茨城県桜川市の市役所には、本庁舎が一つではなく「大和庁舎」「岩瀬庁舎」「真壁庁舎」という三つの拠点がある。合併から21年近くが経ったいまも、この体制は変わっていない。一つの市でありながら三つの旧町村がそれぞれの輪郭を保ち続けているような事情が、桜川市にはある。この記事では、桜川市の人口動態と空き家対策の一次情報をもとに、三地区それぞれの空き家事情とまちの変化を整理する。

桜川市に庁舎が3つある理由

2005年、岩瀬町・真壁町・大和村が対等合併

桜川市は2005年10月1日、西茨城郡岩瀬町、真壁郡真壁町、大和村の3町村が対等合併して誕生した。市名は、市域を流れ最終的に霞ヶ浦へ注ぐ桜川に由来する。多くの合併自治体では旧役場のどこか一つが本庁として機能を集約するケースが多いが、桜川市は大和庁舎(桜川市羽田1023番地)・岩瀬庁舎(桜川市岩瀬64番地2)・真壁庁舎(桜川市真壁町飯塚911番地)の3つに機能を分けたまま今日に至っている。

いまも残る三地区それぞれの輪郭

行政窓口だけでなく、地元自治会に加入する単位や商工会の活動も旧町村の枠組みを引き継いでいる部分が多い。空き家対策を考えるうえでも、桜川市を一つの市として一律に捉えるより、岩瀬・真壁・大和という3つの地区ごとの事情を分けて見たほうが実態に近づきやすい。

人口と世帯数の変化を数字で追う

令和8年8月時点の人口・世帯数

桜川市公式ホームページの「常住人口」によると、令和8年8月1日現在の人口は34,890人(男17,337人・女17,553人)、世帯数は13,589世帯。令和8年4月時点の35,124人・13,606世帯から、わずか4か月で234人減少している。

平成27年度からの11年余りで7,800人以上の減少

同じ資料をさかのぼると、平成27年度4月時点の人口は42,749人・世帯数13,826世帯だった。令和8年8月までの約11年4か月で人口は7,859人減り、率にして約18.4%の減少になる。一方で世帯数は13,826世帯から13,589世帯へ237世帯(約1.7%)の減少にとどまっており、人口減少のペースに世帯数の減少が追いついていない。1世帯あたりの人数が減り続けているということで、単身高齢世帯や核家族化が進んでいることの裏返しと考えられる。

桜川市 人口 世帯数 推移 早見表 解体Do!
桜川市の人口・世帯数の推移(桜川市公式ホームページをもとに作成)

真壁地区、石の街と伝統的建造物群

御影石(真壁石)と「真壁のひなまつり」

真壁地区は加波山山系から切り出される花崗岩「真壁石(御影石)」の産地として知られ、日本有数の石材産地の一つに数えられる。石材業に携わってきた石工たちの技術は、墓石や燈籠だけでなく、街なかの蔵や店構えにも受け継がれてきた。毎年開催される「真壁のひなまつり」は2003年に住民有志21人が始めた取り組みが広がったもので、いまでは100軒を超える民家や商店でひな人形が飾られ、来場者は7万人を超える規模になっている。会場には江戸期から平成までのひな人形に加え、地元特産の御影石で作られたひな人形も並ぶ。

真壁伝統的建造物群保存地区と空家等活用促進区域

真壁地区の中心部、下宿町・高上町・大和町の全域と上宿町・仲町の一部、約17.6haは「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」に指定されている。桜川市は2025年1月、この保存地区と重なる区域を空家等対策の推進に関する特別措置法第7条に基づく「桜川市空家等活用促進区域」に定めた。歴史的な街並みを保存しながら、区域内の空き家を住宅・店舗として活用していく方針が示されている。区域内で空き家の外観を改修する場合は、桜川市伝統的建造物群保存地区保存条例に基づき市長・教育委員会の許可が必要になる。

桜川市の空き家対策の枠組み

空家等対策計画と空家バンク制度

国が定める空家等対策の推進に関する特別措置法を受け、桜川市は「桜川市空家等対策計画(第2期)」を策定している。前述の空家等活用促進区域の設定は、この計画にもとづく具体的な取り組みの一つだ。あわせて桜川市は「桜川市空家バンク実施要綱」(平成29年告示第90号)にもとづき空家バンクを運営しており、所有者が登録した物件を市公式ホームページで公開し、購入・賃貸を希望する人とマッチングしている。空家等活用促進区域内では、市が指定する「空家管理活用支援法人」が媒介した物件も支援の対象に含まれるなど、区域内外で制度の使い方に違いがある点は注意したい。

空き家に使える3つの支援制度

不良住宅(空家)除却費補助制度

桜川市には、老朽化した空き家の解体費用を補助する「不良住宅(空家)除却費補助制度」がある。対象は空き家となって1年以上経過した住宅(店舗・倉庫・納屋・門・塀は対象外)で、補助率は2分の1・上限50万円。令和9年度の補助予定件数は10棟で、申し込み順ではなく「不良住宅判定票」による点数の高い(傷みが激しい)順に採択される。令和8年度の判定申込期間は令和8年5月7日から9月11日までとされている。解体には市内業者との契約が条件になっている点も見落とせない。

空家改修費補助制度と購入者向けの支援

解体せずに活かす場合には「空家改修費補助制度」があり、空家バンク登録物件などの内装・設備改修費用の3分の2が補助される(上限額は交付要項による)。このほか空き家を購入して定住する人向けの「さくらがわ人生応援住宅取得助成金」や、空家等活用促進区域内での購入者支援策も用意されており、桜川市は解体そのものよりも「活かす」方向の制度を手厚くしている印象がある。

岩瀬地区・大和地区のいまの姿

JR水戸線岩瀬駅と交通の要所としての岩瀬地区

岩瀬地区の中心となる岩瀬地域は、JR水戸線岩瀬駅を交通の拠点としている。大和庁舎へは岩瀬駅からタクシーで約15分、コミュニティバス「ヤマザクラGO」で約20分というアクセスが市公式に案内されており、市内3地区をつなぐ結節点としての役割も担っている。

大和地区、本庁機能と農村部の広がり

大和地区には市の代表窓口である大和庁舎が置かれ、企画課など中枢機能が集まる一方、地区の多くは田園地帯が広がる農村的な景観を残している。真壁地区が石材業と伝統的街並みを核とするのに対し、大和地区は行政機能と農地が同居する、また異なる空き家発生の背景を持つ地区といえる。

地価と相続、これからの前提

2026年公示地価と相続登記義務化

民間の地価集計サイトによると、桜川市全体の2026年公示地価平均は16,840円/m²(坪単価55,672円)で前年比-0.44%、住宅地に限ると15,635円/m²(坪51,685円)で-0.45%となっている。真壁町エリアに絞ると13,633円/m²(坪45,068円)・-0.54%とやや低く、市内でも地区による差が見られる(複数ソースの集計値のため目安として参照)。あわせて2024年4月1日に施行された相続登記の義務化により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が法律上の義務となった。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる。実家が空き家になりそうな場合、登記と活用・解体の判断をセットで考える必要性は年々高まっている。

空き家をどうするか迷ったら

「バンク」「改修」「解体」の3つの選択肢を比較する

桜川市で空き家を所有する(あるいは相続する見込みがある)場合、選択肢は大きく3つに整理できる。①空家バンクに登録して賃貸・売却で活かす、②改修費補助を使ってリフォームし自ら住む・貸す、③老朽化が進んでいる場合は不良住宅除却費補助を使って解体する、の3つだ。①②は空家等活用促進区域内かどうかで使える制度が変わり、③は判定の点数次第で予定件数(10棟)に入れるとは限らない。まずは市の都市整備課や空家バンクの窓口に相談し、自分の物件がどの制度に当てはまるかを確認することが最初の一歩になる。桜川市の解体費用の目安については、当サイトの桜川市の解体工事はどこに頼む?費用相場・業者選び・補助金まで専門家が解説、解体補助金の条件については桜川市の空き家解体補助金|1/2・上限50万円と申請時期もあわせて参考にしてほしい。

まとめ

桜川市は2005年の合併後も、大和・岩瀬・真壁という3つの地区がそれぞれ異なる顔を持ち続けているまちだ。人口はこの11年余りで約18%減った一方、世帯数の減少は緩やかで、単身・少人数世帯化が進んでいる。真壁地区では伝統的建造物群保存地区の指定と空家等活用促進区域という仕組みで空き家の「活用」が後押しされ、市全体でも不良住宅除却費補助制度・空家改修費補助制度という2つの補助が用意されている。空き家をどうするか判断する際は、活かす制度と解体という選択肢の両方を、地区ごとの事情もふまえて比較検討することが欠かせない。

よくある質問

Q1. 桜川市の空き家解体補助金はいくらもらえますか?

A. 「不良住宅(空家)除却費補助制度」により、解体費の2分の1・上限50万円が補助されます。令和9年度の補助予定件数は10棟で、申込順ではなく不良住宅判定票の点数が高い順に採択されます。

Q2. 桜川市の人口はどのくらい減っていますか?

A. 桜川市公式ホームページによると、平成27年度4月時点で42,749人だった人口は、令和8年8月時点で34,890人まで減少しました。約11年4か月で7,859人、率にして約18.4%の減少です。

Q3. 真壁地区の空き家に特別な制度はありますか?

A. はい。真壁伝統的建造物群保存地区と重なる約17.6haが「桜川市空家等活用促進区域」に指定されており、区域内で空き家を購入・活用する人向けの支援策が用意されています。外観改修には保存地区の条例に基づく許可が必要です。

Q4. 桜川市の空家バンクとはどんな制度ですか?

A. 桜川市空家バンク実施要綱にもとづき、空き家の所有者が物件を登録し、購入・賃貸を希望する人とマッチングする制度です。登録物件は市公式ホームページで公開され、改修費補助など活用に向けた支援策と組み合わせて利用できます。

Q5. 解体を検討する際、市内業者との契約は必須ですか?

A. 不良住宅(空家)除却費補助制度を利用する場合は、市内に本店・支店・営業所を置く業者との解体工事契約が条件になっており、市外業者と契約すると補助の対象外になります。

Q6. 空き家をどうするか迷ったときは何から始めればいいですか?

A. まずは空家バンクへの登録や改修による活用ができないかを確認し、老朽化が進んでいて活用が難しい場合に解体を検討するという順番がおすすめです。桜川市都市整備課や空家バンクの窓口、解体の専門家への相談から始めると判断がしやすくなります。

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