茨城県潮来市と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「あやめ」と「水郷」ではないでしょうか。江戸時代には利根川水運の港町として栄え、今も前川沿いにはあやめ園が広がり、初夏には多くの観光客が訪れます。一方で、観光地としての顔とは別に、市内では人口減少と高齢化が静かに進んでいます。この記事では、潮来市の成り立ちと人口の推移、地区ごとの特徴、そして空き家をめぐる市の取り組みを一次情報から整理し、最後に「家をどうするか」を考えるときのヒントをお伝えします。
潮来市はどんなまちか
潮来市は茨城県の南東部、霞ヶ浦・北浦・常陸利根川に囲まれた水郷地帯に位置する市です。面積は71.40平方キロメートル(令和8年1月1日現在、国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」)で、県内でも水辺の占める割合が大きいまちのひとつです。
潮来市の成り立ち
現在の潮来市は、一度の合併を経て今の姿になりました。1955年(昭和30年)に当時の潮来町が大生原村・津知村・延方村と新設合併し、その後2001年(平成13年)4月1日に行方郡牛堀町を編入して市制を施行し、「潮来市」となっています(潮来市公式ホームページ、Wikipedia「潮来市」)。つまり、現在の市域は「潮来」「大生原」「津知」「延方」というもともとの潮来地区と、霞ヶ浦沿いの旧牛堀町エリアという、水運で結ばれつつも成り立ちの異なる地域が合わさってできています。
水運の町から観光の町へ
潮来が最も繁栄したのは江戸時代中期ごろまでとされています。潮来市公式ホームページ「潮来市の観光の歴史」によれば、元文年代(1736〜1740年)の大洪水で利根川の本流が佐原(現・千葉県香取市)方面へ移ったことで、潮来は中継港としての機能を失いました。さらに明治期に常磐線が開通して陸運が主流になると、水運はいっそう衰退したといいます。その後、水郷の風景そのものを観光資源として活かす方向へと転換し、あやめ祭りや舟めぐりで知られる今の潮来のイメージが形づくられていきました。この「水運の町から観光の町へ」という転換の物語は、まちの空き家事情を考えるうえでも一つの背景になります。かつて水運や漁業で栄えた集落ほど、産業構造の変化とともに世代交代が進みにくくなっている面があるためです。
潮来市の人口・世帯数の推移
まず、公式統計で潮来市の人口動向を確認します。
現在の人口・世帯数
茨城県統計課「市町村のデータ(潮来市)」によれば、潮来市の常住人口は25,509人、世帯数は11,001世帯(いずれも令和8年4月1日現在、令和2年国勢調査結果を基にした推計)です。人口密度は1平方キロメートルあたり357.3人となっています。潮来市公式ホームページの住民基本台帳ベースの集計でも、令和8年3月1日現在で総人口25,636人・世帯数11,643世帯とほぼ近い水準が確認できます(集計方法や基準日の違いにより数値差があります)。
国勢調査で見る長期推移
総務省統計局「国勢調査」による人口推移を見ると、潮来市(合併前の旧市域を含む)の人口は昭和60年の30,421人から緩やかに増加し、平成7年の32,133人でピークを迎えたあと、平成12年以降は一貫して減少に転じています。令和2年(2020年)の国勢調査人口は27,604人で、ピーク時から4,500人以上少なくなりました。先ほどの令和8年推計25,509人と合わせると、直近の20年余りでおよそ6,600人、率にして2割強の人口減少が続いていることになります。

高齢化の状況
茨城県統計課「市町村のデータ(潮来市)」の年齢別人口割合(令和7年10月1日現在)によれば、潮来市は15歳未満9.5%、15〜64歳54.4%、65歳以上36.1%となっています。65歳以上が全体の3人に1人を超えており、茨城県全体の高齢化率(令和7年時点でおおむね30%前後で推移)と比べても高い水準です。また、県医療政策課「茨城県人口動態統計」による令和6年の出生数は105人、死亡数は437人で、自然減の傾向が続いていることも確認できます。
潮来市の地区別の特徴
潮来市は大きく分けて、旧潮来町エリア(潮来・大生原・津知・延方)と、2001年に編入された旧牛堀町エリアで成り立ちが異なります。それぞれの地区の特徴を簡単に整理します。

潮来(中心部)・あやめ地区
前川あやめ園を中心とする観光の核となるエリアで、旅館・土産物店が並ぶ通りもあります。潮来市の地価公示データを参照すると、市内で相対的に地価が高い地点はこのあやめ地区周辺に集中する傾向があります(後述)。一方で、観光の顔とは別に、中心部から一歩入ると昭和期に建てられた住宅や店舗併用住宅が多く、後継者不在による空き家化が進みやすい面もあります。
牛堀地区
2001年に潮来市へ編入された旧牛堀町エリアです。霞ヶ浦沿いに位置し、水郷筑波国定公園に含まれる景観の良さが特徴です。かつては霞ヶ浦の水運・漁業の拠点のひとつでもありました。
延方・大生原地区
1955年の合併で潮来町に加わった地区です。延方は北浦沿いの低地に位置し、大生原は大生神社を中心とした農地の広がる地域です。市内の地価公示データでは、大生地区が市内で相対的に低い水準にあるという集計もあり(民間不動産情報サイトの集計、目安)、中心部との地価差がうかがえます。
日の出地区
利根川と霞ヶ浦(常陸利根川)が合流する付近に位置し、近世以降の新田開発によって形成された地域です。Wikipedia「日の出(潮来市)」によれば、明治期になっても低湿地ゆえに水害に悩まされ、収穫できる年は3年に1度ともいわれたとされています。現在は住宅地として利用されていますが、水辺に近い低地であることは、家を将来どうするかを考えるうえでも意識しておきたいポイントです。
潮来市の空き家対策の取り組み
潮来市は空き家問題に対して、主に「空家バンク」という仕組みで対応しています。
空家・空き地情報バンク
潮来市公式ホームページ「空家バンクとは」によれば、市内に空き家・空き地を所有していて売却や賃貸を希望する所有者から情報提供を受け、市内への居住や進出を希望する個人・企業に紹介する制度です。物件登録料・利用登録料はいずれも無料ですが、実際の契約交渉は市が協定を結んだ宅建業協会等の媒介業者が担当し、市は交渉そのものには関与しません(潮来市空家バンク制度実施要綱)。ただし、建築基準法・都市計画法の規定に適合していない建物や、老朽化が著しい建物は登録対象から除外される点に注意が必要です。つまり、空家バンクは「まだ使える家」の再流通を後押しする制度であり、老朽化が進んだ空き家をそのまま登録できるわけではありません。
空き家の放置に関する注意喚起
潮来市が公開している資料「空き家の放置は危険です‼」(PDF)では、屋根材の飛散や倒壊、不法侵入、害虫・害獣の発生といった管理不全空き家のリスクが挙げられています。全国的に空家等対策の推進に関する特別措置法(平成27年施行、令和5年改正)に基づき、管理不全な空き家は「特定空家等」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除されたり、行政による指導・勧告の対象になったりする仕組みが整えられています。潮来市においても、所有者に対して適正な管理を呼びかける取り組みが行われています。
解体そのものへの補助金は無い(2026年時点)
なお、潮来市には「建物を解体する費用」そのものを直接補助する制度は、2026年時点の市公式情報を確認するかぎり見当たりません。この点は、当サイトの別記事「潮来市の空き家解体補助金は無い|代わりに使える制度と順番」で市公式情報をもとに詳しく確認しています。空家バンクや、相続空き家の3,000万円特別控除など、解体費用の補助とは別の形で活用できる制度もあわせて紹介していますので、具体的な費用や制度を知りたい方はそちらもご覧ください。
潮来市の地価動向(2026年)
公示地価の集計サイトの情報によれば、2026年(令和8年)の潮来市の公示地価平均はおおむね13,000円台/平方メートル(坪単価4万円台前半)で、前年からわずかに下落する動きが続いているとされています。市内でも地点ごとの差は大きく、あやめ地区周辺は比較的高い水準、大生地区など中心部から離れたエリアは低い水準になる傾向があるとの集計もあります(民間不動産情報サイトの集計、目安の数値としてご覧ください)。潮来市公式ホームページでも「地価公示・地価調査」のページで毎年の公示地価が公開されていますので、正確な地点別の数値を確認したい場合は市公式ページの参照をおすすめします。
なお、空き家率について潮来市単体の一次データは確認できなかったため、この記事では推測値としての空き家率は使用していません(他市町村の記事作成時に発生した「つくば市13.79%」という数値が実際には別の市の値だった、という過去の誤りを踏まえた判断です)。
潮来市のまちの変化をどう見るか
ここまで見てきたように、潮来市は「観光地としての賑わい」と「人口減少・高齢化」という二つの顔を同時に持つまちです。あやめ祭りの時期には多くの観光客で賑わう一方、市全体としては20年余りで2割を超える人口減少が続き、65歳以上の割合は36%を超えています。特に、水運や農業で栄えた歴史を持つ延方・大生原・牛堀といった地区では、実家を継ぐ世代が市外に出たまま戻らず、空き家化が進むケースが増えているとみられます。こうした変化は潮来市に限った話ではなく、水郷エリア全体、そして茨城県内の多くの市町村に共通する構造ですが、潮来市の場合は「観光」という強みがあるぶん、空き家の利活用(民泊、店舗、移住者向け住宅など)の選択肢も相対的に多いという見方もできます。
実家や空き家をどうするか、考え始めるときに
「潮来の実家を相続したけれど、当面は住む予定がない」「水郷の景色は好きだが、遠方に住んでいて管理が難しい」——このような相談は、水郷エリアの物件を多く扱う解体Do!にも寄せられます。空き家をめぐる選択肢は、大きく分けて次の3つです。
1. 空家バンクに登録して活かす
建物の状態が良く、まだ住める状態であれば、先に紹介した潮来市の空家バンクへの登録も選択肢のひとつです。移住希望者や、観光需要を見込んだ店舗・宿泊施設への転用を検討する事業者に見つけてもらえる可能性があります。ただし、老朽化が著しい建物は登録対象外となる点に注意が必要です。
2. 解体して更地にする
老朽化が進み、倒壊や部材の飛散といった危険がある場合や、そもそも買い手・借り手がつきにくい立地・状態の場合は、解体して更地にすることも現実的な選択肢です。潮来市内での解体費用の目安や、業者選びのポイントについては「潮来市の解体工事|費用相場・業者選びのコツ・補助金まで専門家が解説」で詳しく解説しています。なお、前述のとおり潮来市には解体費用そのものへの補助金は無く(2026年時点)、代わりに使える制度については「潮来市の空き家解体補助金は無い|代わりに使える制度と順番」をご確認ください。
3. 現況のまま売却する
解体費用をかけずに、建物が残ったままの状態で売却するという方法もあります。特に、水郷の景観や立地に価値を見出す買い手がいる場合、更地にせずそのまま引き渡すほうが結果的に手間や費用を抑えられるケースもあります。どの選択が合っているかは、建物の状態・立地・相続人の意向によって異なるため、迷った際は一度専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 潮来市の人口はどのくらい減っていますか?
A. 茨城県統計課の集計によれば、潮来市の常住人口は令和8年4月1日現在で25,509人です。国勢調査では平成7年(32,133人)をピークに減少が続き、令和2年は27,604人でした。ピーク時から現在までにおよそ2割の減少となっています(総務省統計局「国勢調査」、茨城県統計課「常住人口調査」)。
Q2. 潮来市に空き家解体の補助金はありますか?
A. 2026年時点で市公式情報を確認したかぎり、建物の解体費用そのものを直接補助する制度は見当たりません。空家バンクや相続空き家の譲渡所得3,000万円特別控除など、別の形で活用できる制度については当サイトの別記事で詳しく解説しています。
Q3. 潮来市の空家バンクはどんな人でも登録できますか?
A. 市内に空き家・空き地を所有する方であれば登録可能ですが、建築基準法・都市計画法の規定に適合していない建物や、老朽化が著しい建物は対象外です(潮来市空家バンク制度実施要綱)。登録料・利用料は無料ですが、契約交渉は市が協定を結んだ媒介業者が担当します。
Q4. 潮来市内で空き家が多いのはどのエリアですか?
A. 潮来市単体の地区別空き家戸数を示す一次データは確認できませんでした。ただし、人口動態や成り立ちから見ると、延方・大生原・牛堀といった、かつて農業や水運・漁業で栄えた地区で高齢化と世代交代の課題が相対的に大きいと考えられます。
Q5. 潮来市の地価は今後どうなりますか?
A. 2026年の公示地価は前年からわずかに下落する動きが続いているとされています(民間集計、目安)。人口減少が続くなかで、地域や物件の状態によって地価の動きに差が出やすい状況です。正確な数値は潮来市公式ホームページの「地価公示・地価調査」ページ、または国土交通省地価公示のデータをご確認ください。
Q6. 実家が水郷エリアの低地にありますが、注意点はありますか?
A. 潮来市は霞ヶ浦・北浦・利根川に囲まれた低地が多く、日の出地区のように歴史的に水害の影響を受けてきたエリアもあります。売却や解体を検討する際は、ハザードマップで浸水想定区域かどうかを確認したうえで進めることをおすすめします。詳細は潮来市公式ホームページの防災情報でご確認いただけます。
まとめ
潮来市は、あやめと水郷の風景で知られる観光のまちであると同時に、人口減少・高齢化が着実に進むまちでもあります。1955年の合併、2001年の牛堀町編入という歴史的な経緯を持ち、地区ごとに成り立ちや特徴が異なる点も、潮来市らしさのひとつです。空き家については、市の空家バンク制度を活用できる場合もあれば、老朽化が進み解体や売却を検討したほうがよい場合もあります。「うちの実家はどちらに当てはまるだろう」と迷ったときは、一度状態を見てもらうところから始めてみてください。


