茨城県那珂郡東海村は、県内44市町村の中でも珍しく人口が増え続けているまちです。国勢調査の推移を見ると、昭和60年に31,065人だった人口は令和2年に37,891人まで増加し、令和8年4月1日時点でも37,461人を維持しています。日本原子力研究開発機構(JAEA)をはじめとする原子力関連の研究機関・企業が集積し、若い世代の転入が続いていることが背景にあります。しかし、人口が増えているからといって、村内に空き家が生まれないわけではありません。原研発足前からの旧集落と、研究施設の拡大とともに造成された新しい住宅地とでは、家の年齢も、住む人の年齢層も大きく異なります。この記事では、東海村公式サイトや茨城県統計課のデータをもとに、東海村の空き家の現状と、まちがどのように変化してきたのかを整理します。
東海村の基本データ|人口37,461人・世帯数16,350世帯【2026年】
茨城県統計課「茨城県常住人口調査」によると、東海村の常住人口は37,461人、世帯数は16,350世帯です(令和8年4月1日現在、令和2年国勢調査結果を基に推計)。面積は38.01平方キロメートル(令和8年1月1日現在)で、人口密度は1平方キロメートルあたり985.6人と、茨城県内でも高い水準にあります。
国勢調査人口の推移|40年間で人口が増え続けた珍しい自治体
総務省統計局「国勢調査」による東海村の人口推移は次のとおりです。
| 調査年 | 人口 |
|---|---|
| 昭和60年 | 31,065人 |
| 平成2年 | 31,557人 |
| 平成7年 | 32,727人 |
| 平成12年 | 34,333人 |
| 平成17年 | 35,450人 |
| 平成22年 | 37,438人 |
| 平成27年 | 37,713人 |
| 令和2年 | 37,891人 |

茨城県内の多くの市町村が人口減少に転じるなか、東海村は昭和60年から令和2年までの35年間で人口が約22%増加しました。つくば市のような大規模な研究学園都市とは異なり、村という小さな行政単位でありながら安定した人口増を保ってきた点が特徴です。
年齢別人口割合|65歳以上は25.8%と県内では若い部類
令和7年10月1日現在の年齢別人口割合は、15歳未満13.0%、15〜64歳61.2%、65歳以上25.8%です(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)。65歳以上の割合は茨城県内の他市町村と比べて低めで、研究機関への通勤・転勤による若い世代の流入が年齢構成を下支えしていることがうかがえます。ただし村内を一様に見るのではなく、地区ごとの違いに目を向ける必要があります。
出生・死亡数と自然動態(令和6年)
茨城県医療政策課「茨城県人口動態統計」によると、令和6年の東海村の出生数は225人、死亡数は400人です。死亡数が出生数を上回る自然減の状態は東海村も例外ではありませんが、転入超過(社会増)がこれを補い、村全体としては人口を維持している構図です。
東海村の成り立ち|村松村と石神村の合併から「原子力の村」へ
東海村は昭和30年(1955年)、村松村と石神村が合併して誕生しました。村名は、両村が組合立で設置していた東海中学校の名称に由来し、さらにその校名は水戸藩士・藤田東湖が詠んだ「正気の歌」の一節「洋々たる大海原、卓立す東海の浜」から取られたと伝わります。合併と同じ昭和30年、日本原子力研究所(原研、現在のJAEA)が発足し、東海村は日本の原子力研究の拠点として歩み始めました。昭和32年には日本初の原子炉が稼働し、以後、村内には研究機関や関連企業が次々と立地していきます。
この経緯から、東海村のまちは大きく二つの顔を持っています。ひとつは村松・石神といった合併以前からの旧集落で、社寺や旧市街の街並みが残るエリアです。もうひとつは、原研の立地とともに整備が進んだ住宅地・官舎地区で、比較的新しい戸建てや集合住宅が集まっています。「人口が増えているまち」という統計上の姿と、「空き家が生まれている旧集落」という現場の実感が同時に存在するのは、こうした歴史的な成り立ちによるものです。
なぜ人口増加地域でも空き家は生まれるのか
「人口が増えているのに空き家が出るのはおかしいのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし、村全体の人口統計と個々の住宅の状況は別の問題です。東海村で空き家が生まれる主な背景には、次のようなものがあります。
- 旧集落(村松・石神地区など)で暮らしていた高齢世帯の施設入居や死去により、実家が空き家化する
- 相続人が水戸市・ひたちなか市・県外などに生活拠点を持ち、村内の実家を引き継がずに空き家のまま放置してしまう
- 研究機関の官舎・社宅として使われていた住宅が老朽化し、入居者の異動とともに空室化する
- 新しい住宅地への転入が続く一方、旧集落の建て替え・空き家活用が進みにくい
つまり東海村の課題は「人口減少による空き家」ではなく、「まちの新陳代謝の偏り」による空き家です。人口が増えている村だからこそ、旧集落の空き家問題が数字の上では見えにくく、対策が後回しにされやすいという側面もあります。
東海村のエリア別に見る特徴
村松地区|歴史ある門前町、旧集落の空き家が課題
村松地区は村松山虚空蔵尊の門前町として古くから発展してきたエリアです。歴史ある社寺や旧家が多く残る一方、住民の高齢化が進み、後継者が村外に生活拠点を持つケースでは実家が空き家になりやすい傾向があります。海に近い立地から、別荘的に使われていた住宅が管理者不在のまま放置されるケースも見られます。
石神地区|住宅地化が進むエリア
石神地区は村役場に近く、住宅地としての開発が進んできたエリアです。比較的新しい戸建てが多い一方、古くからの農家住宅も点在しており、地区内でも住宅の年齢に幅があります。
舟石川・原研周辺エリア|研究機関関連の住宅地
JAEA(日本原子力研究開発機構)をはじめとする研究機関の周辺には、社宅・官舎として整備された住宅地が広がります。転勤・異動によって入居者が入れ替わりやすいエリアのため、老朽化した社宅の空室化や、民間に払い下げられた住宅の管理不全が起こりやすい構造があります。
土地利用と産業構造から見る東海村
茨城県市町村課「茨城県市町村概況」(令和6年1月1日)によると、東海村の土地利用は農地25.6%、宅地28.8%、山林7.0%、その他38.5%です。宅地の割合が農地とほぼ並ぶ水準にあり、住宅地としての土地利用が進んでいることがわかります。産業別就業人口割合(令和2年国勢調査)は第1次2.63%、第2次24.52%、第3次72.85%で、研究機関・関連企業への就業を含む第3次産業が7割を超えています。この産業構造が、村の人口を支える転入者の多さにつながっています。
また、水道普及率は99.8%(令和6年3月31日現在)、汚水処理人口普及率は95.7%(令和7年3月31日現在)と、いずれも県内で高い水準にあります(茨城県水政課・下水道課調べ)。インフラ整備が進んでいる分、老朽化した空き家であっても、解体後の土地活用や賃貸・売却といった選択肢を検討しやすい環境といえます。
東海村で使える空き家関連の補助制度
東海村では、空き家問題の解決に向けて2種類の補助制度を用意しています(東海村公式サイト「空き家に関する補助制度をご活用ください」より、2026年4月1日更新情報)。
東海村空家等対策支援補助金|調査・登記費用の一部を補助
空き家・空き地の調査、測量、設計、表題登記、相続登記に要した費用の2分の1(上限10万円)を補助する制度です。空家等の売却または賃貸に取り組んでいることが要件のひとつで、事前にくらしの安全課への相談と、専門家(専門家団体の会員)の紹介を受けたうえでの利用が前提になります。解体費用そのものではなく、解体・売却の「前段階」でかかる調査・登記費用を対象にしている点が特徴です。
東海村空家等解体・リフォーム工事費補助金|空家・空地バンク登録者向け
東海村空家・空地バンクに物件登録したうえで解体工事またはリフォーム工事を行う場合、工事費用の3分の2(上限80万円)が補助されます。村内に本店を置く業者が施工する場合は上限額が20万円加算され、最大100万円まで補助を受けられます。さらに、村外から東海村空家・空地バンクを通じて空き家を購入し転居する方の場合は、上限額の加算により最大120万円まで補助対象になります。いずれも「空家・空地バンクへの登録」が前提条件になっており、単純に自宅を解体するだけでは対象外になる点に注意が必要です。
補助金の詳しい要件や申請様式は、東海村公式サイトの案内ページで確認できます。予算の範囲内での受付となるため、利用を検討する際は早めにくらしの安全課 生活環境・空き家対策担当(電話029-282-1711)へ相談することをおすすめします。
解体費用そのものの相場や、補助金の詳細な適用条件については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
東海村の実家・空き家、これからの選択肢
東海村は研究機関の存在により今後も一定の住宅需要が見込まれる地域です。旧集落の空き家であっても、立地や状態によっては賃貸・売却が現実的な選択肢になることがあります。一方で、老朽化が進み倒壊の危険がある、あるいは再生利用が難しい建物については、早めに解体して更地にし、土地として活用・売却する方が結果的に負担を抑えられるケースも少なくありません。
判断のポイントは「放置したまま先送りにしない」ことです。空き家は放置期間が長くなるほど、屋根や外壁の傷みが進み、解体費用も高くなる傾向があります。また、管理不全の状態が続くと、村から特定空家等に指定される可能性もゼロではありません。まずは建物の状態を専門家に見てもらい、解体・リフォーム・売却のどれが適しているかを比較検討することが、結果的に費用を抑える近道になります。
まとめ
東海村は茨城県内で数少ない人口増加自治体でありながら、村松・石神といった旧集落を中心に空き家問題を抱えているという、一見矛盾した状況にあります。その背景には、原研発足以来70年にわたる「新しい住宅地」と「古くからの集落」が併存するまちの成り立ちがあります。実家の空き家をどうするか迷ったときは、東海村独自の補助制度の対象になるかどうかも含め、まずは現状を正確に把握することから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 東海村は本当に人口が増えているのですか?
はい。茨城県統計課「茨城県常住人口調査」によると、令和8年4月1日現在の常住人口は37,461人です。国勢調査ベースでも昭和60年の31,065人から令和2年の37,891人まで、35年間で約22%増加しています。日本原子力研究開発機構(JAEA)など研究機関の集積による転入超過が主な要因です。
Q2. 人口が増えているのに、なぜ空き家が問題になるのですか?
村全体の人口統計と、個々の住宅の状況は別の問題だからです。村松・石神など合併以前からの旧集落では高齢世帯の施設入居や死去による空き家化が進む一方、研究施設周辺では新しい住宅地への転入が続いています。この「新旧の偏り」が、統計上は見えにくい空き家問題を生んでいます。
Q3. 東海村の解体補助金はどんな内容ですか?
東海村空家等解体・リフォーム工事費補助金として、東海村空家・空地バンクに物件登録したうえでの解体・リフォーム工事費用の3分の2(上限80万円、村内業者施工でさらに20万円加算)が補助されます。別途、調査・登記費用を対象にした東海村空家等対策支援補助金(上限10万円)もあります。詳細は東海村くらしの安全課生活環境・空き家対策担当(電話029-282-1711)にご確認ください。
Q4. 東海村内でも空き家が特に多いのはどのエリアですか?
村松地区や石神地区など、昭和30年の合併以前からの旧集落で、高齢化が進んだ世帯の実家が空き家化しやすい傾向があります。一方、原研(JAEA)周辺の社宅・官舎エリアでも、老朽化した建物の空室化が起きています。村単体での大字別の空き家数を示す一次情報は公開されていないため、本記事では地区の特徴の傾向として紹介しています。
Q5. 実家を解体するか、賃貸・売却するか、どう判断すればよいですか?
建物の傷み具合や立地条件によって最適な選択は異なります。研究機関への通勤圏として一定の住宅需要が見込めるエリアであれば賃貸・売却が現実的な場合もありますが、老朽化が進み再生が難しい建物は、早めに解体して更地にした方が結果的に負担を抑えられることがあります。まずは専門家に建物の状態を見てもらい、複数の選択肢を比較することをおすすめします。
Q6. 東海村空家・空地バンクとは何ですか?
東海村が運営する、村内の空き家・空き地の情報を売却・賃貸希望者と購入・入居希望者の間でマッチングする制度です。バンクへの物件登録が、解体・リフォーム工事費補助金を利用するための前提条件のひとつになっています。登録方法は東海村住まいづくりのポータルサイトで案内されています。
東海村の空き家・解体のご相談は「解体Do!」へ
補助金の対象になるかどうかも含め、まずはお気軽にご相談ください。現地調査・お見積りは無料です。
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