を受けられません。解体を検討する段階で早めに市(総合政策部まちの魅力創造課)に相談することが欠かせません。市の制度をより詳しく知りたい方は「龍ケ崎市の解体補助金|上限50万円の条件と申請の順番」もあわせてご覧ください。

空き家の譲渡所得3,000万円特別控除

市公式ページ「空き家譲渡所得の3,000万円特別控除」によると、相続した空き家(耐震性がない場合は耐震リフォームしたもの)、または相続空き家を解体・除却した後の土地を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円が控除される特例があります。この特例の適用には「被相続人居住用家屋等確認書」が必要で、市役所3階のまちの魅力創造課で発行されます。ただし、特例の適用可否そのものは所轄の税務署が判断するものであり、確認書の交付は適用を確約するものではない旨が明記されています。相続した実家をどうするか考える際、解体して更地で売るか、耐震改修して家屋のまま売るかによって、この特例の使い方が変わってくる点は覚えておきたいところです。

龍ケ崎市 空き家対策制度 早見表
龍ケ崎市の空き家対策・補助制度早見表(出典:龍ケ崎市公式ホームページ)

民間サービスとの連携・空家等管理活用支援法人

市はNPO法人や不動産関連団体と協定を結び、空き家の発生予防や管理・活用の相談体制を強化しています。「空家等管理活用支援法人」の指定制度は、空家特措法の改正で新設された仕組みで、民間のノウハウを行政の空き家対策に取り込む狙いがあります。市内の空き家所有者が「誰に相談すればいいかわからない」状態を減らすための受け皿づくりが進んでいるといえます。

地価の動き(2026年公示地価)

民間の地価情報サイト(tochidai.info)が公表している2026年(令和8年)地価公示によれば、龍ケ崎市の住宅地平均は29,078円/平方メートル(坪単価換算で約9万6,127円/坪)、前年比+2.77%とされています。商業地は54,780円/平方メートル(同約18万1,090円/坪)で+0.83%、工業地は23,100円/平方メートル(同約7万6,363円/坪)で+3.13%という水準です。市全体の平均では34,042円/平方メートル、前年比+2.23%との報告もあります。ソースにより算出範囲・地点数が異なるため、あくまで「坪10万円前後・上昇基調」という目安として捉え、実際の売買・査定にあたっては個別の実勢価格を確認することをおすすめします。

なお、空き家率については龍ケ崎市単体の一次データを確認できなかったため、本記事では数値化していません。市町村単位の空き家率は総務省統計局の住宅・土地統計調査で5年に一度公表されますが、市区町村別の最新値を一次資料で裏付けられない場合、他市の数値を誤って転用するリスクがあるため、本サイトでは確認できない数値は使用しない方針としています。

ニュータウンと旧市街、どちらで空き家が増えやすいか

竜ヶ崎ニュータウンのように計画的に開発された住宅地は、入居時期が集中しているため、数十年後に住民の高齢化・世帯縮小が一斉に進みやすいという特性があります。一方、佐貫(龍ケ崎市駅周辺)のような古くからの市街地や、農村集落が残るエリアでは、相続をきっかけに空き家化した後、遠方に住む相続人が管理できずに放置されるケースが目立ちます。今回、行政代執行の対象となった砂町の空き家も、登記上の所有者が1983年に死亡してから約40年、相続人が複数いる中で対応が進まなかった事例でした。「誰が相続するか」が決まらないまま放置される時間が長いほど、行政代執行のような最終手段に至るリスクは高まります。

相続した家をどうするか、判断の順番

実家や親族の家を相続した際に空き家のまま放置してしまう背景には、「まだ判断しなくていい」という先送りの心理があります。しかし、龍ケ崎市の事例が示すように、放置期間が長くなるほど選択肢は狭まっていきます。一般的には次のような順番で検討することが推奨されます。

  1. 空家バンクに登録して売却・賃貸の可能性を探る
  2. 耐震性や老朽度を確認し、リフォームして活用できるか検討する
  3. 活用が難しい場合は解体し、更地として売却・管理する
  4. 解体費用の負担が大きい場合は、老朽空家等解体費等補助金の対象になるか市に相談する
  5. 譲渡による3,000万円特別控除の対象になるか、税務署・市に確認する

放置したまま固定資産税の優遇が外れてしまってから動くよりも、早い段階で選択肢を比較したほうが、結果的に手元に残る金額も、かかる手間も少なくて済むケースが多いといえます。解体費用の具体的な相場については「【2026年】龍ケ崎市の解体費用相場|坪単価と業者選び5つの要点」で確認します。

よくある質問(FAQ)

Q. 龍ケ崎市で本当に行政代執行が行われたのですか?

A. はい。龍ケ崎市公式ホームページ「特定空家等の行政代執行による解体が終了しました」(更新日:2026年7月3日)によると、2026年6月19日から7月1日にかけて市内砂町の老朽空き家で実施されました。市にとって初めての行政代執行です。

Q. 行政代執行にかかった費用は誰が払うのですか?

A. 市が一旦費用を負担し、その後全額を所有者(相続人)へ請求する仕組みです。民間報道によれば今回の解体費用は約143万円とされています。

Q. 龍ケ崎市の人口は今どれくらいですか?

A. 龍ケ崎市公式ホームページによると、2026年7月1日現在の住民基本台帳人口は73,963人、世帯数は36,551世帯です(更新日:2026年7月10日)。2010年の国勢調査で記録したピーク80,334人からは減少しています。

Q. 龍ケ崎市に空き家の解体補助金はありますか?

A. 「龍ケ崎市老朽空家等解体費等補助金」があります。補助対象経費の2分の1(上限50万円)で、対象は個人所有かつ「特定空家等」に認定され助言・指導は受けたが勧告は受けていないものなど条件があります。工事着手前の交付申請が必須です。

Q. 空き家の空き家率は龍ケ崎市でどれくらいですか?

A. 龍ケ崎市単体の空き家について確実な一次情報は確認できていないため、本記事では数値を記載していません。総務省の住宅・土地統計調査は5年に一度の公表であり、市区町村別の最新値を裏付けなく転用することは避けています。

Q. 相続した実家が空き家のままです。まず何をすればいいですか?

A. まずは空家バンクへの登録を検討し、活用が難しければ耐震性や老朽度を確認したうえで解体を検討する、という順番がおすすめです。解体費用の負担が大きい場合は老朽空家等解体費等補助金の対象になるか、譲渡所得3,000万円特別控除が使えるかを市・税務署に確認するとよいでしょう。

まとめ

龍ケ崎市は、常磐線沿線のニュータウン開発によって人口を伸ばしてきたまちですが、2010年の80,334人をピークに人口減少局面に入り、2026年7月時点の住民基本台帳人口は73,963人まで減少しています。そうした中で2026年6月、市として初めての行政代執行という節目が訪れました。約40年間相続が動かなかった空き家が、最終的に市の費用負担での解体に至った今回の事例は、「所有者不明・相続未了のまま放置される空き家」がどのまちにも起こり得ることを示しています。空家バンク・各種補助金・譲渡所得の特別控除など、龍ケ崎市には空き家を早めに動かすための制度がすでに用意されています。判断を先送りにせず、今の家をどうするか一度整理してみることが、将来の選択肢を広げる一番の近道です。