茨城県最北端に位置する北茨城市。福島県いわき市と接し、太平洋に面した風光明媚なまちです。しかし人口は昭和60年(1985年)の51,035人から令和8年(2026年)には38,133人まで減少し、市内には空き家が目立つようになってきました。

本記事では、北茨城市公式ホームページの一次情報をもとに、人口動態・6つの旧町村ごとの地区差・空き家対策の仕組みを整理します。「北茨城市の解体費用相場」「北茨城市の解体補助金」の記事とあわせて読むことで、まちの成り立ちから空き家問題の背景まで理解いただけます。

北茨城市の基礎データ|人口・世帯数を一次情報で確認

まずは北茨城市の基本的な人口・世帯データを確認します。数字は茨城県統計課「茨城県常住人口調査」に基づく一次情報です。

常住人口38,133人・世帯数17,059世帯(令和8年4月1日現在)

茨城県統計課の発表によると、北茨城市の常住人口は38,133人、世帯数は17,059世帯です(令和8年4月1日現在、令和2年国勢調査結果を基に推計)。人口密度は1平方キロメートルあたり204.1人で、県内でも面積(186.79平方キロメートル)に対して人口が少ない、比較的ゆとりのあるまちといえます。

年齢別人口割合|65歳以上が38.5%

令和7年10月1日現在の年齢別人口割合は、15歳未満9.1%、15〜64歳52.4%、65歳以上38.5%です(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)。65歳以上の割合が約4割に達しており、県平均を上回る高齢化率となっています。高齢化の進行は、今後の空き家予備軍(高齢者のみの世帯)の増加にも直結する要素です。

国勢調査でみる人口推移|昭和60年から一貫して減少

総務省統計局「国勢調査」による人口推移を見ると、昭和60年51,035人→平成2年51,093人→平成7年52,074人とやや増加した後、平成12年51,593人を境に減少局面に入り、平成17年49,645人、平成22年47,026人、平成27年44,412人、令和2年41,801人と、一貫して減少を続けています。約40年間で1万人以上、率にして2割近い人口減少です。

北茨城市の人口推移グラフ 昭和60年から令和8年
北茨城市の人口推移(国勢調査・茨城県常住人口調査を基に作成)

出生数140人・死亡数667人(令和6年)

茨城県医療政策課「茨城県人口動態統計」によると、令和6年の出生数は140人、死亡数は667人です。死亡数が出生数の約4.8倍に達しており、自然減が人口減少の主な要因になっていることがうかがえます。この傾向は今後も空き家の新規発生に影響し続けると考えられます。

1956年の大合併で誕生した北茨城市|6つの旧町村がルーツ

北茨城市の空き家事情を理解するうえで欠かせないのが、まちの成り立ちです。北茨城市は単独の町がそのまま市になったのではなく、複数の町村が合併してできたまちです。

1956年3月31日、6町村の合併で市制施行

北茨城市は昭和31年(1956年)3月31日、南中郷村・磯原町・関南村・大津町・平潟町・関本村の6つの町村が合併し、茨城県内で15番目の市として誕生しました。その前年の昭和30年(1955年)には、磯原町と華川村が先行して合併しており、現在の北茨城市は実質的に7つの旧町村を起源とする「合併都市」です。

この成り立ちは、現在も「中郷町」「磯原町」「華川町」「関南町」「大津町」「平潟町」「関本町」という7つの地域名(大字レベルの地区名)として市内に残っており、それぞれの地区が異なる歴史・産業構造・人口規模を持っています。

地区別人口でみる規模差|最大の中郷町と最小の平潟町では7倍以上の差

北茨城市公式ホームページが公開する地区別人口データ(令和8年4月1日現在)によると、各地区の人口は次のとおりです。

  • 中郷町:12,426人(市内最大)
  • 磯原町:10,580人
  • 大津町:4,387人
  • 華川町:3,477人
  • 関本町:2,992人
  • 関南町:2,622人
  • 平潟町:1,649人(市内最小)

最大の中郷町(12,426人)と最小の平潟町(1,649人)では、実に7.5倍以上の人口差があります。市内で一括りに「北茨城市は空き家が多い」と語るのではなく、地区ごとの事情を分けて考える必要がある理由がここにあります。

北茨城市6地区の人口と空き家対策早見表
北茨城市6地区の人口と空き家対策早見表(市公式データを基に作成)

地区ごとに異なる、まちの表情

中郷町・磯原町|常磐道沿線と中心市街地

市内最大の人口を抱える中郷町は、常磐自動車道「北茨城インターチェンジ」に近く、比較的新しい住宅地も見られるエリアです。一方、磯原町は市役所や商業施設が集まる北茨城市の中心市街地で、歌人・野口雨情の出身地としても知られています。中心市街地であるがゆえに、古くからの住宅・店舗併用住宅で世代交代のタイミングを迎え、空き家化するケースも見られます。

大津町|五浦海岸と岡倉天心ゆかりの観光地

大津町は、日本美術院の創設者である岡倉天心ゆかりの地として知られています。天心は明治39年(1906年)に日本美術院を五浦(大津町)へ移転し、横山大観・菱田春草・下村観山ら日本画壇を代表する画家たちが移り住み、作品を生み出しました。天心が建てた六角堂は、東日本大震災で流失した後に再建され、現在も五浦海岸のシンボルとなっています。

観光資源に恵まれた大津町ですが、別荘・保養所として使われてきた古い建物や、漁業の担い手減少に伴う住宅の空き家化という、観光地ならではの空き家事情も抱えています。

華川町・関本町|山間部と旧宿場町

華川町は市内でも山間部に位置し、農業集落が中心のエリアです。関本町は国道6号沿いに位置し、江戸時代には水戸街道の宿場町として栄えた歴史を持ちます。いずれも都市部と比べて人口密度が低く、後継者不在による空き家の発生が課題となりやすい地域です。

関南町・平潟町|工業エリアと漁港のまち

関南町は工業団地に近い南部エリアで、平潟町は福島県いわき市に隣接する漁港のまちです。平潟町は市内で最も人口の少ない地区であり、漁業を営んできた古い住宅が空き家化しているケースも見られます。

北茨城市の空き家対策|3つの一次情報から見る仕組み

北茨城市は近年、空き家対策の体制を強化しています。市公式ホームページで確認できる3つの制度・取り組みを紹介します。

1. 空き家バンク制度|10社の協力宅建業者が仲介

北茨城市空き家バンク制度は、空き家・空き地の売却・賃貸を希望する所有者からの情報を登録し、市内への定住を目的とした利用希望者へ橋渡しする仕組みです(北茨城市空き家バンク実施要綱、令和7年4月1日改正)。登録できるのは「現に居住していない1戸建て住宅」「建築に適した更地」などで、倒壊の危険がある物件は対象外です。

令和8年時点で、三立建材・株式会社舟小屋商事・株式会社まるたか観光・常陽観光株式会社・株式会社AIエステート・株式会社関東サービス・飯澤不動産株式会社・福升・株式会社れもん・イエステーション北茨城店の10社が協力事業者として登録されており、成約時には宅地建物取引業法に基づく仲介手数料が別途必要になります。

2. アキソル|2026年4月開始の民間連携総合相談窓口

北茨城市が令和8年(2026年)4月3日に公開した新しい取り組みが「アキソル」です。株式会社ジチタイアドとの官民協働事業として、空き家・空き地の総合相談窓口を無料で利用できるようになりました。専門のアドバイザーが所有者からの相談を受け付け、解体・売却などの各種業者とのマッチングや、贈与先とのマッチングまで対応する仕組みです(相談窓口:0120-772-135、平日9時〜18時)。

「相続したが、どうしたらいいかわからない」「過去に売却は難しいと言われた」といった、これまで放置されがちだった空き家に対しても、専門家が伴走支援する体制が整った点は、2026年時点での北茨城市の空き家対策における大きな変化といえます。

3. 空き家の手引き(2026年版)|サイネックス社と共同発行

北茨城市は株式会社サイネックスとの官民協働事業として「北茨城市空き家の手引き2026年 保存版」を発行しています。空き家問題の背景、制度の説明、管理・活用方法、売却・賃貸・解体といった処分方法までを1冊にまとめた冊子で、空き家の所有者や相続予定者にとって、まず何から手をつければよいかを整理する助けになります。

管理不十分な空き家には「助言・指導」|特定空家等は略式代執行の実例も

北茨城市は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、管理が不十分な空き家の所有者に助言・指導を行っています。倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態や、著しく衛生上有害となるおそれがある状態などが「管理不十分」の目安です。市はこれまでに、特定空家等に対する略式代執行(所有者に代わって市が危険な建物を解体する行政措置)を実施した実例も公表しており、放置された空き家への対応が段階的に強化されていることがうかがえます。

管理不全空家・特定空家等に指定され、市から勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例(更地より税額が軽減される制度)の対象外となり、税負担が増える可能性がある点にも注意が必要です。

北茨城市に住宅解体の補助金は無い|代わりに使える制度

北茨城市の解体費用相場・解体補助金については別記事で詳しく解説していますが、要点を整理すると、2026年度時点で北茨城市には住宅の解体費用そのものを補助する制度は存在しません。ただし、次のような関連制度は利用できます。

  • 危険ブロック塀等撤去補助(上限10万円、令和8年度は6月19日〜9月18日受付、先着3件)
  • 木造住宅耐震改修補助(工事費上限40万円、昭和56年5月31日以前の建物が対象)
  • 相続空き家の3,000万円特別控除(相続した空き家を売却した際の譲渡所得税の特例)

詳しい条件・申請時期については「北茨城市の解体補助金|無い理由と使える2つの制度」の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。

公示地価から見る北茨城市の不動産事情

不動産情報サイトの集計(2026年)によると、北茨城市の公示地価平均は1平方メートルあたり24,214円、坪単価にして約80,047円で、前年比-0.43%とやや下落傾向です。住宅地に限ると平均20,200円/m²(坪66,776円、前年比-0.37%)、商業地は平均29,566円/m²(坪97,741円、前年比-0.50%)となっています。人口減少と高齢化が進むエリアでは、こうした地価の下落傾向が空き家の売却・活用をさらに難しくする一因にもなり得ます。

まとめ|北茨城市の空き家は「地区の事情」を踏まえた対応を

北茨城市は1956年の6町村合併を経て誕生したまちで、中郷町・磯原町・大津町・華川町・関本町・関南町・平潟町という7つの地区は、それぞれ異なる人口規模・産業・歴史を持っています。人口は昭和60年から一貫して減少し、令和8年時点で38,133人、高齢化率は38.5%に達しました。

市は空き家バンク制度に加え、2026年4月には民間連携の総合相談窓口「アキソル」を新設するなど、対策の幅を広げています。住宅解体そのものへの補助金は無いものの、耐震改修やブロック塀撤去といった関連制度、相続空き家の税制優遇など、使える制度は複数あります。空き家の解体・売却・活用を検討する際は、まずご自身の物件がどの地区にあり、どの制度が使えるのかを確認することから始めてみてください。

よくある質問

北茨城市の空き家率は公表されていますか?

北茨城市単体の空き家率について、市の一次情報では確認できませんでした。空き家率は調査主体・調査年によって数値が大きく異なることがあるため、本記事では市単体で確認できる一次情報が無い数値については使用していません。空き家戸数の詳細は、北茨城市都市建設課へ直接お問い合わせください。

北茨城市の空き家バンクに登録すると、市が管理してくれますか?

いいえ、空き家バンクに登録した後も、空き家・空き地の管理は引き続き所有者が行う必要があります。管理ができなくなった場合は、空き家バンクへの登録が解除される場合があります。

「アキソル」の相談は誰でも無料で利用できますか?

はい、アキソルは北茨城市と株式会社ジチタイアドの官民協働事業として提供されており、空き家所有者からの相談受付は無料です。Webからの相談も可能です(相談窓口:0120-772-135、平日9時〜18時)。

特定空家等に指定されると、どうなりますか?

市から所有者へ助言・指導が行われ、改善されない場合は勧告の対象となります。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が増える可能性があります。過去には略式代執行(市による強制的な解体)が実施された実例もあります。

北茨城市に住宅解体の補助金はありますか?

2026年度時点で、北茨城市に住宅解体そのものを対象とした補助金制度は確認できませんでした。ただし、危険なブロック塀の撤去補助や木造住宅の耐震改修補助など、関連する制度は利用できます。詳しくは「北茨城市の解体補助金」の記事をご確認ください。

北茨城市内で空き家の解体を依頼したい場合、どこに相談すればいいですか?

市の窓口(都市建設課、アキソル)で制度の相談ができるほか、解体工事そのものは民間の解体業者への依頼が必要です。解体Do!では北茨城市を含む茨城県内の解体費用の目安や業者選びのポイントをご案内していますので、お気軽にお問い合わせください。