「特定空き家」という言葉を、市役所からの通知や近所の噂で初めて知った、という方は少なくありません。指定されると固定資産税が上がる、最悪の場合は行政に強制的に解体される——そんな話を聞いて不安になっていませんか。この記事では、特定空き家の正確な定義から、指定までの4段階のプロセス、固定資産税が上がる仕組み、そして茨城県内の市町村では「特定空き家であること」が解体補助金の交付条件になっているケースと、逆に対象外にされるケースの両方があるという、解体工事を数多く手がけてきた当社だからこそ書ける実例を一覧でまとめます。
数値・条文番号は国土交通省・e-Gov法令検索および茨城県内各市町村公式サイトの一次情報にもとづいています。断定できない部分は「目安」「〜のことがあります」と明記し、税務判断が絡む内容は税理士・自治体窓口への確認を促す形にしています。
特定空き家とは|空家等対策特別措置法が定める4つの状態
「特定空家等」は、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家特措法)第2条第2項で定義された行政上の用語です。単に人が住んでいない家というだけでは該当せず、市区町村が現地調査のうえで次の4つの状態のいずれかに当てはまると判断した空き家だけが指定されます。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態(屋根の崩落・外壁の剥離・基礎の傾きなど)
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態(浄化槽の破損による汚水流出、動物の死骸やごみの放置など)
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態(外壁の落書き・雑草や樹木の著しい繁茂など)
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(多数の動物の棲みつき、不法侵入・放火の危険など)
この判断基準は国土交通省・環境省が定める「特定空家等に対する措置」に関するガイドラインに沿って、各市区町村が現地調査と点数化(自治体独自の判定シートを使うケースが多い)を行って認定します。「古い」「1年以上空いている」というだけでは特定空き家にはならない点に注意が必要です。
「特定空き家」と「管理不全空き家」の違い
2023年(令和5年)12月13日施行の空家特措法改正で新設されたのが「管理不全空家等」(同法第13条)です。特定空き家が「すでに倒壊等の危険が著しい状態」を指すのに対し、管理不全空き家は「このまま放置すれば特定空き家に該当するおそれがある状態」、つまり特定空き家の一歩手前の予備軍という位置づけです。
2023年の改正の大きなポイントは、この管理不全空き家の段階で指導・勧告を行えるようにしたことです。改正前は特定空き家に指定されるまで固定資産税の優遇除外という強い措置が取れませんでしたが、改正後は管理不全空き家の段階で勧告を受けると、特定空き家と同様に住宅用地の固定資産税特例から除外されるようになりました。「まだ特定空き家じゃないから大丈夫」という判断が、改正後は通用しにくくなっています。

特定空き家に指定されるまでの4段階|助言・指導→勧告→命令→行政代執行
特定空き家(および管理不全空き家)に対する行政の措置は、空家特措法第14条にもとづき、原則として次の4段階で進みます。いきなり強制解体されるわけではなく、所有者が自主的に改善する機会が複数回設けられています。
- 助言・指導(法第14条第1項・第9項):市区町村が所有者等に対し、状態の改善を求める最初の働きかけ。文書または口頭で行われる。
- 勧告(法第14条第2項・第11項):助言・指導をしても改善されない場合に行われる、より強い行政指導。勧告を受けた時点で、その土地の固定資産税・都市計画税の住宅用地特例(最大で税額が1/6になる優遇措置)が解除され、税額が跳ね上がる。
- 命令(法第14条第3項):勧告になお従わない場合、期限を定めて必要な措置(除却・修繕等)を命じる。命令に違反すると50万円以下の過料の対象になり得る。
- 行政代執行(法第14条第9項):命令にも従わない場合、市区町村が所有者に代わって強制的に解体等を行い、その費用は所有者に請求される。

実際には、助言・指導の段階で改善(解体・修繕・適切な管理)に至るケースが大半で、命令・行政代執行まで進む事例は多くありません。ただし茨城県内でも龍ケ崎市が特定空家等に対する措置命令および行政代執行を実施した事例を市公式サイトで公表しており、「進まない」と楽観視できるものではないことがうかがえます。
固定資産税が上がる仕組み|「6倍」と言われる理由
住宅が建っている土地には、固定資産税・都市計画税を軽減する「住宅用地の特例」があります。目安として、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は固定資産税評価額が1/6に、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は1/3に軽減されます。
特定空き家(または管理不全空き家)として「勧告」を受けると、この特例の対象から除外されます。小規模住宅用地でいえば、軽減後の1/6評価から軽減なしの評価に戻るため、単純計算で税額が最大6倍になり得る、というのが「固定資産税6倍」という表現の根拠です。実際の増加幅は評価額や自治体の税率、都市計画税の有無によって変わるため、正確な金額は所有する土地の固定資産税課税明細書または市区町村の税務担当課で確認することをおすすめします。
なお、「勧告」の段階で特例が外れる点が重要です。命令や行政代執行まで待たなくても、勧告の通知を受けた時点で次年度の税額に影響します。
【当社独自資産】茨城県内の解体補助金は「特定空き家」をどう扱っているか
ここからが、解体業者である当社が茨城県内44市町村の補助金要綱を一つひとつ市区町村公式サイトで確認してきたなかで見えてきた、特定空き家に関するもっとも実務的な論点です。
茨城県内の解体費補助金には、大きく分けて「特定空き家であること(=荒れていること)」を交付の前提条件にしている市町村と、逆に「特定空き家でないこと」を交付の前提条件にしている市町村の両方が存在します。同じ「特定空き家」という言葉が、自治体によって補助金を受け取れる条件にも、受け取れない除外条件にもなっているのです。この違いを知らずに解体を進めると、使えたはずの補助金を取りこぼす、あるいは急いで壊したために対象外になる、という事態が起こり得ます。
タイプA|「特定空き家」であることが交付の条件になる市町村
このタイプでは、普通の空き家では申請できず、市が「特定空家等」または「不良住宅」等として認定した物件だけが補助対象になります。老朽化が進んでいるほど、かえって補助を受けやすくなるという逆説的な設計です。
| 市町村 | 補助上限額 | 特定空き家に関する要件 |
|---|---|---|
| 神栖市 | 管理不全50万円/不良住宅70万円/特定空家100万円 | 荒れているほど上限額が上がる3段階方式 |
| 行方市 | 上限100万円 | 特定空家等・管理不全空家等の認定が必須 |
| 龍ケ崎市 | 上限50万円 | 特定空家等の認定必須。ただし助言・指導は受けたが勧告は未受領という狭い範囲のみ対象 |
| 鹿嶋市 | 上限50万円 | 不良住宅判定または特定空家認定が前提(既存ストック利活用補助金) |
| 石岡市 | 上限30万円 | 特定空家等または不良住宅の判定が必要 |
| 古河市 | 上限50万円 | 特定空家等または不良住宅の5要件 |
| 結城市 | 解体費1/2または30万円 | 判定100点以上+勧告を受けていないこと |
| 八千代町 | 上限30万円 | 特定空家等の認定または不良住宅判定が前提 |
| 筑西市 | 上限50万円 | 特定空家等の認定または不良住宅判定。命令の対象になったものは対象外=勧告までがタイムリミット |
| 常陸大宮市 | 区域別30/40/50万円 | 特定空家等または管理不全空家等が要件 |
このタイプで特に注意したいのが龍ケ崎市・筑西市のように「勧告」の前段階までしか対象にしていないケースです。特定空き家の認定を受けても、状態が悪化して市から「勧告」を受けてしまうと、そこで補助金の対象から外れます。つまり「助言・指導は受けたが勧告はまだ」という限られたタイミングでしか申請できないため、通知が来たら早めに相談することが、補助金を活かすうえでの実務上の分かれ目になります。
タイプB|「特定空き家でないこと」が交付の条件になる市町村
一方でこちらのタイプは、まだ状態がひどくなっていない、比較的良好な空き家を対象にした制度です。特定空き家に認定されてしまうと、逆にこの種の補助金は使えなくなります。
| 市町村 | 制度 | 特定空き家に関する要件 |
|---|---|---|
| 大洗町 | 解体補助金(上限30万円) | 特定空家等は対象外 |
| 日立市 | 空き家解体補助金(利活用型・宅地再生創出型) | 特定空家等でないことが共通条件 |
このタイプの制度は「解体後に売却・賃貸する」「跡地を活用する」ことを前提に、比較的状態の良い空き家の除却を後押しする趣旨のものが多く、行政代執行のリスクが迫るほど荒れた家は対象になりません。
タイプC|特定空き家かどうかを問わない市町村
上記以外の多くの市町村(つくばみらい市の老朽空家区分、五霞町、美浦村など)では、特定空き家の認定そのものよりも「1年以上の未使用」「所有権以外の権利設定がないこと(抵当権NGなど)」「市内・町内業者による施工」といった要件が中心で、特定空き家か否かは直接の条件にならないケースもあります。詳細な条件は茨城県の解体補助金・助成金 市町村別一覧で市町村ごとに確認できます。
ここから言えることは一つです。「うちは特定空き家だから」「特定空き家じゃないから」という理由だけで補助金をあきらめる・期待するのは早計で、まずはお住まいの市区町村の要綱を個別に確認する必要があるということです。
特定空き家に指定されないための対策
特定空き家(管理不全空き家)に認定されないための現実的な対策は、大きく4つに整理できます。
- 定期的な管理・清掃:草刈り・郵便物の回収・通水(配管の乾燥防止)など、月1回程度でも管理実績があれば「放置」とみなされにくくなります。
- 空き家バンクへの登録・賃貸活用:市町村の空き家バンクに登録し、活用の意思を示すことも一定の対策になります。ただし多くの自治体で「老朽・損傷が著しく大規模な修繕が必要」な物件はバンク登録の対象外とされている点に注意してください。
- 売却する:古家付きのまま売却する、または解体して更地で売却する方法です。更地にすると住宅用地特例が外れて固定資産税が上がる一方、買い手がつきやすくなることもあります。詳しくは解体費用の相場【2026】坪数別シミュレーションで解説しています。
- 解体する:老朽化が進んでいる場合は、特定空き家に認定される前に解体してしまうのがもっとも確実な対策です。上記のとおり、解体のタイミングによって使える補助金が変わるため、早めの相談が損をしない一番のコツです。
相続で取得した実家をどうするか迷っている場合は、古い家は解体すべき?売却すべき?判断の軸もあわせてご覧ください。
相談先・通報について
近隣に管理が行き届いていない空き家があり、周辺の生活環境への悪影響が心配な場合は、各市区町村の空き家対策担当課(多くは都市計画課・住宅政策課・生活環境課等)に相談・通報できます。市区町村は現地調査のうえ、所有者に助言・指導などの対応を行います。ご自身の所有する空き家について特定空き家に該当するか不安がある場合も、認定を待たずに早めに担当課へ相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. 特定空き家とは何ですか?
A. 空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項で定義された、倒壊の危険・衛生上の有害性・景観の著しい阻害・その他生活環境の保全上不適切な状態のいずれかに該当すると市区町村が認定した空き家のことです。
Q. 特定空き家と管理不全空き家の違いは何ですか?
A. 管理不全空き家は「放置すれば特定空き家になるおそれがある」予備軍の段階(2023年12月施行の改正で新設)で、特定空き家はすでにそのおそれが著しい状態です。どちらも勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れます。
Q. 特定空き家に指定されると固定資産税は何倍になりますか?
A. 「勧告」を受けた段階で住宅用地特例が外れ、小規模住宅用地では評価額が最大6倍相当に戻る計算になります。ただし実際の増加幅は評価額や税率により異なるため、目安としてお考えください。
Q. 特定空き家は誰が決めるのですか?
A. 空き家が所在する市区町村が、国のガイドラインに沿った現地調査・判定を経て認定します。
Q. 特定空き家に指定されると必ず強制解体されますか?
A. いいえ。助言・指導→勧告→命令→行政代執行の4段階を経る仕組みで、多くは助言・指導の段階で所有者が改善(解体・修繕・管理再開)することで手続きが終わります。行政代執行まで進む事例は限定的ですが、茨城県内でも実施例はあります。
Q. 茨城県内の解体補助金は特定空き家じゃないと使えませんか?
A. 市町村によって異なります。神栖市・行方市・龍ケ崎市などは特定空き家等の認定を交付の条件にしていますが、大洗町・日立市などは逆に特定空き家「でないこと」を条件にしています。市町村ごとの詳細は茨城県の解体補助金・助成金 市町村別一覧でご確認ください。
まとめ
特定空き家は「古い空き家」というだけで指定されるものではなく、倒壊・衛生・景観・生活環境という4つの基準にもとづき、助言・指導から始まる段階的な行政手続きを経て認定されます。固定資産税が上がるのは指定そのものではなく「勧告」を受けた時点だという点、そして茨城県内では特定空き家の認定が補助金を受け取れる条件にも、受け取れなくなる条件にもなり得るという点が、実務上もっとも見落とされやすいポイントです。
解体Do!では、茨城県内の解体工事とあわせて、お住まいの市町村の補助金要綱に照らした申請サポートも行っています。特定空き家の通知が届いた、あるいはそう指定されそうで不安という方は、早めにご相談ください。
特定空き家・解体のご相談は解体Do!へ


