栗の里、笠間焼、笠間稲荷神社の門前町――笠間市と聞いてこうしたイメージを思い浮かべる方は多いはずです。その一方で、市内を車で走ると、雨戸を閉め切ったままの家や、庭木が伸び放題になった空き家を見かける機会も増えてきました。友部・笠間・岩間という性格の異なる3つの地区が2006年に合併して生まれたこの市で、いま住まいの現場に何が起きているのか。本記事では市の公式資料をもとに、空き家の実態と対策制度、そして「古い家をどう次につなぐか」という選択肢を整理します。

笠間市はどんな成り立ちのまちか

笠間市は2006年3月19日、旧笠間市・旧友部町・旧岩間町の3市町が合併して誕生しました。合併から約20年が経ち、それぞれの地区は今も異なる顔を持っています。友部地区はJR常磐線・水戸線が交わる友部駅を中心に住宅地が広がる交通の要衝、笠間地区は笠間稲荷神社と笠間焼の窯元が並ぶ観光と伝統工芸のまち、岩間地区は愛宕山のふもとに田園風景が残るエリアです。

この「3つの異なるまちが1つの市になった」という成り立ちが、後述する空き家対策や地価の地域差にも影響しています。

人口と世帯数(一次情報)

笠間市公式ホームページによると、住民基本台帳人口は69,716人・世帯数30,619世帯(令和8年7月1日現在、目安)です。令和7年国勢調査速報値では71,510人・世帯数30,356世帯となっており、世帯数が人口の減少ほど減っていない、つまり1世帯あたりの人数が小さくなっている傾向がうかがえます。

核家族化や高齢者の単身・夫婦のみ世帯の増加は、将来的に「住む人がいなくなった実家」が増える土台になります。空き家問題を考えるうえで、まず押さえておきたい基礎データです。

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笠間市であなたが見かける「空き家」はどんな状態か

空き家と一口に言っても、状態はさまざまです。笠間市公式ホームページの「空家等の適正管理について」ページでは、空家法上の分類を次のように整理しています。

  • 空家等:居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物およびその敷地
  • 管理不全状態にある空家等:老朽化による倒壊のおそれ、建築資材の散乱、不特定者の侵入による火災・犯罪の誘発など、周辺に迷惑を及ぼす恐れがある状態
  • 特定空家等:そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれなどがある状態(空家法に基づく法的な認定区分)

「特定空家等」に認定されると、所有者への「助言・指導」に始まり、改善されなければ「勧告」「命令」、それでも改善されない場合は「行政代執行」に進む可能性があります。勧告を受けた特定空家等の敷地は、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される点も見逃せません。

※笠間市単体の「空き家率」(総住宅数に占める空き家の割合)は、市が公表する一次資料の中では確認できませんでした。正確でない数字を示すよりも、確認できた事実だけをお伝えします。

市が今まさに空き家の実態調査を進めている

笠間市公式ホームページには、2026年8月時点で「令和8年度既知空家調査業務委託に係る公募型プロポーザルの実施について」という案内が掲載されています。これは市内の既知の空き家について改めて実態調査を行うためのもので、市としても空き家の現状把握を継続的なテーマとして扱っていることの表れといえます。

笠間市の空き家対策・支援制度(一次情報で確認できたもの)

笠間市は「第2次笠間市空家等対策計画」を策定し、空き家の発生予防・活用・適正管理・解体という複数の切り口から施策を展開しています。市公式ホームページで確認できた制度は次のとおりです。

1. 空家・空地バンク制度

売却・賃貸を希望する所有者と、移住・定住を希望する利用者をマッチングする制度です。対象は「個人が所有し、居住を目的として建築され、現に居住していない、または近く居住しなくなる予定の建物」で、賃貸・分譲目的で建てられた建物や倒壊の危険がある空き家は対象外です。登録された物件は市公式サイトの「空家・空地バンク 物件情報」ページで随時公開されています。

2. 空家活用支援補助金(登録物件が対象)

空家・空地バンクに登録された物件について、以下の3つの補助メニューがあります。

  • 修繕支援:修繕費の2分の1以内(上限50万円)
  • 取得・賃借支援:取得の場合は取得対価の3%以内(上限30万円、居住誘導区域・準居住誘導区域は上限50万円に拡充)、賃借の場合は家賃2か月分相当(上限10万円、居住誘導区域等は家賃4か月分相当・上限20万円に拡充)
  • 家財道具等処分支援:処分費用の2分の1以内(上限10万円、居住誘導区域等は上限20万円に拡充)

いずれも「空家・空地バンクへの登録」が前提条件になっている点に注意が必要です。

3. 空家解体撤去補助金(管理不全な空き家が対象)

バンク登録物件向けの補助金とは別に、管理不全状態にあり行政から助言・指導等を受けた空き家を対象とした解体補助金もあります。補助額は建物解体費用の2分の1以内・上限50万円(居住誘導区域・準居住誘導区域内の居住用住宅は上限80万円)です。ただし対象となるのは「助言や指導等を受けている」など複数の要件を満たす建物に限られ、誰でも自由に使える制度ではありません。制度の詳しい要件や申請の流れは、笠間市の空き家解体補助金|上限50万円の条件と流れ【2026】で詳しく解説しています。

4. 見守り・適正管理支援

市はシルバー人材センターと協定を結び、所有者からの依頼で空き家の見回り点検を1回2,000円(事務費別)で実施しています。遠方に住んでいて実家の様子を見に行けない所有者にとって、放置による特定空家等への悪化を防ぐ現実的な選択肢です。

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友部・笠間・岩間、地区で変わる住宅事情

笠間市は3つの旧市町村がベースになっているため、地区ごとに住宅市場の様相が異なります。民間地価集計サイト(tochidai.info)の2026年公示地価データによると、駅周辺の地価には次のような開きが見られます(あくまで目安の数字です)。

  • 友部駅周辺:31,450円/m2前後
  • 笠間駅周辺:26,620円/m2前後
  • 岩間駅周辺:18,350円/m2前後

市全体の公示地価平均は24,370円/m2程度とされていますが、地区による差が大きいため、この平均値だけを見て「うちの実家の土地の価値」を判断するのは禁物です。特に岩間・笠間の郊外部では、昭和期に建てられた戸建てが多く残り、所有者の高齢化とともに空き家予備軍が増えている実態があります。

笠間焼の窯元と空き家

笠間地区は江戸時代の安永年間から続く笠間焼の産地で、市内には多数の窯元・ギャラリーが点在します。窯元の後継者不在によって工房兼住宅が空き家化するケースも、地域おこし協力隊などの活用事例として紹介されることがあり、伝統工芸のまちならではの空き家活用の可能性を示しています。

「古い家」を放置するとどうなるか

空き家を「そのうち何とかしよう」と先延ばしにすると、次のようなリスクが積み上がっていきます。

  • 建物の劣化が進み、解体費用そのものが年々高くなる(木材の腐食・シロアリ被害の拡大など)
  • 特定空家等に認定されると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が増える可能性がある
  • 屋根材の飛散や倒壊など、近隣とのトラブルに発展するリスクが高まる
  • 相続人が増えていくほど、解体や売却の意思決定に必要な合意形成が難しくなる

特に「相続したものの遠方に住んでいて手をつけられない」というケースは珍しくありません。空家譲渡所得の3,000万円特別控除(昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象)など税制上の優遇措置も用意されているため、放置する前に一度、制度の対象になるかどうかを確認しておく価値があります。

解体という選択肢を考えるタイミング

空き家・空地バンクへの登録や修繕による活用が難しい老朽家屋の場合、解体して更地に戻すことも現実的な選択肢のひとつです。更地にすることで、次のような展開が見えてきます。

  • 売却しやすくなる(建物の劣化状態を気にする買主が減る)
  • 賃貸用地として活用できる
  • 管理の手間(庭木の剪定、雨漏りの確認など)から解放される

一方で、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる場合がある点には注意が必要です。解体前に、売却・活用の見通しまで含めて検討することをおすすめします。笠間市での解体費用の目安や、坪単価を左右するポイントについては、2026年|笠間市の解体費用を安く!坪単価と総額を抑える5つの鍵もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 笠間市の空き家率はどのくらいですか?

A. 市単体の正確な空き家率は、本記事執筆時点で市の公式資料からは確認できませんでした。総務省の住宅・土地統計調査など、より広域のデータでは茨城県全体で14%台という数値が公表されていますが、これは県全体の平均であり笠間市固有の数値ではない点にご注意ください。

Q. 笠間市で空き家解体の補助金はいくらですか?

A. 管理不全状態と認定され行政指導等を受けた空き家が対象の「空家解体撤去補助金」で、建物解体費用の2分の1以内・上限50万円です(居住誘導区域・準居住誘導区域内の居住用住宅は上限80万円)。詳細な要件は別記事で解説しています。

Q. 空き家バンクに登録すればすぐに売れますか?

A. バンクはあくまで所有者と利用希望者をマッチングする仕組みで、売買・賃貸の交渉や契約に市は関与しません。早期の成約を目指す場合は、地域の不動産事情に詳しい業者へのご相談もあわせて検討することをおすすめします。

Q. 実家が空き家のまま何年も放置されています。何から始めればいいですか?

A. まずは建物の現状(傷み具合)と、相続人全員の意向を確認することから始めるのが一般的です。そのうえで「活用(バンク登録・賃貸)」「売却」「解体」のどれが現実的かを整理していくとよいでしょう。判断に迷う場合は、解体費用の見積りだけでも先に取っておくと選択肢が具体的になります。

Q. 空家・空地バンクの補助金と解体撤去補助金は両方使えますか?

A. 空家活用支援補助金(修繕・取得・処分費)はバンク登録物件が対象、空家解体撤去補助金は管理不全状態の空き家が対象と、そもそもの制度趣旨が異なります。同一の建物で両方を使えるケースは基本的に想定されていないため、企業誘致・移住推進課へ個別に確認することをおすすめします。

Q. 空き家を放置すると固定資産税はどうなりますか?

A. 通常、住宅が建っている土地は固定資産税の住宅用地特例により軽減されています。しかし「特定空家等」として勧告を受けると、この特例の対象から除外され、土地の固定資産税等が上がることがあります。放置は税制上もリスクがあることを覚えておきましょう。

まとめ

笠間市は友部・笠間・岩間という異なる個性を持つ3地区からなる市で、地価にも駅ごとに開きがあります。空き家対策としては空家・空地バンク制度、活用支援補助金、解体撤去補助金など複数の制度が用意されていますが、いずれも「バンクへの登録」や「行政指導を受けていること」といった前提条件があり、誰でも無条件に使えるわけではありません。まずはご自身の空き家がどの制度の対象になりうるか、市の窓口や専門業者に相談しながら整理することが、放置による資産価値の目減りやトラブルを防ぐ第一歩になります。

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