神栖市は茨城県の最南東端、鹿行地域に位置し、鹿島臨海工業地帯の中心を担う工業都市です。一方で市内には空き家も点在し、工業地帯の企業城下町としての特性が空き家問題にも独自の影を落としています。本記事では神栖市公式統計・空家等対策の一次情報から、人口動態・空き家の現状・まちの変化を整理します。
神栖市はどんなまちか
鹿島開発で生まれた工業都市
神栖市は2005年8月1日、旧神栖町と旧波崎町の合併により誕生しました。合併前は「陸の孤島」と呼ばれる農業・漁業中心の地域でしたが、1960年代に始まった鹿島開発により、掘込式人工港「鹿島港」を核とする鹿島臨海工業地帯が形成され、鉄鋼・石油化学・飼料などの企業が集積する工業都市へと姿を変えました(神栖市公式「鹿島開発のあゆみ」)。
製造品出荷額は県内1位
神栖市公式「企業ガイド」(2023年経済構造実態調査)によると、神栖市の製造品出荷額等は1兆9,868億円で茨城県内1位(県全体の構成比13.3%)です。鹿島港は穀物の輸入量が日本一で国際バルク戦略港湾に選定されており、約170社の企業が立地しています。
神栖市の人口・世帯数の推移
現在の人口と世帯数
神栖市公式統計によると、2026年6月末現在の住民基本台帳人口は92,830人(男48,013人・女44,817人、うち外国人住民3,615人)、世帯数は45,246世帯です。市内には鹿島臨海工業地帯で働く外国人労働者も多く、人口の3.9%を外国人住民が占めている点が神栖市の特徴です。
人口動態の実態
同月の人口異動は転入308人・転出228人・出生45人・死亡77人で、転入が転出を上回る一方、死亡が出生を上回る自然減の傾向が読み取れます(神栖市公式「神栖市の人口・世帯数」2026年7月14日更新)。工業都市であるため現役世代の転入は他の県内市町村より底堅い一方、少子高齢化の流れ自体は避けられていません。

神栖市の空き家対策の現状
神栖市空家等対策計画
神栖市は2021年3月に「神栖市空家等対策計画(第2期)」を策定し、2022年3月に改訂しました。空家等の適正管理や利活用など、市の空家等対策を総合的かつ計画的に推進するための計画です(神栖市公式「空き家対策」)。
空き家解体支援事業補助金
神栖市では老朽化等により周辺の生活環境保全に著しく有害となる空き家等の自主的な解体を促進するため、解体費用の一部を補助しています。対象は「管理不全状態の空家等」「不良住宅」「特定空家等」の3区分に分かれ、補助額は経費の2分の1でそれぞれ上限50万円・70万円・100万円です。令和8年度の受付は2026年5月12日から11月30日まで(予算上限に達し次第終了)。過去にこの補助金を受けていないことなどの条件があります(神栖市公式「空き家解体支援事業補助金」2026年4月1日更新)。※本記事姉妹記事のID4972「神栖市の空き家解体補助金」と数値は完全一致します。
空き家バンク・利活用促進事業補助金
解体だけでなく利活用にも力を入れており、「神栖市空き家バンク」で空き家所有者と利用希望者のマッチングを提供し、「神栖市空家利活用促進事業補助金」では空き家の改修費・家財道具処分費・成約奨励金を補助しています。さらに株式会社クラッソーネとの連携協定により、AIで解体費用や解体後の土地売却費用の概算を無料算出できる「神栖市版すまいの終活ナビ」も公開されています(神栖市公式)。
神栖市の下水道・生活基盤インフラの現状
汚水処理人口普及率は県平均を下回る
茨城県公式「令和6年度汚水処理人口普及率について」によると、令和6年度末の神栖市の行政人口は93,550人、汚水処理人口は70,992人で、汚水処理人口普及率は75.9%です。これは茨城県全体の普及率89.0%(全国93.7%・全国順位30位)を下回り、県内44市町村の中でも整備が進んでいない市町村の一つです。内訳は下水道49.7%・合併処理浄化槽26.2%で、農業集落排水施設・コミュニティプラントは0%です。
古い住宅ほど単独処理浄化槽や汲み取りの可能性
汚水処理人口普及率が県平均より低いということは、下水道や合併処理浄化槽に未接続の住宅が県平均より多く残っている可能性を示します。古い空き家を解体・売却する際は、浄化槽の種類(単独処理か合併処理か)や公共下水道への接続状況を事前に確認しておくと、買主・解体業者との交渉がスムーズになります。※この普及率は「まちの整備状況」を示す一般統計であり、個別の空き家の設備状況を保証するものではありません。
神栖市の地価の動き
神栖市の公示地価は用途別平均で住宅地18,126円/m²・商業地39,750円/m²・工業地16,500円/m²です(国土交通省地価公示、確認日:2026年8月)。工業地の価格が形成されているのは鹿島臨海工業地帯を抱える神栖市らしい特徴で、住宅地としての価格形成は工業都市としての雇用需要に支えられている面があります。
神栖市のまちの変化と今後
波崎地区と神栖地区、2つの顔
神栖市は旧神栖町エリア(鹿島港・工業地帯側)と旧波崎町エリア(利根川河口・太平洋岸側)という2つの異なる地域性を持つまちです。旧波崎町側は漁業・農業の色合いが残り、旧神栖町側は工業地帯の企業城下町としての性格が強く、同じ市内でも空き家の背景事情が地区によって異なります。空き家の立地が工業地帯の従業員向け住宅地に近いか、旧来の農漁村エリアに近いかで、解体後の土地活用の方向性も変わってきます。
洋上風力・カーボンニュートラルという新しい動き
鹿島港は太平洋側で唯一、風力発電設備の基地港湾に指定されており、港湾脱炭素化推進計画も策定されています(神栖市公式「企業ガイド」)。工業地帯が新しいエネルギー産業へ転換を進めていることは、今後の雇用・人口動態にも影響し得る変化として注目されます。
空き家を所有している方へ
解体するか、活用するかの判断ポイント
神栖市の空き家は「管理不全状態」「不良住宅」「特定空家等」の3段階で判定され、それぞれ解体補助の上限額が異なります(50万円・70万円・100万円)。まず市の事前調査を申請し、どの区分に該当するかを確認することが最初のステップです。事前調査には位置図・配置図・現況写真・登記事項証明書等の添付書類が必要です。
解体前に売却を検討する選択肢もある
老朽化した空き家でも、解体せずに古家付き土地として売却できる場合があります。工業地帯への通勤需要がある神栖市では、立地によっては解体費用をかけずに売却できるケースもあるため、解体一択で決めてしまう前に不動産会社への相談も検討する価値があります。
神栖市の空き家関連リンク
神栖市の解体補助金の具体的な条件は「神栖市の空き家解体補助金|最大100万円の条件と順番」で、解体費用の相場は「神栖市の解体費用はいくら?2026年相場と坪単価」で詳しく解説しています。隣接する鹿嶋市の状況は「鹿嶋市の空き家の現状とまちの変化」もご参照ください。
神栖市内でも特に古い家が多い波崎の旧市街地・神栖地区の団地エリアについては、神栖市の古い家が多いエリアと建て替え事情で建て替え・接道条件の判断ポイントを詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
神栖市は鹿島臨海工業地帯という全国有数の産業集積を抱える一方、汚水処理人口普及率は県平均を下回り、旧神栖町・旧波崎町という2つの異なる地域性を持つまちです。空き家の解体には補助金制度(上限50万〜100万円)が用意されていますが、事前調査の判定区分によって条件が異なります。まずは事前調査を申請し、解体と売却のどちらが自分の状況に合うかを比較検討することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
神栖市の空き家解体補助金はいくらもらえますか?
対象経費の2分の1が補助され、上限額は判定区分によって異なります。管理不全状態の空家等は上限50万円、不良住宅は上限70万円、特定空家等は上限100万円です(神栖市公式「空き家解体支援事業補助金」)。
神栖市の令和8年度の補助金申請期間はいつまでですか?
2026年5月12日(火曜日)から11月30日(月曜日)までです。ただし予算上限に達し次第終了となるため、早めの事前調査申請が推奨されます(神栖市公式、2026年4月掲載)。
神栖市の人口は増えていますか、減っていますか?
2026年6月末の住民基本台帳人口は92,830人で前月比48人増ですが、これは転入が転出を上回る一方で死亡が出生を上回る自然減の中での増加です。外国人住民が3,615人と人口の約3.9%を占め、工業地帯の雇用需要による転入増が人口を支えています(神栖市公式統計)。
神栖市の下水道は整備が進んでいますか?
茨城県公式データによると、神栖市の汚水処理人口普及率は令和6年度末で75.9%で、茨城県全体の89.0%より低い水準です。内訳は下水道49.7%・合併処理浄化槽26.2%です。古い空き家では単独処理浄化槽や汲み取り式のままの住宅も相応に残っていると考えられます。
神栖市の空き家は解体せずに売却できますか?
古家付き土地として解体せずに売却できる場合があります。立地や状態によって判断は分かれるため、解体一択で決める前に不動産会社へ相談し、解体費用と売却額を比較検討することをおすすめします。
神栖市はどんな成り立ちのまちですか?
2005年8月1日に旧神栖町と旧波崎町が合併して誕生しました。1960年代の鹿島開発で鹿島港と鹿島臨海工業地帯が形成され、農業・漁業中心の地域から工業都市へ変化しました(神栖市公式「鹿島開発のあゆみ」)。
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